※Amazonのページで紹介しているビデオテープ・DVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。

金のムダだ。見なくていい(スー先生)

基本的に「吹替えで見られる新作映画」をご紹介している当レビューとしては、今回の作品は本来なら対象外である。とはいえ期間限定公開で上映館も少ないという状況で、(吹替え版のテレビ放送で人気の出たシリーズから派生した)この作品のせめてもの告知をさせていただきたく、敢えて取り上げる次第。

 

glee/グリー ザ・コンサート 3Dムービー

パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉 公式サイトへ

世界中で一大ムーブメントを巻き起こしている驚異のTVシリーズ「glee/グリー」。その感動のパフォーマンスが遂にコンサートに! 2011 年全米ツアー、ファン熱狂の一部始終を、3Dムービーで体感せよ!

 

「伝統芸能」という言葉がある。日本で言えば能に歌舞伎、中国では京劇、欧州ならギリシャ悲劇からシェイクスピアに連なる演劇だろうか。それらは土俗的な集落体制の中から自然発生的に生まれ、神事と娯楽の両面を持ちつつ長い歴史の中で次第に洗練され、現在では「エンタテインメント産業」として確立し、国内での需要はもとより外貨を稼ぐ一助ともなっている。
こうして「伝統芸能」がビジネスとして確立した二十世紀、その分野に突如として強大な新勢力が参入してきた。アメリカ。前出の国々のように長い歴史も自然発生的な文化も持たないこの新興国家には、しかしほかの国にはない大きな利点があった。

移民国家であるアメリカは、もとより国民に共通する文化的要素を持たない。宗教も生活習慣もバラバラで、あるのは僅かながらに「英語」という最低限の共通項のみ(それだって怪しいものだが)。そんな環境でショービジネスを展開するためには、観客がいかなる背景を持っていようと等しく理解できる「わかりやすい」形式が必要だった。最低限の言葉さえ理解できれば(いや、時にはそれすら無理であっても)、文化や人種の違いを越えて人々にエモーションを与えるもの━それは「歌」に他ならない。こうして、新興国アメリカにとっての伝統芸能である「ミュージカル」は生まれた。

ミュージカルに代表される「洗練されたエンタテインメント」を武器にショービジネスの分野に参入した「新参者」アメリカは、瞬く間に世界中を席巻する。もともとは国内需要のために考えられた「文化や人種の違いを越えて人々にエモーションを与える」というコンセプトは、当然そのまま世界にも通用したのである。その絢爛豪華な世界を目の当たりにして、曲がりなりにも同じショービジネスの末席に身を置くわれわれはこう呟くしかない。「悔しいけど、敵わないなあ」と。
それも当然、かのエンタテインメントは前述のとおりアメリカの「伝統芸能」である。英語で能を演じることがほぼ不可能であることを考えれば、その逆をやることのハードルの如何に高いことか。となれば、ここは素直に歌とダンスの織り成す陶酔に身を任せるにしくはない。同じ○○なら踊らにゃ損。

…というような前置きを経て、「glee」。ここにはおよそ想像しうる限りのエモーションが盛り込まれている。若者の葛藤、大人の挫折、マイノリティの苦悩、それら全てが昇華され、弾けるようなダンス・ナンバーとなって流れ出す。こうなるともはや理屈ではないのであって、見る側は圧倒的なリズムに巻き込まれ、気がつけばステップを踏んでいる。「悔しいけど、敵わないなあ」と、しかし笑顔で呟きながら。

この「glee」は、数あるショービジネスのカテゴリーをまたいでヒットした、メディアミックスの成功例である。まず「アメリカン・ポップスのスタンダード・ナンバー」という潤沢な資産を元手にTVシリーズが作られる。次はそこから核となる歌とダンスだけを抜き出し、こればかりはTVでは得られない”ライブ”の興奮を加えてコンサートが大成功。それをさらに3D映像で記録し、こちらもお家芸である”映画”として世界中に展開する。計算高いと言えばそれまでだが、かの国のショービジネスはもとより綿密な計算のうえに成り立っているのは承知の上。いずれ木戸銭を払うのならば、したり顔でビジネスの諸事情を詮索するよりも、その計算に乗っかって楽しんだほうが勝ちである。

そして、映画を楽しんだ後は、ぜひ原点であるTVシリーズを御覧いただきたい。実力派の声優が吹替えた日本語版は、英語の歌が頻出する物語に違和感なくマッチしている。特に野沢由香里さん演じるスー先生のドスの利いた台詞は、本人よりも本人らしい怪演(笑)
欲を言えば、歌手としても活躍している坂本真綾や水樹奈々といった面々の歌声が聞けないのが、寂しいといえば寂しいか。いっそ歌も全部吹替えて「日本版glee」なんて企画、どうでしょうかね?



glee/グリー DVDコレクターズBOX

 


←原点のTVシリーズはこちら!

『glee/グリー DVDコレクターズBOX』
[画像はAmazon.co.jpより]

 

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日本全国のふきカエルファンの皆様、おはこんばんちはでございます。
あの、なでしこ旋風で熱かった夏も終わり、実りの秋ですね~。
食欲の秋、読書の秋、など、いろいろ言われますが、私たちは、やはり"映画の秋"! 
これで決まりです!!

