外国映画をこよなく愛し、数々の吹替えの制作現場に携わり、音声業界でも名うてのふきカエ愛好家である吉田プロデューサーと長谷川マネージャーとMr.ダークボ がぜひ観ていただきたい名作・秀作をご紹介!

※Amazonのページで紹介しているビデオテープ・DVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。

俺たちは消え去るんだ。人類は…絶滅するんだ

今月取り上げるのは劇場公開映画ではない上に筆者自身が日本語版制作に関わっているという、いささか手前味噌な作品であることをまずは御了解ください。このシリーズは、そういった諸々を承知の上で敢えてお薦めしたいだけのスケールと面白さに満ちているのです。全米のケーブルテレビ史上で最高の視聴率を獲得した、壮大なドラマを御紹介します。


『ウォーキング・デッド』

ウォーキング・デッド

ジョージア州の保安官リック・グライムスは逃亡犯を追跡中に撃たれ、瀕死の重傷を負う。彼が昏睡から目覚めると、街は“ウォーカー”と呼ばれる死人が徘徊する地獄となっていた。突然蔓延した謎のウィルスによって文明社会は崩壊していたのだ。妻と息子を探し当て、他の生存者たちと合流したリック。それぞれに悩みや葛藤を抱え、時には争いながらも、リック一家と仲間たちはウォーカーの群れと闘い、次第に絆を深めていく。そんな彼らに、ウォーカー以上に恐ろしい脅威が迫りつつあった。生存をかけて、人間同士の殺し合いが始まっていたのだ。恐怖と暴力が支配する世界で、彼らは生き延びることができるのか ──?


今ではエンタテインメント・ホラーの定番ジャンルとなった「ゾンビもの」。その映画における歴史は、1968年公開の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』に始まります。ジョージ・A・ロメロ監督が低予算で撮り上げたモノクロの16mm映画。日本では劇場公開すらされなかったこの作品はゾンビ映画のルーツとなり、その後ロメロは78年の『ゾンビ』、85年の『死霊のえじき』と「ゾンビ三部作」を発表します。
中でも二作目の『ゾンビ』は旧来のホラー映画になかった斬新なスタイルで評判となり、ロメロは一躍有名監督へ、作品はカルトムービーの先駆けとして多くのファンを獲得。ゾンビ映画のスタイルを確立しました。
こうして誕生した「ゾンビもの」はホラー映画のメインストリームとなり、たくさんのフォロワーが生まれます。正統派の『サンゲリア』、SFの『スペースバンパイア』、変化球の『バタリアン』からラブ・ストーリー(!)の『ウォーム・ボディーズ』まで、名作・傑作・怪作は枚挙に暇がありません。

そんな「ゾンビ映画界」でここ数年、新しい視点を持った作品が作られ始めています。例えばダニー・ボイル監督の『28日後…』や、ブラッド・ピット主演でこの夏ヒットした『ワールド・ウォーZ』。どちらもゾンビそのものの恐怖に加えて、文明社会が崩壊していく中で人々が遭遇する狂気と暴力をマクロ的な視点からリアルに描いています。

しかし、そうした社会状況をリアルに描くにはそれなりの尺が必要になります。『28日後…』は続編の『28週後…』が作られ(監督のダニー・ボイルは三部作の構想を持っているとか)、『ワールド・ウォーZ』は長大な原作の一部分をコンパクトにまとめた形になっていました。上に挙げたような「狂気と暴力の世界」をじっくり描くには、二時間の映画よりむしろテレビシリーズの方が向いているんじゃないか?…そう考えたのは『グリーンマイル』や『ミスト』で知られる監督兼脚本家のフランク・ダラボン。彼の手によって、テレビシリーズ『ウォーキング・デッド』は誕生したのです。

物語の序章は主人公である保安官リックの視点から語られます。逃走犯に撃たれて昏睡状態となり、病院で目覚めると世界が一変していたという状況。歩く死者たちが襲い掛かってくる中で必死に家族を探すリックの恐怖と混乱を、見ている我々も一緒に体感していくことになります。
助けてくれた親子から、一夜にして謎の疫病が蔓延したこと、感染者は人間性を失った「ウォーカー」となって他者を食い殺すようになること、噛まれた者もまたウォーカーに変貌してしまうことを教えられるリック。幸運にも生存者のキャンプに辿り着き妻子と再会、事態への対策が講じられていることを信じて政府の疾病対策センターへと向かうのですが、そこで彼らを待っていたのは──。

