外国映画をこよなく愛し、数々の吹替えの制作現場に携わり、音声業界でも名うてのふきカエ愛好家である吉田プロデューサーと長谷川マネージャーとMr.ダークボ がぜひ観ていただきたい名作・秀作をご紹介!

※Amazonのページで紹介しているビデオテープ・DVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。

すべての山に登りなさい。あなたの夢を見つけるまで

先日ハリウッドで華々しく開催された第87回アカデミー賞授賞式。アメリカのショウビズ界最大の式典で今年最も素晴らしかったのは、レディー・ガガがある名作映画に捧げたトリビュートのステージだった。日頃は先鋭的なパフォーマンスで知られる彼女が今回は全くの正攻法で、劇中に登場する名曲たちをメドレーで歌い上げたのである。その時、万雷の拍手と歓声はレディー・ガガだけでなく、ステージに登場したその映画の主演女優にも惜しみなく降り注いだ。あの夜の主役は紛れもなく、ジュリー・アンドリュースだった。


『サウンド・オブ・ミュージック 製作50周年記念盤』

サウンド・オブ・ミュージック 製作50周年記念盤

(日本語吹替え版のスタッフ・キャストはこちら)


第二次世界大戦前夜のオーストリア・ザルツブルグ。活発で歌が好きな修道女マリアは、修道院の規律に馴染めない。心配した院長の勧めで、マリアは住込みの家庭教師として、退役将校トラップ大佐の邸宅で働くことになる。妻を亡くした大佐は七人の子供たちを、軍隊のような規律で厳しく教育していた。そんな方針に反発したマリアは、厳しい父親に怯えて心を閉ざしていた子供たちを外に連れ出し、歌う喜びを教える。マリアの明るさは子供たちに笑顔を与え、頑なだった大佐の心をも融かしていく…


ブロードウェイで大当たりを取ったミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』が映画として公開されたのは1965年。瞬く間に世界中で大ヒットとなり、日本でもその後何度もリバイバル公開された。テレビでの放送やパッケージソフトでの視聴を含めれば、この作品に触れたことのある人は膨大な数に上るに違いない。
また映画そのものは未見でも、中で歌われている名曲の数々、特に『ドレミの歌』を聴いたことがない、という日本人はまずいないだろう。

映画の冒頭で、ワイドスクリーンいっぱいに映し出される雄大なアルプスの山並み。キャメラは美しい森や湖の上を滑るように移動し、やがて高原をひとり歩くマリアの姿をとらえるや、地上へと優雅に舞い降りる。画面がアップに切り替わると同時に、タイトル曲の『サウンド・オブ・ミュージック』がマリアの澄みきった歌声で流れ出す。
“ハリウッドの巨匠”にして“偉大なる職人監督”(何しろ後年あの『スター・トレック』 まで撮っているのだ)ロバート・ワイズの演出には目を見張るしかない。
ワイズは本作の三年前に、やはりブロードウェイ・ミュージカルを映画化した『ウエスト・サイド物語』でも同じ手法(こちらではキャメラがマンハッタンの空撮から、指を鳴らすジョージ・チャキリスの手元へと急降下する)で観客の心をつかんでいる。
まさに映画でしか成し得ない、躍動感あふれるスペクタキュラー。さすがは“偉大なる職人”である。

そしてもちろん、全編を彩る数々の名曲たち。雄大な「サウンド・オブ・ミュージック」に楽しい「私のお気に入り」、崇高な「すべての山に登れ」から感涙の「エーデルワイス」まで。ミュージカル界の二大巨頭、オスカー・ハマースタイン2世とリチャード・ロジャースの作詞・作曲による珠玉のナンバーは半世紀を過ぎた現在でも、テレビのCMから音楽の授業に至るあらゆる場面で繰り返し奏でられている。
曲を聴けば映画のシーンが鮮やかによみがえり、映画を見た後はまた曲を反芻したくなる。映画における「映像」と「音楽」の最高のコラボレーションが結実した、奇跡のような名作である。

前述の通り『サウンド・オブ・ミュージック』は日本での初公開から半世紀の間、国内のあらゆるメディアで人々に愛されてきた。何度ものテレビ放映とパッケージソフトのリリースを経て、今回登場するのは「製作50周年記念盤」。特筆すべきは数々の映像特典に加え、劇中に登場する数々の名曲が全て日本語で歌われていること。

昔からミュージカル映画の吹替え版に際しては、歌だけは原曲のまま字幕処理になるか、また吹替えたとしても、台詞を担当する声優とは別の歌唱者が立てられることが通例だった。吹替えと歌はどちらも高度な技術を要する専門職なので、なかなか両方を一人で、というのは難しい。これはハリウッド映画でも同じで、例えば『マイ・フェア・レディ』や『ウエスト・サイド物語』のヒロインの歌が、演じている女優とは別の歌手による吹替え、というのは有名な話。
ディズニーアニメにおける山寺宏一氏や昨年の『アナと雪の女王』などは、むしろ少数派なのだ。

その点、今回の日本語吹替え版では10年前にリリースされた「40周年記念盤」に続いて、台詞担当の声優自身が歌も吹替えている。
主要キャストを演じたのは、マリア=平原綾香、トラップ大佐=石丸幹二、リーズル=日笠陽子の三人。このうち石丸・日笠の両氏は歌と演技ともに多くの実績があるのは知られるところだが、歌手の平原綾香はこれが声優初挑戦となる。

