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映画監督はよく様々な肩書きをつけて呼ばれます。例えば、ちょっと退屈なくらい上映時間の長い大作を撮る権利を有する『巨匠』(例:デヴィッド・リーン)。どんなに素っ頓狂な作品を作っても「あー、あの人だからねー」と許されてしまう幸運な才能の持ち主『鬼才』(例:三池崇史)。実はこれがデビュー作の新人なんだけど、名前だけっつーのもねえ…というときに使われる『俊英』(例…いっぱいいますw)
そんな中で、しばしば『異才』(決して王道ではないが、自分なりの作劇法を確立している、といったイメージでしょうか)という定冠詞がつけられるデヴィッド・フィンチャー監督。その最新作が公開されます。
凍てつくようなスウェーデンの冬。ジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィストは、大富豪ヘンリック・ヴァンゲルから奇妙な依頼を受ける。ヴァンゲル一族の娘で当時16歳だったハリエットは40年前に謎の失踪を遂げていた。ヴァンゲルの依頼はその事件を調査し、犯人を突き止めてほしいというものだった。背中にドラゴンのタトゥーを持つ謎の天才ハッカー、リスベット・サランデルとともに調査を始めたミカエルの前に、やがて恐ろしい真実が姿を現し始める…
原作はスウェーデンの作家スティーグ・ラーソンによる世界的ベストセラー「ミレニアム」三部作で、過去にスウェーデン版の映画化もされています。いわばリメイクともいえるこの企画を『異才』デヴィッド・フィンチャーがどう料理したか。詳しくは作品を見ていただくとして、まず特筆すべきは舞台となっているスウェーデンの、極限まで凍てついた『空気』。「セブン」以来フィンチャーとタッグを組んでいる撮影監督ジェフ・クローネンウェスが捉えた、白を基調とするその『空気』の中に、凄惨な猟奇殺人が鮮やかなコントラストで描き出されます。
タイトル・ロールの『ドラゴン・タトゥーの女』ことリスベットを演じるのは、「ソーシャル・ネットワーク」にも(ちょこっと)出ていたルーニー・マーラ。天才ハッカーである彼女は、なぜ外部との接触を拒むかのように全身をタトゥーとピアスで『武装している』のか。事件の謎解きと並行して次第に明かされていく彼女の物語が、作品に深い陰影を加えています。彼女はこの演技で見事、今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。
主人公のミカエル役にはダニエル・クレイグ。六代目ジェームズ・ボンド(新作「007/スカイフォール」撮影中!)で知られる彼が今回はアクションを封印して、人生を挽回するべく事件の調査を引き受けた落ち目のジャーナリストを好演。肉の薄いその容貌が、寒々しい北欧の風景にベストマッチしています。やっぱり役者は面構えですなあ。
そしてもう一人、ミカエルに事件の調査を依頼する大富豪ヘンリックを演じるのが名優クリストファー・プラマー。「サウンド・オブ・ミュージック」のトラップ大佐も御年82歳ですが、先日公開された「人生はビギナーズ」では老境に入ってからゲイに転向(!)してしまう父親を演じるなど、堂々たる現役っぷりです。マックス・フォン・シドー(82)やクリストファー・リー(89)と共演して「三大爺・地球最大の決戦」なんて映画も撮れそうな勢い(監督は新藤兼人でひとつ)。
本作に先立ってスウェーデンで製作された映画「ミレニアム」シリーズは既に三部作が完結し、日本でもDVDがリリースされています。
『ミレニアム |
『ミレニアム2 |
『ミレニアム3 |
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[画像はすべてAmazon.co.jpより] |
こちらでリスベットを演じるノオミ・ラパスもハリウッド版に負けず強烈な役作り。本家の意地ってやつですか。日本では最近あまり馴染みのないスウェーデン映画(個人的には「刑事マルティン・ベック」以来か?)ですが、そこはベルイマンやラッセ・ハルストレムを生んだ国、映画づくりのセンスには定評があります。ハリウッド版と見比べてみるのも一興かと。
