外国映画をこよなく愛し、数々の吹替えの制作現場に携わり、音声業界でも名うてのふきカエ愛好家である吉田プロデューサーと長谷川マネージャーとMr.ダークボ がぜひ観ていただきたい名作・秀作をご紹介!

※Amazonのページで紹介しているビデオテープ・DVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。

カイジュー、カテゴリー3!

…映画館の客席で、一瞬自分の耳を疑った。上映されているのはハリウッド製超大作の予告編。その内容が「巨大生物とロボットの戦い」である事も、監督が日本のアニメや特撮をリスペクトしていることも知ってはいた。でもさ、これってアメリカ映画の英語版予告編でしょ?当然セリフも英語でしょ?いまのセリフ、確かに「Monster」じゃなくて「カイジュー」って言ったぞ!?


『パシフィック・リム』

パシフィック・リム

西暦2013年8月、太平洋の海底から突如現れた巨大怪獣がサンフランシスコ湾を襲撃。その後も次々と現れては太平洋沿岸の都市を破壊していく怪獣に対抗するべく、人類は英知を結集して巨大な人型兵器「イェーガー」を開発する。それは二人のパイロットが心をひとつにして操縦することにより、強大なパワーを発揮する新兵器だった。米、日、露、中、豪の環太平洋諸国はそれぞれ独自のイェーガーを建造し、過酷な訓練を経たパイロットたちが乗り組んで怪獣に戦いを挑む。人類の生き残りをかけて、怪獣対イェーガーの最終決戦が始まろうとしていた…


『キングコング』や『恐竜グワンジ』から『クローバーフィールド』まで、ハリウッド映画のスクリーンにはこれまでも数多の巨大モンスターたちが跳梁跋扈してきた。その中でも、特に近年のモンスター映画には、作り手が「日本の怪獣もの」にインスパイアされたと思われるものも多い。
1998年には我らがゴジラも、「GODZILLA」としてハリウッドで再生された。となれば、生まれたときから怪獣映画を浴びるように見て育った世代は、何を置いても劇場に駆けつける。自分たちが愛してやまないあの怪獣が、莫大な製作費と最新のSFXで生まれ変わるのだ。当然そこにはゴロザウルスの背中のチャックも、ラドンを吊っているピアノ線も見えるはずがない。だってハリウッドでエメリッヒで製作費180億だぜ!180億つったら平成ゴジラの15本分!『ウルトラマン』なら600話!『ウルトラファイト』なら(以下略)!凄ぇに決まってんじゃん!

…が。映画を見ながら元・昭和の少年たちは、心の隅にある種の「コレジャナイ」感を抱えていた。確かに最新技術で作られたモンスターは圧倒的な迫力で、動きも素晴らしい。でも、そこにいるのはあくまでも「巨大生物」であり、僕らの胸を躍らせてきたあの「怪獣」ではなかった。マンハッタンを疾走している「GODZILLA」は結局「核実験の放射能で突然変異したイグアナ」であって、ミサイルなんぞ物ともせずに悠然と破壊の限りを尽くしていたあの「ゴジラ」ではないのだ。
なんでアメリカ人って「人間の想像を凌駕した存在である怪獣」を作れないのかなあ。やっぱり、「広大な自然を文明の力でねじ伏せて開拓した国家」と、「台風の通り道で火山だらけの地震地帯という罰ゲームのような島国」の違いだろうか。それにしてもなあ…

しかし、潮目は確実に変わりつつある。海外で放送されていた日本製の特撮やアニメを見て育った世代が、ハリウッドの第一線で活躍する時代になってきたのだ。かつてコッポラが黒澤明を、ヴェンダースが小津安二郎をリスペクトしてきたように、ウルトラマンやマジンガーZを血肉としてきた映画人たち。その存在は、日本に限ったものではなかった。メキシコ生まれのギレルモ・デル・トロもその一人。

「僕は全ての男の子は生まれついてモンスターとロボットを愛するものだと思ってる。大人になっても、その愛情の本質はどこかに残るものだ」(ギレルモ・デル・トロ談 EMPIRE誌のインタビューより)

日本製のアニメや特撮に囲まれて育ったデル・トロ監督は、やがてハリウッドでその才能を認められ、ついに念願の「巨大ロボと怪獣が戦う大作映画」を完成させた。旧来のハリウッド製モンスター映画とは一線を画し、純粋に日本製のアニメ・特撮をルーツとした『パシフィック・リム』。登場するのは重量感に溢れた巨大ロボと、「Monster」でも「Creature」でもない、正に「カイジュー」。冒頭に紹介した予告編に登場したのは、この名称だったのだ。

「円谷怪獣の多くは突飛なデザインをしているから、生物学的には全く理解しがたい。でも、そうした怪獣たちを観て育った子供の心には、それはもう素晴らしいものだった」(同上)

