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旧聞に属する私事で恐縮だが、十五年ほど前の話。『アメリカン・シネマ』というドキュメンタリーの日本語版演出を仰せつかった。アメリカ映画の歴史を振り返る全十話のシリーズで、テーマ毎に様々な評論家や俳優、スタッフたちがインタビューに答えている。その中でひと際饒舌に、あらゆるジャンルの映画について熱く語っていたのがマーティン・スコセッシ監督だった。トータルの出演時間も断トツに多かったが、実際は番組に使われた時間の数倍は喋っていたはずである。とにかく映画について語り出したら止まらない。幾多の名作を手がけた巨匠が、映画青年の如き情熱で熱弁をふるうのを見ながらこう思った。「…師匠、変わりませんねえ」
1930年代のフランス・パリ。父を火事で亡くし、パリ駅の時計台に隠れて暮らす少年ヒューゴにとっての唯一の友達は、父が遺した壊れたままの“機械人形”だった。その秘密を探るうちに、ヒューゴは機械人形の修理に必要なハート型の鍵を持った少女イザベルと、過去の夢を捨ててしまった老人ジョルジュに出会う。機械人形には、それぞれの人生と世界の運命を変えてしまう秘密のメッセージが隠されていることを知るヒューゴ。いま、ヒューゴの世界を修理するための冒険が始まる…
一面識もない巨匠に対して畏れ多い話だが、それでもスコセッシの話題に接すると、自分の脳裏には「師匠」という言葉が浮かぶ。それはひとえに、十代の頃に見た一連のスコセッシ作品に感化されたが故。1976年の『タクシードライバー』は、ただでさえ影響されやすい中学生男子にとっては鮮烈な作品であり、自分とトラヴィスを重ね合わせるのに十分な衝撃だった。とは言えタクシーの運転はおろか大統領の暗殺も銃の入手も、モヒカン刈りさえままならぬ未成年は、せいぜいジャンパーのポケットに両手を突っ込んで盛り場をうろつくのが関の山だったのだが。
スコセッシがロバート・デ・ニーロという盟友を得て『タクシードライバー』を世に放ってから四半世紀。稀代の名優とのコラボレーションが『カジノ』で終息を迎えた後、円熟期に入った師匠はレオナルド・ディカプリオと巡り会う。恵まれた容姿故に映画界からスポイルされつつあった若手俳優は、名匠スコセッシの演出で新たなステージに立った。こうして新たな伴侶を得た師匠は『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アビエイター』といった大作群を経て、ついに『ディパーテッド』で初のアカデミー監督賞を手にする。コッポラ、ルーカス、スピルバーグという信じられない面子が顔を揃えて同胞スコセッシにオスカー像を手渡したとき、授賞式の壇上には紛れもなく「映画」が結実していた。
デ・ニーロとの共闘、ディカプリオとの蜜月を経て、「永遠の映画青年」スコセッシが取り組んだ『ヒューゴの不思議な発明』。この作品では、「病弱だった少年期に映画だけが友達だった」スコセッシの映画への愛が、驚くほどの直球で全編を貫いている。「原作は児童文学」「VFXを駆使した3D作品」といった、一見分かりやすい「売り物」に見えるギミックの数々は、実は師匠の映画愛を純粋な形で体現するために必須の要素である。それらが精密機械のように組み合わさって収斂されていくクライマックスは、正に映画でしか成し得ない興奮に満ちたものとなった。先日発表された第84回アカデミー賞でも、撮影賞・美術賞をはじめ五部門で受賞を果たしている。
本作が日本語吹替え版でも公開されているのは、必ずしも3D作品だから、という直截な理由だけではないだろう。これから世に出て様々な文化に接していく少年少女たちが、その第一歩としてこの作品に出合う事が出来たら、その幸福な経験はいつか芽を出し、後の映画経験を実りあるものにしてくれるに違いない。そうした願いをこめての吹替え版公開である。世の親御さんたちは、是非お子様を連れて吹替え版の上映劇場にお運びいただきたい。子供のうちにスコセッシ師匠の映画愛に触れることができる現代の少年少女を、かつてトラヴィス気取りで盛り場をうろついていた元中学生男子は、本当に羨ましく思うのである。
