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…渡辺謙演じる芹沢博士が初めてその名を告げるのは、ドラマも中盤に差し掛かるころ。しかしその後もしばらく、稀代の大怪獣はスクリーンに登場しない。古い記録フィルムに一瞬映る影や、大地に残された破壊の痕跡を息を詰めて見守ることしばし。ついに誰もが知る「あの咆哮」が劇場内に響き渡る。見上げた銀幕の中に、見紛う事なき「彼」の悠揚たる姿があった。
15年前に日本での原発事故で妻サンドラを亡くしたジョー(ブライアン・クランストン)は、今も事故の原因となった異常な振動の謎を追っていた。ジョーの息子で爆発物処理班の軍人であるフォード(アーロン・テイラー=ジョンソン)は父の調査に同行して出会った芹沢博士(渡辺謙)から、太古から生きる巨大生物の存在を知らされる。1950年代に米軍が行った核実験は、実は「それ」を葬るためだった、と。その時、芹沢の所属する研究施設で保管されていた巨大な繭が孵化を始め、異様な生物が姿を現す。地球と人類を、未曾有の破壊と恐怖が襲おうとしていた…
ゴジラがハリウッドでリブートされるのはこれが二度目。前作のエメリッヒ版がゴジラとはまったく別モノの映画になってしまった(いや「怪獣映画」ではなく「ディザスター映画」として観れば、アレはアレで結構面白いのだが)のを知る身としては、警戒心の一つも抱こうというものである。
しかし今回の監督ギャレス・エドワーズは「ゴジラの何たるか」を確実に知っていた。彼が一番好きなゴジラ映画は(第一作は別格として)1968年公開の『怪獣総進撃』だそうで、これは奇しくも筆者が初めて劇場で観て「怪獣」と「映画」の虜になった作品。『怪獣総進撃』のファンに悪い人はいないのであって、結果今回の『GODZILLA ゴジラ』は、オリジナルの重厚さと現代ハリウッドのエンターテインメント性を兼ね備えた傑作となった。
本作が「全く変わらないのに全く新しい」ゴジラ映画となった理由の一つが、ゴジラというキャラクターの新たな背景である。
オリジナルの『ゴジラ』シリーズは1954年の第一作から2004年の『ゴジラ FINAL WARS』まで、全28作が製作された。主役のキャラクターが強烈であればあるほど、回を重ねるごとにそれを見せる筋立てが手詰まりになっていくのはシリーズものの宿命であり、我らがゴジラも第一期の中盤以降は「よい子の味方」へと変貌していく。それを憂うマニアたちの「原点に帰れ」との声に応えてシリーズは度々リセットされるのだが、その「原点」とは「ゴジラは核実験によって生まれた」という設定であった。
第一作の『ゴジラ』が「ビキニ環礁での核実験の恐怖」を背景にしていたことは今では定説となっている(ただし当時の製作者たちにそこまで明確な反核・反戦思想があったかは疑問の残るところではあるが)。従って、これまでゴジラが「原点に帰る」のは、取りも直さずその存在を「核のメタファー」として描くということだった。
しかし今回ギャレス・エドワーズ監督は、オリジナルに最大限のリスペクトを捧げつつ、そこには回帰しなかった。劇中で芹沢博士が「1954年に米軍が行った核実験は…」と解説を始めれば見ているこちらは当然「ああ、来たな」と思うわけだが、そのあと博士によって明かされる真相はこちらの予想とは全く違うところに着地する。ゴジラは誕生後50年を経て、ついに核の呪縛から解き放たれたのである。
それでいて本作は、核兵器に対する恐怖を決して忘れてはいない。芹沢博士が亡父の形見を手に米軍将校に告げる一言、その一言に、かつて日本を襲った原爆の悲劇が込められている。その万感の思いを短い台詞で見事に表現した渡辺謙の存在は、やはり本作になくてはならないものだった。
今回のゴジラの特徴はもう一つ、徹底した「怪獣映画」であること。物語の後半、圧倒的な破壊力を持つ大怪獣の前に、人間たちのなす術はない。もとより人間の存在などゴジラの眼中にはないのだから、我々観客も劇中の登場人物たちと同じく、その偉容を畏怖の念を持って仰ぎ見るのみである。となればこの作品は、映画館のなるべく前方の席から文字通り「見上げる」のが正しい鑑賞法。前の席だと字幕が見づらくて、となれば、ここでこそ吹替え版の出番となる。
芹沢博士の声はもちろんケン・ワタナベ御本人。最近出演したハリウッド映画の日本語版を自ら吹替えているのはもちろん、過去には声優として『風と共に去りぬ』のクラーク・ゲーブルや『ランボー』のスタローンを吹替えているのは知る人ぞ知る。さらに原康義、小松史法といった実力派から波瑠、佐野史郎(ゴジラマニアで有名ですよね)の俳優陣までバラエティに富んだキャストの中でやはり嬉しいのは、佐々木勝彦氏が米軍将校を演じていること。