さて肝心の吹替え版のお話を…と行きたいところですが、なにせ作品が作品ですから何を話してもネタバレになってしまう恐れがあり、あまり詳しくは申せませぬ。主役二人のキャスティングについては、いずれ劣らぬ実力派声優の皆さんにお集まりいただき、オーディションを経て決定しました。仕上がりのほどはぜひ劇場でご覧ください。木戸銭を頂戴するに値する傑作に仕上がっているのは確かです。
デヴィッド・フィンチャー監督の作品ではいつも、『その奥底には何があるか』が描かれています。それは「エイリアン3」では死闘の果てにリプリーが手にした救済であり、「セブン」や「ゾディアック」では人の心に潜む漆黒の闇であり、「ソーシャル・ネットワーク」では成功と挫折を経てただひとつ残った魂の孤独でした。今回、雪と氷に覆われた北欧の孤島からミカエルとリスベットが掘り起こすものは、果たして何でしょうか。劇場の闇の中で『それ』と対峙することこそ、映画に耽溺する至福の喜びに違いありません。
寒い日が続きますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?月日が流れるのは本当に早いもので、あっという間に2月ですね。世間では消費税の増税などいろいろと問題の多い我が日本ですが、好きな事は好きでいいのです。私たちは、映画を愛しましょう。そして大いに語り合おうではありませんか!!
という訳で、まずは1作目。
1998年のイギリス映画、
ヘンリー8世がカトリックを捨て、新教である国教会を打ち立てた事で、国内外に新旧の宗教抗争がくすぶる16世紀のイングランド。プロテスタントであるエリザベスは幽閉されてしまうが、メアリーの病死後、25歳で女王に即位。フランスやスペインとの政略結婚に国の安政を願う、重臣ウィリアム・セシルの心とは裏腹に、女王エリザベスはロバート・ダドリー卿との恋愛関係を楽しむ。
そんな中、スコットランドとの戦争に敗れ、ローマ法王やカトリック列強国によるエリザベス暗殺未遂事件まで起こる。形勢を立て直すため、フランシス・ウォルシンガムの重用により国の危機を回避しようと、スコットランドのメアリ・オブ・ギーズを暗殺しカトリック派を処刑する。そしてエリザベスは、国家と結婚すると宣誓するのであった。
エリザベス1世(ケイト・ブランシェット)にドラマやバラエティで大活躍中の高畑淳子さん、ダドリー卿(ジョセフ・ファインズ)に大塚芳忠さん、ウォルシンガム(ジェフリー・ラッシュ)に勝部演之さん、ウィリアム・セシル(リチャード・アッテンボロー)に中庸助さんなどベテラン勢でかため、見ごたえのある作品になっております。
2007年には続編の「エリザベス:ゴールデンエイジ」が公開。是非、2作続けてご覧くださいませ。
2作目は、1991年の作品、
です。
消防士だった亡き父の跡を継ぐ兄、スティーブンと同じく、弟、ブライアンもまた消防士になった。しかし配属されたのは、スティーブンが隊長を務める、過酷な任務遂行の第17分隊。兄に対する葛藤、父への想いに悩むブライアン。
そんな中、バックドラフト現象を利用した連続放火事件が発生。消防士としての迷いを感じていたブライアンは、消防士を辞め火災捜査官に。
その上司、リムゲイルは「火は生き物だ」と繰り返しつぶやきながら、火災事件を丹念に調べている最中、事件に巻き込まれ怪我を負う。捜査するブライアン。次々に浮かび上がる疑惑や状況証拠は、スティーブンが関与している事を指していた。そんな複雑な心境のブライアンを嘲笑うかのように、またもや火災発生のサイレンが街を襲うのであった。
その先にあるものは…。観終わった後に考えさせられる作品です。
ふきカエのキャストは、スティーブン(カート・ラッセル)に石丸博也さん、ブライアン(ウィリアム・ボールドウィン)に関俊彦さん、リムゲイル(ロバート・デ・ニーロ)に小林清志さん、ジョン(スコット・グレン)に納谷六朗さんと、こちらも見ごたえ十分、ベテラン勢そろい踏み。じっくりとご覧あれ。
今回も「午後のロードショー」(テレビ東京、毎週月~木曜午後1時25分)ネタです。
関東地区以外の皆さんには申し訳ありませんが、お付き合い下さいませ。
この2月のイチオシは何と言っても、ウェズリー・スナイプスの「ブレイド」シリーズ一挙放送!