きみに読む物語 スタンダード・エディション [DVD]

それでは、最初の名作。
2004年にアメリカで公開された

『きみに読む物語』
[画像はAmazon.co.jpより]

ある療養施設に暮らす老女。彼女は認知症のため、生きてきた過去を思い出す事さえ出来ない。そんな彼女に、ノートに書かれた物語を読み聞かせている一人の男デューク。
それは、古き良き時代の、きらめくような夏の恋物語。
良家の一人娘アリーと、材木工場で働く青年ノアの波乱に満ちた人生の物語…。
そして、その2人の物語がやがて老女とデュークに奇跡を巻き起こすのである。
そんなこの作品のふきカエのキャストは、老女に有田真里さん。デュークに勝部演之さん、ノアに内田夕夜さん、アリーに坂本真綾さんといった顔ぶれです。

皆様も心静かに、珠玉の名作をご堪能下さいませ。

 

マルコヴィッチの穴 [DVD]

2本目は、それは奇想天外な物語。
「ジョン・マルコヴィッチの頭に通じる穴を見つける」、その名もズバリ、

『マルコヴィッチの穴』
[画像はAmazon.co.jpより]

人形師のクレイグと、ペットショップで働く妻ロッテは、倦怠期の夫婦。
ある日クレイグは、定職に就こうと新聞の求人欄を広げ、天井が低くて立つことの出来ない7階と8階の間=7と1/2階にある"レスター社"の職を得る。そしてそこで出会った、美しいOLマキシンに一目惚れするが相手にされず、事務員として仕事に勤しむ。
そんな時、オフィスの壁に穴を発見。慎重に中へ入っていくと、突然、穴の奥へ吸い込まれてしまう。それは、15分間だけ俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中につながるという穴だった。これを使い、商売を始めるが彼とロッテの人生は大きく狂っていくのです。

 ふきカエキャストは、クレイグに田中秀幸さん、ロッテに佐々木優子さん、マキシンに田中敦子さん、ジョン・マルコヴィッチに屋良有作さんといった方々です。

 貴方だったら、誰の頭に入りたいですか?

 

P.S 後日談ですが、以前紹介した『エイリアン』のさなぎと幼虫のぬいぐるみをゲットして、幸せな私です。

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イヴの総て

何かと思い出深い「20世紀名作シネマ」…この大企画に参加して特に幸せだったことの一つは、モノクロ名画の数々を、堂々デイタイムに放送できたことです。
モノクロ作品は、今では地上波の深夜枠、BS・CS等で字幕版で放送されることはあっても、吹替え版での放送は極めて少ない。そんな貴重な吹替え音源を発掘したり、新たに吹替え版を制作したりするのは、ワクワクものの体験でした。
「20世紀名作シネマ」では、モノクロ名画のうち2本をさらにレアな「カラーライズ版」で放送したのですが、ご覧になった方はいるでしょうか? 1本は、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督、イヴ・モンタン主演のフランス映画『恐怖の報酬』。

そしてもう1本は、ジョセフ・L・マンキウィッツ監督のイヴの総てでした。

イヴの総て [Blu-ray] 1950年のアカデミー賞を総なめにした『イヴの総て』は、演劇界の壮絶な裏側を描いた、いわゆる「バックステージもの」の金字塔。これを、多くは演劇人でもある声優さんたちが吹替える現場は、さぞスリリングなことだろう、といういささか悪趣味な夢想から、吹替え版新録を思い立ちました。
とにかくセリフの量が膨大な映画なので、アフレコはたっぷり2日間。重すぎて声優さんたちが疲れないようにと、台本は2分冊にしました。

こういう古典的名画の吹替えは、セリフをあまり現代的にすると気分が台無しになるし、かと言って古風すぎても番組になりません。特に『イヴの総て』は演劇界の話だけに、気取った言い回しも多くて、台本作りには苦労しました。
そういう雰囲気ある演技を求めて、キャスティングにもかなり悩みましたが、結果的にはベストな布陣だったのではないかと…
大女優マーゴ(ベティ・デイヴィス)役は、後藤加代さん。『天使にラブ・ソングを…』のウーピー・ゴールドバーグがキョーレツだったおかげでちょっと想像できなかったのですが、演出の福永莞爾さんの推薦を信じてお願いしたところ、これが見事なハマり具合で…さすが福永さん!
そして、マーゴを踏み台にしてスターへとのし上がるイヴ(アン・バクスター)役は、山崎美貴さん。物語のはじめは初々しい感じで、次第に凄味を増していく様を頑張って演じてくれました。
他にも日野由利加さん、石塚運昇さん、てらそままさきさん、稲垣隆史さん、北村弘一さんなど実力派が揃いましたが、忘れられないのは、鈴置洋孝さん…この数年後に急逝されたため、自分にとってはこれが鈴置さんとご一緒した最後の仕事になってしまいました。

ここで、問題です。『イヴの総て』には、新人女優役であのマリリン・モンローが出演していますが、さて、マリリンの声をアテたのは誰でしょう?(*)

イヴの総て [Blu-ray]

 

…正解は、この「20世紀名作シネマ」版の吹替え音声が収録されたブルーレイでご覧ください。
[画像はAmazon.co.jpより]

 

 

 

『イヴの総て』の吹替え版は、ほぼノーカットで作りました。
ちなみに『恐怖の報酬』、それから大好きなミュージカル『オリバー!』も、ノーカットではないものの、セリフはほとんど切らずに吹替えたのですが、どちらも現在発売中のDVDには収録されていません。今後、ブルーレイ発売の際には入れてくれないかなあ…。
(同じく『グラン・ブルー』のブルーレイも吹替え版なし…これもノーカットで作ったんだけどなあ…)

 

(*)ヒント: メロンパンナちゃん

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