俳優としての初主演作が73年の『ゴジラ対メガロ』で、その後も『メカゴジラの逆襲』『ゴジラvsビオランテ』『ゴジラvsキングギドラ』と計四作に出演した佐々木氏は、初期の平田昭彦や小泉博と並んでゴジラシリーズ後期の「顔」ともいえる存在。本作でも、ゴジラの圧倒的な力を前にそれでも総力を挙げて作戦遂行の命を下す佐々木氏の声は、ドラマに毅然とした矜持を与えている。
かつて昭和ゴジラに声援を送った元少年も、『とっとこハム太郎』と二本立てだった平成ゴジラの上映館(当然家族連れでにぎわっている)に単身通い続けた怪しいオジサンも、エメリッヒ版『GODZILLA』を「ありゃトカゲでしょトカゲ!」と酷評した鼻持ちならないマニアも(以上は全て筆者のことですが)、すべてのゴジラファンに捧げられた今回の『GODZILLA ゴジラ』。すでに製作が決定した続編には、なんとラドンにモスラにキングギドラまで登場するとのこと。スクリーンで彼らに再会するその日まで、老眼がこれ以上進まないよう祈るのみである。
ギャレス君とは一晩この映画について語り明かしたい。
ジメっとした長~い梅雨ももうすぐ終わり!? 日本の各地で大暴れしたゲリラ豪雨。そのゲリラ犯の脅威はもの凄いパワーでした。でも皆様! 夏はやってくるものです。そして、夏休み映画、真っ盛り中! では、気分を変えて、お家で観る映画の時間の始まり始まり~!!
連日TVで流れる児童虐待のニュース。特に食事を与えず餓死をさせてしまうという事件には、言葉にならない悲しい想いでいっぱいです。そんな時代、皆様にご紹介したいのは、2002年に公開された
です。
アメリカの医療制度、保険制度の問題を、ある家族をテーマに描いています。監督は、ニック・カサヴェテス氏。イリノイ州シカゴ郊外、いつもと同じ朝、テレビを見ていたジョン・クインシー・アーチボルト(デンゼル・ワシントン)は、ローンの不払いで、妻デニーズ(キンバリー・エリス)の車を差し押さえられてしまう。そんなジョンは、会社からもリストラされ、正社員からパートタイムに格下げされたばかりで、求人広告を探す毎日。経済的に苦しい2人の間の息子マイク(ダニエル・E・スミス)の明るい笑顔を見ることが支えだったが、少年野球の試合でヒットを打って走っていたマイクは、突然倒れてしまう。マイクは重度の心臓病にかかっていたのだった。治すには心臓移植しかないと説明するレイモンド・ターナー医師(ジェームズ・ウッズ)と病院長のレベッカ・ペイン(アン・ヘッシュ)。しかし、手術費用は高額で、ジョンの保険では適用されないため、移植待ちリストに名前を載せることすらできない現実。ジョンとデニーズは家具を売り、カンパを集めるなどして金策に走ったが…足りない。そんな中、ジョンはある決意をし、行動を起こす。ただ1つの想い、マイクの命を救うために。
ふきカエのキャストは、ジョンに大塚明夫さん、デニーズに日野由利加さん、マイクに浅井晴美さん、レイモンドに仲野裕さん、レベッカに佐藤しのぶさん等が重厚に演じられ、涙なしでは観られない、何度観ても考えさせられる作品になっています。
親は子供を守る者。そのテーマは永遠です。
2作目は、2000年に公開された
ついにこの日がやってまいりました。
BSジャパン「シネマクラッシュ金曜名画座」にて、8月8日(金)夜7時50分~放送するのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。ほぼ四半世紀ぶり、21世紀初の新作ふきカエでお送りします!
主人公マーティ・マクフライ(マイケル・J・フォックス)の声は、宮川一朗太さん!
宮川さんは、かつてテレビ東京で放送されたシットコムドラマ『ファミリータイズ』のマイケルのふきカエで声優デビューし、現在CSで放送中の『マイケル・J・フォックス・ショウ』まで、数々の映画・ドラマでマイケルのふきカエを担当されてきましたが、マイケル最大の当たり役であるマーティ・マクフライ役だけは、なぜかアテられたことがありませんでした。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のふきカエは、「日曜洋画劇場」版、「ゴールデン洋画劇場」版、ビデオソフト版の3バージョンが既にあり、封印された幻のWユージ(織田裕二さん&三宅裕司さん)の「ゴールデン洋画」版を除いて、「日曜洋画」版(三ツ矢雄二さん&穂積隆信さん)とソフト版(山寺宏一さん&青野武さん)が長らく流通してきました(この辺の詳細については、当事者の吉田Pにお聞きください)。どちらもBTTFファンに愛されてきた名作ふきカエですから、あえて新録する必要はないのですが…俺は、どうしても宮川一朗太さんのマーティが聴きたかったんです!