ここまでのストーリーがシーズン1、計6時間。続くシーズン2では新たな出会いと突然の別れ、恐怖の中で仲間同士の間に生じた軋轢がやがて憎しみへと変わり、悲劇的な結末を迎える過程が描かれます。そしてシーズン3。別のコミュニティと出会ったリックたちは、今では世界が暴力の論理で支配されていること、本当に恐ろしいのはウォーカーだけではなかったことを知ることになります。しかしその代償はあまりに凄惨なものでした…

全編が阿鼻叫喚だったこれまでのゾンビ映画と違い、テレビシリーズである『ウォーキング・デッド』はむしろ不思議な静寂に満ちています。その中で微かな物音に怯え、一瞬の動きに銃を振り向けながら生き延びていく生存者たち。狂気を孕んだその静寂が突如として破られたとき、壮絶な闘いが繰り広げられます。生き残るためにはウォーカーだけでなく、自分と同じ人間、時には生死を共にしてきた仲間にさえ武器を向けなければならない。愛する人を、信じるものを、さらには人としての尊厳をも失いながら、リックたちの闘いは続いていきます。

吹替版の声優陣は、保安官リックに土田大さん。リーダーとしての重責と妻子への想いを抱え、次第に狂気をはらんでいく主人公の葛藤を見事に演じています。彼の右腕となるダリルに小山力也さん。タフな役柄の多い小山さんが本作では、アウトローだったダリルが次第に仲間と心を通わせていくという繊細な一面を見せています。その他にも多彩な出演者の皆さんが、極限状態の中でむき出しの感情がぶつかり合うドラマを見事に演じてくれました。

吹替版はシーズン3の収録を終えたところですが、本国では10月からシーズン4の放送が始まります。われわれ日本語版の関係者も、リックたちの運命を固唾を呑んで見守っているところです。特に出演者の皆さんは、自分の役がいつ死ぬかわからないという文字通りの極限状況(笑)

秋の夜長にじっくりと鑑賞する、滅びと再生の壮大なドラマ。お薦めです。


ウォーキング・デッド Blu-ray BOX

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悪夢の始まり。

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とても心地よい季節がまたまたやってまいりました。食欲の秋、読書の秋、そして映画の秋……?(デジャヴ!?)
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では、今月の1作目は1989年に公開された
恋人たちの予感 [Blu-ray]

『恋人たちの予感』
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をご紹介します。監督は『スタンド・バイ・ミー』などで知られるロブ・ライナー氏。ある男女の11年にわたる愛と友情の物語です。
大学を卒業したハリー(ビリー・クリスタル)とサリー(メグ・ライアン)は、ハリーの恋人がサリーの親友であったことから、旅費節約の為、同じ車でニューヨークへ向かうが、2人は全く気が合わず車内は口論大会となり、出会いは最悪なものとなった。その5年後に再会したが、これまた飛行機の中で口論となり、大騒ぎ。そんな2人がまた5年後に再会し、やっと“友達”という新たな関係へ。お互いを意識し始めるが、それぞれの経験が素直にしてくれない。2人の様々な紆余曲折が繰り広げる、ロマンティック・コメディである。

ハリー役の井上和彦さん、サリー役の高島雅羅さんが、息の合った演技で魅了してくれます。特に、主人公の2人がレストランで食事をするシーンは、秀逸です。

 

ハムナプトラ/失われた砂漠の都 【ユニバーサル・Blu-ray disc 第1弾】

2作目にご紹介するのは、1999年に公開された

『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』
[画像はAmazon.co.jpより]

です。監督は、スティーブン・ソマーズ氏。1932年公開の『ミイラ再生』 のリメイク作品です。

今から約3000年前、大神官イムホテップは、国王セティ1世の愛人であるアナクスナムンと恋に落ちるが、セティ1世に関係を疑われたため、彼を殺害してしまった。アナクスナムンは生き返らせてもらうことを約束し、自ら命を絶った。イムホテップはその約束を果たすため、「死者の書」を手に死者の都ハムナプトラへ向かう。しかし、儀式完遂の直前、王の兵団に捕えられ、生きたままミイラとされてしまった。
時は1926年、外国人部隊のリックは、自分の部隊の敗北で1人砂漠を放浪する。3年後、カイロ刑務所に服役している死刑囚となるが、博物館勤務のエヴリンとその兄でお宝目当てのジョナサンに助けられる。そして、死者の都ハムナプトラを目指すことに。しかし、行く手は散々な目に。

そんなリック(ブレンダン・フレイザー)を森川智之さん、エヴリン(レイチェル・ワイズ)を石塚理恵さん、ジョナサン(ジョン・ハナー)を田原アルノさんが演じられています。続編もあるので、ぜひセットでご覧ください。さぁ! 秋の夜長に冒険活劇で仲間とワイワイしましょうよ!!