20日(月) 『ブレイド』
21日(火) 『ブレイド2』
22日(水) 『ブレイド3』
『ブレイド』 | 『ブレイド2』 | 『ブレイド3』 | ||
[画像はすべてAmazon.co.jpより] |
3本とも「木曜洋画劇場」が地上波初放送で、特に『1』と『2』は、かなり入れ込んで吹替え版を制作した思い出深い作品です(…いや、どんな作品も入れ込んで作るんですけど、このシリーズは特に…)。
吹替え演出は向山宏志さん。そして制作を担当してくれたのは、この「ふきカエレビュー」でもおなじみの吉田Pであります。
この木曜洋画バージョンで注目して頂きたいのは、やはり声のキャスティングですね。
無敵のヴァンパイアハンター、ブレイドの声(DVD版は菅原正志さん)は、大塚明夫さん。そして、ブレイドの頼れる“親代わり”、ウィスラーの声をお願いしたのは、明夫さんの実のお父様、大塚周夫さん! ブレイドのピンチに絶妙のタイミングで登場するウィスラーの「行くぜブレイド、待ってろよーぉ!」が“泣ける”と評判でした。
この父子共演の好評に気をよくして、『ブレイド2』の吹替えでは、ブレイドと切ない想いを通わせる女ヴァンパイアの声を、当時、明夫さんと新婚ホヤホヤだった沢海陽子さんにお願いしちゃいました。ファミリーで和気あいあいの現場だったんですけど…(以下省略)
…とにかく最高のキャスティングを得て、ひたすらカッコイイ番組を作ってやろうと、セリフも隅々まで凝りまくりました。『1』のクライマックスのブレイドの「決めゼリフ」は、俺のオリジナルにして自信作であります。これからご覧になる方には、ぜひキマッター!って感じを味わって頂きたく。
(この「決めゼリフ」については、以前こちらに書きました。ネタバレになるので、興味のある方は「午後ロード」の放送後にお読み下さい。)
自分は「木曜洋画劇場」の放送2000回を前に異動してしまったので、「2000回記念」として放送した『ブレイド3』は担当できませんでしたが、遺志(?)を継いだスタッフが同じキャストで3部作の「木曜洋画バージョン」を完結させてくれました。
『3』の吹替え制作時の模様、大塚周夫さん・明夫さん、本田貴子さん、向山Dのインタビューは「木曜洋画2000回記念」サイトで今も読めますので、よろしければどうぞ(ご案内ばかりですみません)。
さて、2月の「午後のロードショー」にはもう一つ、見逃せない特集があります。
13日(月) 『逃亡者』
14日(火) 『追跡者』
『逃亡者』 | 『追跡者』 | |
[画像はすべてAmazon.co.jpより] |
ご存知、往年のTVシリーズの映画化でトミー・リー・ジョーンズがアカデミー助演男優賞をゲットした大ヒット作と、ジョーンズ演じるジェラード警部を主人公にした続編の連続放送です。
実はかつて「木曜洋画劇場」でもこの2作を2週連続で放送したことがあり、その際『追跡者』は、ジェラード警部以下『逃亡者』からの続投キャラに、同じ声優陣を集めて吹替えを新録しました。ちなみにジェラードが追跡する新たな逃亡者はウェズリー・スナイプスで、吹替えはもちろん大塚明夫さん!