何を隠そう、俺が就活中にオンエアを観ていた『ファミリータイズ』は、テレビ東京を志すきっかけの一つで、運良く入社を果たして最初に師事したのは『ファミリータイズ』の担当プロデューサー、という縁なのでした。そんなこんなで、俺にとってマイケルと言えば宮川さんだったものですから、いつか宮川マーティを作ろうと20年以上温め続けた計画を、遂に実行したわけです。
この思いは宮川さんも同じだったようで、今回のオファーを「ここ数年で一番うれしい出来事」とおっしゃってくれました。何しろ今さらの高校生役ですから不安もあったそうですが、第一声の「ドク?」からもう、これだよー!って感じのハマりっぷり。安心して聴いていられるふきカエ現場でした。
そしてもう一人の重要キャラ、ドク・ブラウン(クリストファー・ロイド)の声は、何と、山寺宏一さん!
ソフト版、つまり先代のマーティが、四半世紀を経て今度はドクに! 『宇宙戦艦ヤマト』でも古代とデスラー両方やってる(byとり・みき先生)山ちゃん、この映画では、同一人物ながら1955年と1985年にそれぞれの年齢で登場するドクを、貫禄で演じてくれました。意外にも初共演だという宮川さんとの息もバッチリ。
タイムマシンで時を超えるアドベンチャーだけに、宮川さんと山寺さんには、違った形で時を超える冒険に挑んで頂いた次第です。
いや、30歳差を演じ分けなければならないのはドクだけではありません。マーティの母ロレイン(リー・トンプソン)の小林沙苗さん、父ジョージ(クリスピン・グローバー)の加瀬康之さん、宿敵ビフ(トーマス・F・ウィルソン)の新垣樽助さんも同様…皆さんグッジョブ! 正確にはもう1人、ストリックランド先生(声は青山穣さん)もそうですが、この人は何十年経っても変わらないキャラで。あと、1985年だけの登場ですが、ジェニファー(クラウディア・ウェルズ)の白石涼子さんの“理想の彼女”っぷりもいいですよー。
ちなみに今回は新録ながら、台本は「日曜洋画」版の翻訳(たかしまちせこさん)をベースにしています。が、初放送当時はオトナの事情で手を入れたらしいところを元に戻したり、今ならではの視点で加えた表現なども随所にありますので、新鮮な感覚で観て頂けるはず。
今回はパート1のみの放送ですが、このキャストでのパート2・3の新録の可能性は、ファンの皆さんの評価次第でしょう。奇しくも来年、2015年はマーティたちがデロリアンでやってくる「未来」。その前にぜひ、リフレッシュされたBTTFをお楽しみください!
なお、8月8日の「シネマクラッシュ金曜名画座」は<夏休みスペシャル>ということで、二本立て興行でお送りします。
まず夜6時~の第1部は、あの大ヒットTVドラマの劇場版第2弾 『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』をオンエア。わかる人にはわかると思いますが…このシリーズには、ジョージ・マクフライことクリスピン・グローバーが、「やせ男」という謎の悪役を怪演しています。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の続編にはなぜか出演しなかった(パート2にはジョージの遠景だけは登場しますが)彼の雄姿(?)を、目に焼き付けてください。
番宣ばかりですみませんが、次回更新は10月の予定なのでこの際ついでに…
「シネマクラッシュ金曜名画座」には、9月もぜひチェックして頂きたいふきカエが2本。
まずはアラン・ドロン主演、ルネ・クレマン監督の名作中の名作『太陽がいっぱい』。
ドロンのふきカエと言えばやはり野沢那智さんですが、今回はテレビ東京で2007年に新録したバージョンを、HD映像とシンクロさせてオンエア。当時69歳の那智さんが20代のドロンに(おそらく最後に)挑戦したふきカエです。那智さんは2010年に亡くなりましたが、「お別れの会」で会場に並べられた遺品の数々の中に、このテレ東版『太陽がいっぱい』の台本があって、胸が熱くなったものです。
DVDには野沢ドロンの旧バージョンが収録されたものもありますので、聴き比べて頂くのも一興かと。
そしてもう1本は、ダスティン・ホフマン主演、マイク・ニコルズ監督のこれまた名作『卒業』。
これも、かつてテレ東「20世紀名作シネマ」で新録したバージョンのHD化です。主人公ベン(ホフマン)のふきカエは、当時『ER』のグリーン先生役が最高にハマっていた井上倫宏さん。エレイン(キャサリン・ロス)は石塚理恵さん。ミセス・ロビンソン(アン・バンクロフト)は塩田朋子さんです。これもDVD等には未収録ですから、この機会をお見逃しなく。