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『アンダー・サスピション』

今回もいつも通りのお気楽な番宣コラムを書いていたところ、不意打ちのように石田太郎さんの訃報が飛び込んできて、思わず原稿を全消去してしまいました。

俺のような一会社員がこんなところで、吉田Pや長谷川さんと稿を並べて知った風なことを書かせて頂いているのは何とも烏滸がましいことで、ふきカエの仕事は会社の人事で出たり入ったりしながらせいぜい10年ほど携わったに過ぎないのですが、いつまでやれるかわからない番組Pだからこそ、一度はご一緒しておきたいレジェンドな方々との仕事をせっせと仕込んでおりました。

くまのプーさん/完全保存版 スペシャル・エディション [Blu-ray] 石田太郎さんは、そんなわがレジェンドの一人でした。小池朝雄さんから引き継がれた刑事コロンボとジーン・ハックマン、『コマンドー』のベネット、『フォロー・ミー』のトポル、ブライアン・デネヒー、アニメのカリオストロ伯爵など思い出すとキリがありませんが、俺はとにかく『くまのプーさん』のイーヨーが大好きで…。
「木曜洋画」がTV初放送だった『スリーピー・ホロウ』(マイケル・ガンボン=石田さん)でご一緒して以来ずっと機会がなく、ようやく二度目の“仕込み”に成功したのが、『アンダー・サスピション』・・・ジーン・ハックマンとモーガン・フリーマン、モニカ・ベルッチ主演のセクシーなサスペンスで、石田さんのハックマンと坂口芳貞さんのフリーマンで新録を決行!
アンダー・サスピション [DVD] お二人が同じ役をアテられたDVD版が既にありましたから、効率重視の会社仕事としては暴挙でしたが、こういう時は天啓に従うもんです。果たして、これが石田さんとの最後の仕事になってしまいました(テレビ東京としてはその後も『レッド・ドラゴン』のレクター博士などでお仕事させて頂いてますが、俺は異動して関われませんでした)。収録スタジオでは石田さんが坂口さんと、「ここであなたがこう来るんだったよね」とDVD版の収録を思い出しながら息を合わせておられたのを覚えています。
この木曜洋画バージョンは、主役のお二人の重厚な演技合戦を最大限に立たせようと、今井朋彦さんにあえて線の細い感じでアテて頂いたトーマス・ジェーン(本来はマッチョ俳優ですね)も面白いので、機会があればぜひご覧ください。

石田太郎さんのご冥福をお祈りします。

 

『アラビアのロレンス』台本

さて、もともと書きかけていたのは、満を持してBSジャパンに初登場するあの名画・・・わが生涯のベストシネマとして、このコラムに初参加の際にご紹介した『アラビアのロレンス』を、10月11日(金)夜6時05分から4時間一挙放送します! ふきカエはもちろん「20世紀名作シネマ」バージョン。
ふきカエ新録当時の話はもう何度も語ったので割愛しますが、我ながら奇跡のようなキャスティングの中でも、『アンダー・サスピション』のモーガン・フリーマンと同じく、坂口芳貞さんのアウダ(アンソニー・クイン)のハマりっぷりは絶品! 一昨年亡くなられた、あの滝口順平さんの声も聴けます。
シリア情勢が気になる昨今、100年近く前にダマスカスを目指したロレンスの栄光と挫折の物語は心に沁みます。どうぞお見逃しなく!

なお、10月からのBSジャパンの映画枠は、土曜夜6時54分~が新番組「土曜は寅さん!」となり、あの『男はつらいよ』シリーズ全48作を毎週レギュラーで放送します。
金曜夜8時~の「シネマクラッシュ 金曜名画座」は引き続き、ふきカエ洋画メインのラインアップでお送りして行きます。11月はジェームズ・ディーンやマーロン・ブランド(アクターズ・スタジオの同窓ですね)のあの名作などをご用意。ご期待ください!

[作品画像はAmazon.co.jpより]


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