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日本列島を散々荒らして去って行った台風。被害はいかがだったでしょうか。被害に遭われた方々には、お見舞い申し上げます。私はといいますと、幸い何事もなく、晴れ渡る台風一過の空の下、今日もペンを走らせています。
では、早速1作目。中国、北京が舞台の「レッド・コナー」、邦題
監督はジョン・アヴネット氏。主人公ジャック・ムーアを演じるのは“オランジーナの寅さん”ことリチャード・ギア様。
ジャック・ムーアは、アメリカの通信企業に勤めるエリート社員。中国との合併事業の一つ、衛星通信についての取引をまとめるため、北京で仕事をしていた。しかし、彼はイケメン(当たり前だ)。プライベートも充実。美女と一夜を共にするが…目覚めると彼女は殺されていた。罠にかけられたムーアは、その場で逮捕されてしまう。国選弁護士シェン・ユイリン(バイ・リン)も、無罪を信じていなかったが、やがて、この事件の裏にある中国政府の強力な影を知ることになる。2人は命を懸け、真実と戦う。さて、そのラストとは…。
ふきカエのキャストには、ジャック・ムーアに金尾哲夫さん、シェン・ユイリンに日野由利加さん。とにかくこの2人の熱演は見事です。
2作目はがらりと変わって、2001年に公開されたロマンティック・コメディの
この11月は、ウチのチャンネル「ザ・シネマ」で半年間続けてきた「DVD未収録イーストウッド山田康雄ふきカエHD化プロジェクト」の最終月になります。最後に放送するのは『奴らを高く吊るせ!』。これまでには『恐怖のメロディ』、『アイガー・サンクション』、『アルカトラズからの脱出』、『戦略大作戦』、『ファイヤーフォックス』を半年かけてお送りしてきました(DVD未収録は放送時点での状況です)。
ウチのチャンネルでは懐かしふきカエを発掘してお茶の間に再びお届けしたいのですから、放送にかけるテープは、古ければ古い方がいい。80年代や90年代のテープが望ましい。しかも当時放送されてから何十年間も再放送されてこなかった幻のテープだったら、なお最高!これこそ発掘の意義があるというものです。
ただし、そういうテープには問題があります。そう、画質が悪い!当時のテープですから、もちろん全部SDで、HDなんてものはありません。SDテープでも比較的新しいデジタルのテープだったらマシですが、アナログは本気で汚い。「一昔前までオレたちはこんな画質でTVを見てたのか!?」と驚くほどですが、実はそうではありません。そのテープが録画され初オンエアされた時、たとえば80年代当時の方が、まだ画質的には綺麗だったはずです。アナログだからテープの劣化が起きちゃってるってことですねぇ。かつて我々は劣化前の画質でTVを見ていたのです。
そこまで汚くなかったとは言え、しかし所詮はSD。劣化の無いデジタルテープのものであっても、HD時代の我々の目にはボケボケに見えてしまうことも否めません。
以上はテープに由来する技術的な問題ですが、もう一つ。これはデジタルもアナログも関係なく、HD化以前、TVでふきカエ映画を視聴する際に存在していた“トリミング問題”という文化的な大問題があるのです。
トリミングと言っても犬の毛を刈るわけではありませんよ? トリミングとは「余分なものを取り除いて形を整える」という意味ですが(犬の場合もそういうこと)、TVでのふきカエ映画について「トリミング」と言った場合は「4:3スタンダードにする」という意味です。
ちょっと説明が必要ですね。一昔前までのブラウン管TVを思い出してください。今の液晶TVよりも正方形に近い長方形で、横幅はワイドではなく今のより狭かったですよね? 縦横比は4:3でした。これを「4:3スタンダード・サイズ」と言います。
実は4:3スタンダードは、もともとはTVではなく映画の縦横比でした。戦前の映画は4:3スタンダードだったのです。戦後、TVが普及して映画は客を奪われ、その対抗策として大迫力のワイド・スクリーンを発明し(その前にカラーも発明しましたが)、以来、映画ではワイドが当たり前になっていきました。TVは4:3スタンダードで映画はワイドと、縦横比がそこで分かれてしまい、50年ちかくにわたって違い続けたのです。
