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鼻水垂れる~!鼻つまる~!!目がかゆい~!!!の3重苦から解放され、まさに春本番です。我が新宿に新しいシネコン、TOHOシネマズ新宿もオープンし、シネコン3つどもえの街になりました。ビルの上のゴジラ君にも早速ご挨拶し、今日も元気にLet’s Go~!!です。
まずは1作目、2009年に公開された
監督はジェイソン・ライトマン。
主人公ライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は、なんとも非情な、いわゆる「解雇宣告人」であり、1年中出張のため、アメリカ中を飛行機で飛び回る人生を送っていた。そんなライアンの目標は、マイレージを1000万マイル貯めること。そして、飛行機に自分の名前を残し、フィンチ機長と面会することだった。家族とも離れ、結婚にも興味なし。あるのは仕事だけ。そんな時、出張先で出会ったアレックス(ヴェラ・ファミーガ)と気ままな関係に。
しかし、出張から戻ったある日、上司クレイグ(ジェイソン・ベイトマン)から新人社員のナタリー(アナ・ケンドリック)を紹介され、教育係に任命される。ナタリーは、“出張を廃止し、ネット上での解雇宣告を行うシステム”を提案するが、ライアンはそれに猛反対。新人研修も兼ねて2人で出張に行くことになり、気が重いライアンだったが、出張の合間にアレックスとの関係を続け、ナタリーは、人を“きる”ことで初めて目にしたそれぞれの人生に衝撃を受けながら、様々な経験を積んでいく。この出張が2人の心情の変化をもたらす…。
そんなビジネスライクなストーリーを飾るふきカエのキャストは、ライアンをご存じ小山力也さん、アレックスを大人の魅力あふれる深見梨加さん、ナタリーを嶋村侑さんが演じられています。ちなみにナタリー役のアナ・ケンドリックは3月に公開された「イン・トゥ・ザ・ウッズ」のシンデレラ役も熱演。歌もお上手です。私、長谷川がイチオシの女優さんです。
あー、そういえば私も出張や旅行で飛行機に乗るときマイレージを貯めるの楽しみだったんです。シアトルに行くとき、そのマイレージでグレードUPも経験できたんですよ!
2作目は2013年に公開された、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品
ワタクシ、少年期がエクスペンダブルズの面々の現役黄金時代と重なるアメカジ直撃世代40歳ということで、今どき気恥ずかしいぐらいのアメリカかぶれ。特に憧れているのがアメリカ南部なのであります。
なぜって、アメリカは異国情緒なんて感じられないぐらいに身近な国ですけど、南部だけは特別だから。身近なアメリカの一角でありながら、日本人には馴染みの薄い独特の文化や風土がある。あの蒸し暑い空気感と景観、独自のファッション(シアサッカーのメンズスーツなんかが気分!)、スパイシーなケイジャン料理やザリガニ料理…。もう、南部が舞台の映画と聞いただけで、とにかく見ねば!とソワソワしちゃうくらいです。
そんな憧れの南部を舞台にした映画を、ふきカエで、6月に当チャンネルにて放送します。『白いドレスの女』と『理由』です。6月は懐かしふきカエ企画のスペシャル拡大版として、この2作以外にもいろいろとお届けするんですが(詳しくは当チャンネルのふきカエfacebookをチェック)、ここでは南部かぶれとして、特に『白いドレスの女』と『理由』の2作品に絞って紹介させていただこうと思います。
『(吹)白いドレスの女』
TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.