本作は日本のアニメや特撮のスピリットに満ちている。そのひとつが「ケレン味」。元々は歌舞伎の世界で宙乗りなどの大技を指す言葉だが、その伝統は子供向けのTV番組にも脈々と受け継がれてきた。ヒーローは登場時にポーズを決めて口上を述べ(歌舞伎で言うところの「見得を切る」というやつです)、攻撃に際しては裂帛の気合でその技の名前を叫ぶ。ロボットアニメの中でも、主人公たちは「ロケットパアアァァンチ!」「ゲッター・トマホオォォゥゥク!」と叫びながら必殺技を繰り出していた。「そんなの黙ってやればいいじゃん」とは誰も言わない。だって、そのほうがカッコイイじゃん!
今回の『パシフィック・リム』で、ギレルモは(…ってもう呼び捨てになってますが)それをやってくれる。パイロットの「エルボー・ロケットオオォオ!」の叫びに乗せて、イェーガーが怪獣をぶん殴るのだ!

各国が建造したイェーガーに、「ジプシー・デンジャー」や「コヨーテ・タンゴ」といった個別の機体名がついている、というカスタムメイド感も嬉しい。古来(って言い方も変ですが)ロボットはワンアンドオンリーの存在であり、人類の希望をその身体ひとつに受けて敵と戦っていた。『機動戦士ガンダム』が画期的だったのは、そのワンアンドオンリーであったロボットを「量産可能な兵器」と再定義することにより、物語における「戦闘」を「戦争」にスケールアップさせた点だったのだが、『パシフィック・リム』はそこからまた半周回って原点に回帰したのである。

その他にもイェーガーの操縦システムが『マグネロボ ガ・キーン(複数のパイロットがシンクロして操縦する)』+『ジャンボーグA(パイロットの動きがロボットにダイレクトに伝わる)』だったり、ショルダー・キャノンを装備したコヨーテ・タンゴの造形がガンキャノン型だったり、何でしょうこの「全部乗せ」状態は!これよ、これ!これが見たかったのよ!日本古来の「ケレン味」が西洋の「科学」に裏打ちされて、素晴らしいビジュアルを作り出す。これぞ和魂洋才!文明開化!黒船襲来!

さて肝心の吹替え版はというと、歴代のロボットアニメでその声を響かせてきた声優陣がずらりと並んだ。『鋼鉄ジーグ』の古谷徹、『宇宙大帝ゴッドシグマ』の玄田哲章、『機動戦士ガンダム』の池田秀一、『コン・バトラーV』の三ツ矢雄二、『エヴァンゲリオン』の林原めぐみに加え、「ガンダム芸人」ケンドーコバヤシまで参戦するという超豪華版。歴戦の勇者たちの声で、エルボー・ロケットの威力も三倍増(当社比)だ!

昭和の少年(=おっさん)たちに限らず、アニメや特撮、何より「映画」を愛する全ての人々が必見の超弩級エンターテインメント『パシフィック・リム』。公開されたら絶対「十回見た」とか「俺は二十回」といった自慢大会が、主に新橋ガード下の飲み屋あたりで繰り広げられること必至だ!とにかく観るべし!


『パシフィック・リム』

パシフィック・リム/ 7インチ アクションフィギュア シリーズ1: 3種セット

[画像はAmazon.co.jpより]


おおおおおおおおおおおおお

(日本語吹替え版のスタッフ・キャストはこちら)

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世の中、夏の陣と言われていた参議院選挙も終わり、静かな日々が戻ってきたー…と思いきや、ミンミンジージー蝉さんが大活躍中!!ということで、夏ど真ん中、皆様いかがお過ごしですか?

さて、突然ですが皆様、今イギリスは王子様ご誕生でお祝いムード一色ですね。そんなイギリスで行われた去年のロンドンオリンピックを覚えていますか? あの豪華な開会式で特別なミッションを遂行していた、あのダンディなタキシード姿。バッキンガム宮殿にエリザベス女王をお迎えにあがり、スタジアムまでヘリで飛んでくる。そうです!! 007ことジェームズ・ボンド氏です。
今回は彼がスクリーンで活躍した2012年12月公開 007/スカイフォール 2枚組ブルーレイ&DVD (初回生産限定)

『007 スカイフォール』
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をご紹介します。公開前、映画館で流れる予告編を観るたび、きっとこれでMはいなくなるんじゃないかと不吉な予感がしておりました。そんな去年10月、谷育子さんが私に言ったのです。「立派に死んで来たわよ!」と…。やはりそうか…そうなのかー!! ぐすん…そんな気はしていましたが、とても悲しいネタバレです。しかし、私はめげません! 12月1日、映画館に向かいました。
ミッションの途中、銃弾に当たり、渓谷に落下して、序盤からいきなりさようなら? ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンド。数か月後、ハードディスクにあった5人のNATOの工作員の名前がインターネット上に次々と公表され、情報漏洩の責任を問われるジュディ・デンチ演じるM。さらにMI6本部も爆破され、そりゃ大変なことに。今回の悪は誰なのか?
ふきカエのキャストは、ボンドに藤真秀さん。Mに我が事務所が誇るトップエージェントこと谷育子さん。Mに異様なまでに執着するハビエル・バルデム演じるシルヴァに内田直哉さん。Mやボンドを厳しく監視するレイフ・ファインズ演じるギャレス・マロリーに原康義さんと見応えのあるキャストが勢揃い。お正月見逃した皆様、是非ご覧あれ!!