そして、一昔前のブラウン管TVって、今の薄型液晶TVよりも小さくありませんでしたか? 地デジ化の際、「ブラウン管から液晶ワイドTVに買い替える場合、+7インチが目安だ」なんて言われていたのを思い出してください。昔のブラウン管TVは薄型ではなかったので、画面を大きくすれば厚みも増し、そんな巨大なしろものを置けるリッチなご家庭は限られてきますから、TVはいまよりも小さかった。
その小さい、しかも4:3と正方形により近い画面で、たとえばものすごい横長の、スコープ・サイズの映画を見せられるとしたら…正直言ってこれはかなりキっツいです。画面上下には黒い余白(「余黒」とでも呼ぼうか?)が表示されちゃいます。絵が映っている面積が少なすぎ!ワイド・スクリーンは迫力を出すために発明されたものですが、昔のブラウン管TVでそれをそのまま放送すると、むしろ絵が小さくなってしまい、かえって逆効果だったのです。
そこでTVでは、ふきカエ映画を放送する際、映画のワイドなオリジナル画面の端っこを裁ち落とし、TVの4:3画面にピタっと収まるようにして放送していました。画面を切断するという荒療治ですので、けっこう強引なことになります。端っこに映っていた人がカットされているとか、ワイドでこそ活きる壮大な風景がぶった切られているとか、構図のバランスが台無しになっているとかはザラです。こう書くとまるでTV業界がトリミングをやっていたようですが、映画の権利者(映画会社)や、時には監督本人がTV放送向けにこれをやっていました。そう、これが「トリミング」なのであります!
まぁ、いかんせん縦横比が違っていたので、TVで映画を放送すること自体が根本的な矛盾をはらんでおり、その矛盾を押し通していたのですから、当時これは仕方のないことだったのです。
いまはTVがワイドになってくれたおかげで、この矛盾はほぼほぼ解消されました。映画のワイド・サイズの中でも「ビスタ・サイズ」と呼ばれるものはHD液晶TVの縦横比16:9とほとんど同じですので、トリミングせずにそのまんま放送できます(「ノートリミング」と言う)。超横長のスコープ・サイズの映画は、いまでもワイドTV(≒ビスタ)サイズぐらいにトリミングされることはありますし、またはノートリミングで放送する場合ですと、やはり余黒(?)がまだ上下に多少は出ちゃいますが、昔の4:3ブラウン管TVの頃ほどは気にはなりません。TV自体が大画面化したこともあって、「絵の面積が少ない!」とはあまり感じずに済みます。
経緯としては
・映画がかつて4:3だった
・TVもそれを踏襲し映画館から客を奪った
・そこで映画はワイド路線に舵を切った
・TVはワイドの映画を放映する際は左右をぶった切って4:3でふきカエ放送していた
・21世紀に入りTVもワイドになって、映画をそのまま放送できるようになった
・いまではTVも映画もワイドになった←イマココ
という変遷をたどったわけです。
さて話を戻します。ウチのチャンネルでは、昔の懐かしふきカエのテープを発掘して放送しており、古ければ古いほどいいと言っているわけですから、当然、そのテープはTVワイド化以前のもので、映画が無理くり4:3スタンダード・サイズにトリミングされて録画されていることは、言うまでもありません。
ワイドではない。4:3スタンダード・サイズである。それをいまの時代に放送するのは、ちょっとなぁ…と思わないでもありませんし、というか、本来ワイドとして作られたものを、当時のやむをえない事情によるとはいえ、画面をぶった切ってしまっている、というのは、いまの感覚で考えるとさすがに残念な気もします。
そこでウチのチャンネルでは、大昔のテープから山田康雄さんら偉大なる昭和の名人たちの素晴らしいふきカエ音声だけを持ってきて、ワイド画面の綺麗なHDテープに音だけ上書きする、という取り組みをこの6ヶ月間続けてまいりました。
これをやると、SDのテープをそのまま放送するより、まぁ当然、うんとコストがかかるんですねぇ。数十倍はかかる、と言っておきましょうか。ウチのチャンネルでやっている懐かしふきカエ全部でこれをやるわけにはいきません。半年間続けてきた今回の山田康雄さんのプロジェクトは今月で終わりですが、来年はどんな作品をやろうかな、と、早くも次の計画を練り始めたところであります。
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