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さて『白いドレスの女』ですが、これはフィルム・ノワールの傑作。フィルム・ノワールってのは悪女キャラクター(ファム・ファタール)の妖艶な魅力に主人公の男が惑わされ、最悪、身を滅ぼしていく、というフォーマットにのっとった、クライム・ムービーの下位分類。本来は古い白黒映画をさし、特に黒、陰影を強調した深い闇の映像表現が、犯罪の渦中にいる人間の後ろ暗い一面や得体の知れない不気味さをかもし、その特色を成しています(そもそもフィルム・ノワールとはフランス語で「黒い映画」の意)。
でも『白いドレスの女』はカラー作品なんです。そして、もちろん夜の闇の表現も見事で、寝苦しい熱帯夜の汗まみれの情事が特徴的に描かれているエロチックなノワール映画ではあるのですが、昼間のシーンのギラギラした凶暴な日差しも印象的なんですな。なにせ「サンシャイン・ステート」ことフロリダが舞台ですから。
邦題にもなっている白いドレス。この映画がデビューであるキャスリーン・ターナー(ふきカエた人:他作でもキャスリーン・ターナーをアテることの多い田島令子さん)が登場するシーンで着ています。蒸した夜気がムワッとまとわりつく夏の晩、目に涼を感じさせる、それでいて、そこはかとなく卑猥な、大人の女のいでたち。白いドレスと言うか正確には白いシャツワンピなのですが、宵闇に浮かび上がるそのシャツのボタンを三つぐらい大胆に開けて胸元を覗かせ、ミディ丈のボタン留めスカートもボタンをかなり開けてスリットのようにして生足をチラ見せしてます。男を惑わす悪女が純白のドレスっていう、このツイスト!わっかるかなぁ~?わっかんねぇだろうなぁ~。主人公のエロ弁護士の目が思わず釘付けになるのも納得です。
なんですが、この映画で一番もってかれるファッションは、男たちのサマースーツスタイルの方。その、主人公のエロ弁護士を演じるウィリアム・ハート(ふきカエた人:堀勝之祐さん)。南部の盛装シアサッカーはじめ明るいコットンスーツを着てる(画像参照)。南部と言えばコットンですよ。世界史の授業を思い出しますね。しかもジャケットはたいてい脱いで手に持っているだけ。さらにシャツの袖をめいっぱい捲り上げてもいる。
主人公の友人で主人公の犯罪計画に気づき板挟みになる黒人刑事J・A・プレストンのスタイルもいい。ベージュのコットンスーツ(麻か?)。アイボリーとロイヤルブルーの爽やかなストライプタイを緩めに緩めながら、頭にツバの短いパナマ帽をあみだに乗っけています(画像参照)。
いやはや、涼味とはこれですよ!それでも暑すぎて汗だくになっちゃって、顔じゅう脂びかりでテっカテカなのですが、それすらも服装に映えるアクセサリー。これぞ真のクールビズ!日本も夏の気候はフロリダみたいなもんなんですから、我々日本男児も、こういう粋な着こなしにできないもんでしょうか。最近はファブリックの進化で通気性がいいとか蒸れないとか、そりゃ確かにそうかもしれませんが、夏場にダークスーツは見た目的にやめにしたい…。むかし着物を着てたころは、白地に紺の竺仙の浴衣、麻の単衣に絽の羽織と、そこは季節感を大切にしてた日本人、「目にも涼しげ」ということをもっと重視してたと思うのですが…。冷房が普及して忘れちゃったんでしょうか…。
と、ファッションが隠れた見所の『白いドレスの女』。80年代版『ゴーン・ガール』といったコワい女映画でもあります。+エロも満載。田島令子さんと堀勝之祐さんの昭和の名ふきカエで、ぜひお楽しみください。
『(吹)理由』COPYRIGHT © 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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さて、ここいらでもう1本の『理由』の方に移ります。こちらも舞台がフロリダで、サマーファッションもやっぱり見所なんですが、この映画ではあえてモノに注目したい。冤罪事件を再審に持ち込もうと奔走する人権派法律学者のショーン・コネリー(もちろん若山弦蔵さん)と、捜査時に事件を担当した恐モテ暴力刑事ローレンス・フィッシュバーン(石塚運昇さん)。この反目しあう2人が、事件当時に隠滅され発見されてない証拠品を探しに、一緒に野生のワニが生息する南部名物スワンプ(沼)に向かいます。その時、フィッシュバーンは飲み物が半分入ったコップ代わりのガラス瓶を握ったまま、足元グっチョグチョのスワンプに分け入って行くのです。ワイルドだろぉ?とはまさにこのこと。カッケぇ〜!でも、んなバカな!こんな奴いないって!コップ持ったまま沼地に行きますか普通?家、せめて車に置いてこいよ!でもね、映画的には必要なんですな。このガラス瓶もまた、アメリカ南部の象徴だからです。舞台の南部感、この刑事が南部の黒人であることを示すための、これは演出上の小道具なんです(少々あざとい演出ですが)。