ラストサマー [Blu-ray]

続きまして2作目は、パート1が1998年6月に公開されました

『ラストサマー』
[画像はAmazon.co.jpより]

これまた私の独断と偏見。夏はやっぱりホラーだ!! スプラッターだ!! 以前紹介した「スクリーム」に似ているといえば似ている!? 夏といえば若者たちが集う。集った場所には事件がつきものって訳だ。

ある夏の夜、ジュリーことジェニファー・ラブ・ヒューイット(めちゃめちゃかわいいですよ)、ヘレンことサラ・ミシェル・ゲラー(お色気担当)、バリーことライアン・フィリップ(イケメンです)、レイことフレディ・プリンゼJr.(これまたイケメン)の4人は、不慮の事故によりある男性をひき殺してしまう。怖くなった4人は、証拠隠滅を図り死体を始末したが、その1年後、新たな恐怖に襲われる。あー、若者たちの一夜の過ちが、とんでもないことになってしまうのです。
そんな若者グループの4人、ジュリーを小林優子さん、ヘレンを三石琴乃さん、バリーに神奈延年さん、レイを室園丈裕さんが演じ、逃げる…逃げる…逃げるー!!! ちなみにこの作品、パート3までございます。原題が「I Know What You Did Last Summer」。ズバリ「去年の夏、おまえたちが何をしたか知っているぞ」というタイトル。
夏休みとはいえ、あまりハメをはずさないように気を付けましょう。

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悲しいにもほどがある…

20世紀の名作の数々をふきカエにこだわってお送りしているBSジャパン、この8月のラインアップでまずお知らせしておきたいのは、16日(金)・17日(土)の2夜にわたってお送りする『ベン・ハー 《完全版》』
以前このコラムでも紹介した通り、『ベン・ハー』は4月にロングバージョンで一挙放送しましたが、実は追加収録でノーカット全編のふきカエを制作しながら、放送時間の都合で若干カットしていました。今回は、前・後編に分けることで、ノーカットの「完全版」としてご覧頂きます!

思えば、3月に行った追加収録は、直前に亡くなった納谷悟朗さん(旧バージョンのチャールトン・ヘストン)に想いを馳せつつの作業でした。それが、まさか内海賢二さんとの最後のお仕事になってしまうとは・・・。おそらく内海さんにとっても、『ベン・ハー』追加収録が最後の「テレビ吹替え」だったのではないかと(ナレーションのお仕事は亡くなる直前までされていたようですが)。

俺がハマーだ!  DVD-BOX

サリーちゃんのお父さんや則巻千兵衛さん、007やスティーブ・マックィーンなど、内海賢二さんの声には子供の頃から楽しませてもらいましたが、何を隠そう、就職活動の頃に観ていたテレビシリーズ『俺がハマーだ!』(内海さんは主人公スレッジ・ハマーの上司役)がテレビ東京に入るきっかけになったもので、俺にとっては特別な存在でした。それが、首尾よくテレ東入りを果たして「木曜洋画劇場」の担当になり、数々の現場でご一緒することに・・・幸せだったなあ。

ウォーターワールド ≪初Blu-ray化!!≫

内海さんとのお仕事で一番の自信作は、ケヴィン・コスナーの『ウォーターワールド』。この映画の悪玉のデニス・ホッパーは実はけっこう小悪党なのですが、番組的には大悪党に見せたくて、内海さんにド迫力で演じてもらいました。結果、かなりの高視聴率を獲得。感謝に堪えません。
それと忘れられないのは、超B級映画『オクトパス』の番宣ナレーション<デカいにもほどがある!>。ダイオウイカもびっくり、豪華客船を襲う巨大タコに、打合せで思わず「デカいにもほどがあるよね」とつぶやいたら、「それ番宣に使えますね」ということになって、あれよあれよで内海さんのパワフルボイスでコールして頂くことに。サイコーでした。

あまりにも急な訃報で、いまだに実感がわかない状態ですが、そんな兆しを少しも感じさせない内海賢二さんの美声が聴ける『ベン・ハー』を、ぜひこの機会にお楽しみください。

ダーティハリー [Blu-ray]


8月のBSジャパンは、ほかにも

10日(土) 『ダーティハリー』
(クリント・イーストウッド=山田康雄さん)

23日(金) 『エデンの東』
(ジェームズ・ディーン=野沢那智さん)

エデンの東 [DVD]

24日(土) 『俺たちに明日はない』
(ウォーレン・ベイティ=野沢那智さん)


など、忘れ得ぬ名作ふきカエが続々登場します。
どうぞお見逃しなく!


[作品画像はAmazon.co.jpより]


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