三時間近い長丁場で、マリアはほぼ出ずっぱりの主役。自分も吹替え制作の現場を知る身として正直に言えば、そこに一抹の不安もあった。
だが、そんな不安は映画が始まると同時に吹き飛んでしまう。巻頭の歌のシーンから、彼女は完全にマリアに成りきっていた。修道院でのお転婆娘から子供たちの良き友人を経て、家族を愛する母親へと変わっていくそのキャラクターを、三時間の間、見事に日本語で演じたのである。

耳に馴染んだ日本語の歌詞と共に、素晴らしい物語が確かな言葉で胸に響いてくる。
もし今回の吹替え版で初めてこの作品に触れる若い世代がいるとしたら、それは珠玉の名作との出会いとして、誠に幸運なものに違いない。 本作の数十年来のファンとして、心からそう思う。


サウンド・オブ・ミュージック 製作50周年記念版 ブルーレイ・コレクターズBOX(5枚組)(5,000セット完全数量限定) [Blu-ray]

サウンド・オブ・ミュージック
製作50周年記念版
ブルーレイ・コレクターズBOX(5枚組)
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[画像はAmazon.co.jpより]

映画の枠を超えて”文化遺産”と呼ぶべき至宝


『サウンド・オブ・ミュージック』製作50周年記念公式サイト
http://video.foxjapan.com/library/sound-of-music/


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続・〈007連続放送〉やってます!

1月に始まったBSジャパン「シネマクラッシュ金曜名画座」の〈007連続放送〉、おかげさまで、これまでのところ大好評を頂いてます。いやマジで。
一方で、なぜ〈男はつらいよ〉みたいに毎週やらないんだ!といったお叱りもありますが、そこは大人の事情ってもんが・・・それに、『ダイヤモンドは永遠に』と『死ぬのは奴らだ』を2週続けて放送したら、ジェームズ・ボンドの声だった内海賢二さんが翌週には宿敵カナンガ、なんてことになりますぜ。

007/死ぬのは奴らだ(TV放送吹替初収録特別版) [DVD] ともあれ、ショーン・コネリー(&ジョージ・レーゼンビー)編は無事終了。4月10日(金)放送の『死ぬのは奴らだ』(から、いよいよロジャー・ムーア編がスタートします!
4月と言えば、ポール・マッカートニーが再び来日して「死ぬのは奴らだ」をプレイしてくれるはず。それに、俺にとって広川太一郎さんとの最後の仕事になった『スパイ・ゲーム』新録(2005年4月放送)からちょうど10年、そして内海賢二さんとの最後の仕事だった『ベン・ハー』追加収録(2013年4月放送)からまる2年ですよ。あ、滝口順平さんとの最後の仕事、『アンタッチャブル』新録は2003年4月放送だった・・・ああもう、『死ぬのは奴らだ』観ながら泣いちゃうな、俺。
前々回のこのコラムでふれた「BRUTUS」誌での吉田Pとの対談(というか駄話)は、主にギョーカイ関係者から予想以上の反響がありましたが、あの時話題にした『007/オクトパシー』(6月放送予定)の爆笑ガヤも、ようやくお送りできます(カットされませんように…)。

捜査官X [DVD]

「007」以外の週には、クリント・イーストウッド(ふきカエはもちろん山田康雄さん)の『ダーティファイター』とか、マリリン・モンロー(もちろん向井真理子さん)の『お熱いのがお好き』など、古今東西の名画をお送りしますが、初の無料放送となるのは『捜査官X』(5月放送予定)。ドニー・イェンと金城武というアジアのトップスターが共演したアクションミステリー大作です。ふきカエはDVD版を使用する予定なので、ドニー師匠は大川透さん、金城さんはご本人…ではなく東地宏樹さんですね。

金城武さんと聞いてつい思い出すのは、昔テレビ東京で初放送した『君のいた永遠(とき)』という香港映画。金城さんとジジ・リョン、カレン・モクが共演したラブストーリーで、金城さんのふきカエは宮本充さんだったかな。
この放送の際、番宣スポットでナレーションをお願いしたのが、小杉十郎太さんでした。単にロマンチックな小杉ボイスをイメージしてのキャスティングでしたが、ナレ録り現場で小杉さんから、金城武さんとの因縁話を聞かされてビックリ。
何でも、ディズニーのアニメ映画『ターザン』の日本語ふきカエのオーディションで金城さんに敗れ、悔しい思いをしていたところ、「木曜洋画劇場」(俺が担当してなかった頃)の『ダウンタウン・シャドー』で、よりによって金城さんのふきカエをすることになり・・・今度はナレーションですか、と苦笑いされ、恐縮してしまったのを覚えています。

ターザン&ジェーン [DVD]

その後小杉さんは、続編『ターザン&ジェーン』で、金城さんに替わってターザンをふきカエることに。そして「007」のDVDでは、ジョージ・レーゼンビーとダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドをふきカエてます。
今回の〈007連続放送〉は極力テレビ版のふきカエを使用しているので、『女王陛下の007』も広川ボンドでしたが、小杉ボンドも捨て難い魅力ですから、ぜひDVD・ブルーレイでチェックして下さい。


[作品画像はAmazon.co.jpより]


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