このガラス瓶、正しくは「メイソン・ジャー」と言い、マグカップのような取っ手のついた物は「メイソン・ジャー・マグ」と言います。アメリカ南部特有の食器で、最近は日本でも流行っていて、雑貨屋さんなどでよく見かけますね。
ワタクシ、このメイソン・ジャーというアイテムが昔から好きでして、最初にその存在を知ったのは、皆さんご存知『キル・ビル』のVol.2を見た時でした。ダリル・ハンナが、ワタクシが一番憧れてる俳優マイケル・マドセン大兄(ふきカエた人:立木文彦)の住むトレーラー・ハウスを訪ねてくる(ポンティアック・ファイヤーバードを運転して。どんだけマブい女だ!眼帯だし)。迎えたマイケル・マドセンは曇った不潔なミキサーに酒と冷凍庫のアイスキューブを大雑把にブチ込んでガーガー回し、フローズン・マルガリータを雑に作ってガラス瓶に注ぎ、ダリル・ハンナに供します。不潔感、大雑把感、雑感。男子たるものかくあるべし!超カッケぇ〜!! “女子力男子”だぁ!?ケっ冗談じゃねぇ!なのであります。と、その時に一目惚れした訳ですが、当時は「最強にざっかけない漢マイケル・マドセン大兄のワイルド無双感の演出のため、ガラス瓶をコップ代わりに使ってるんだろうな」と、しばらくは勘違いしておりました。
実は違ったんですね。このガラス瓶はアメリカ南部の象徴メイソン・ジャーという歴とした食器なんだ、と知り、だからマドセン大兄のガラス瓶も、無双感の演出ではなくて、南部気分の記号として使われてたんだ、と気づいたのは、数年後、『ダッチ・オーヴン生活』(日刊スポーツ出版社、1700円+税/)という本を通してでした。菊池仁志さんという、アメリカでカウボーイ修行をしたこともあるという広告代理店出身の方が書かれていて、イラストも“ピエトロ”名義でご自身で描かれています。男の料理指南書として最高の、素敵ワイルドきわまりない一冊。その中に、ダッチ・オーヴンと関係ありませんが、「南部のシャンパン、アイス・ティー」という一項が割かれておりまして、味のあるイラストに「アイス・ティーを飲む時、南部の人を気取るのならば、グラスで飲んではいけない。トマトなどを瓶詰めにする時に使うガラスの瓶になみなみと注ぎ、1/4にカットしたレモンを浮かせるのが流儀なのだ。テネシーの人はこの空瓶をメイソン・ジャーと呼んで、BALL社製でなければならないという。」と文章が添えられていたのです。
「これだったんだ!」と思いましたね。ワタクシすぐに、マドセン大兄を真似したくて日本で手に入れようと東奔西走しましたが、当時はどこにも売ってなかった。八方手を尽くしebayでようやく現地アメリカから取り寄せたのですが、今やこんなに簡単に日本で手に入るようになってしまい、マドセン大兄とはおよそ真逆のオサレ女子が使うようになろうとは…少々複雑な思いが去来しないでもありません…。でもワタクシ、根がゲスい男なので、お紅茶をお英国風におウェッジウッド的なおカップ&おソーサーに注いでお小指を立ててお上品にいただこう、なぞと柄にもなく分不相応に血迷ったことはただの一度もなく、紅茶とは無縁のムサい男。どちらかで言えば100%完全珈琲ブラック党だったのですが、マドセン大兄と菊池仁志氏の著作とメイソン・ジャーとの出会いのおかげで、やっと紅茶も堂々と飲めるようになったのです。今や夏はこれで決まりですよ!
話を『理由』に戻しますと、ローレンス・フィッシュバーンも南部の黒人刑事だから、メイソン・ジャーを愛用していて、わざわざ沼まで握りしめて持って歩くんです。劇中に説明はありませんが、その中身の薄茶色の液体は、絶対にアイス・ティー(スイート・ティー)でなければならないでしょう。南部の人にとって、夏場のスイート・ティーは、日本人の夏の麦茶に相当する存在だとよく言われます。
その作り方は、菊池仁志著『ダッチ・オーヴン生活』に載っています。と言っても、ただのアイス・ティーですから簡単。『白いドレスの女』と『理由』のTV鑑賞のお供は、これで決まりでしょう。夏に向かうこの6月、スイート・ティーをメイソン・ジャーに注いで、南部の風を感じながら、ぜひ両作あわせてふきカエでご満喫ください。
[書籍画像はAmazon.co.jpより]