もうすぐ春だというのに、なぜか悲しい日々。 去る2/12(日)、サンデージャポンから流れてきた悲報が、私の心にグサリと穴を空けたのです。 1985年のデビュー以来、大好きなアーティストである、ホイットニー・ヒューストンの突然死。死!? DEAD!? 思わずTVに向かって叫んでしまいました。あまりのニュースに涙も出ず、ただただ部屋にあるCDジャケットを見つめるだけ…。
を紹介させていただきます。
物語は、大統領の警護をしていた元シークレット・サービスのフランクのもとに、人気歌手レイチェルの身辺警護の依頼がきたことから始まる。最初は反発するレイチェルだが、不審な出来事が多発。殺害予告まで送りつけられ、魔の手はゆっくりと、確実にレイチェルへと近づく。その中でレイチェルは、身を呈して守ってくれるフランクに少しずつ心を開き、信頼するようになる。
フランクことケヴィン・コスナ―、この人しかいません! 津嘉山正種さん。本当にカッコいいです。レイチェル、ホイットニー・ヒューストンに塩田朋子さん。
他にもサイ役のゲイリー・ケンプに島田敏さん、ビル役のビル・コッブズに阪脩さんなど、ベテラン揃い。そして、何といっても、世界的に大ヒットした主題歌
「I Will Always Love You」が収録されたサントラは、全世界で4,200万枚を売り上げる大ヒットも記録しました。
2本目は、明るく楽しくいきましょう。
1964年作品(さすがに私も生まれてません)
1910年、ロンドンに住むバンクス家のお話。厳格で気難しい銀行家のバンクス氏、妻のウィニフレッドも女性参政権運動に夢中で、子供は全てナニーに任せきり。しかしこの2人の子供、いたずら好きでベビーシッターはすぐに辞めてしまう。
そんなバンクス家にメリー・ポピンズがやってくる。メリーの魅力に子供たちは懐き、摩訶不思議な体験をしていく。そしてバンクス家は…。
米アカデミー賞5部門を受賞。音楽・映像、共にいつまでも色褪せないミュージカル映画です。
メリー・ポピンズ(ジュリー・アンドリュース) 麻生かほ里さん
バート(ディック・ヴァン・ダイク) 山寺宏一さん
バンクス氏(デヴィッド・トムリンソン) 永井一郎さん
ウィニフレッド(グリニス・ジョーンズ) 天地総子さん
ジェーンちゃん(カレン・ドートリス) 前田利恵さん
マイケルくん(マシュウ・ガーバー) 辻治樹さん
などなど、バラエティに富んだ役者揃い。とにかくご家族でお楽しみくださいませ。
この「ふきカエレビュー」で、俺は「テレビ用の吹替え」にこだわって書かせて頂いているのですが、昔語りをしたところで、その吹替え版を読者の皆さんが観ることができないのでは無意味なので、自ずとテーマは近日放送されるものか、DVD等に収録されたものに限られてしまいます。
そんなわけで、早くも息切れ中…いかんいかん。今回はあえて、自分が担当したものではない作品をご紹介します。
『木曜洋画劇場』や『20世紀名作シネマ』を担当していた頃、所属部署である「映画部」の仲間に、優秀な女性プロデューサーがいました。
彼女は既に退社してしまったのですが、在職中にアメリカ人のご主人と結婚して日本人にはあり得ない「V」で始まる姓になったので、ここでは「V女史」と呼ぶことにします。
V女史は俺と違って英語が堪能なので、吹替えに対する考え方にも何かと違いがありましたが、とにかくいいものを作ろう、という情熱は同じでした。
『20世紀名作シネマ』は、数々の往年の名画の吹替えを制作させてもらえる至福の企画でしたが、これに味をしめたV女史は、その後も名画吹替えのチャンスを虎視眈々と狙い続けていました。
そんな中、彼女が担当していた『午後のロードショー』で、テレンス・ヤング監督の
この吹替えは、以前のこのレビューで紹介した『アラビアのロレンス』と同じく、全編ノーカットで録ってから放送用に編集する手順で制作されたので、現在発売中のDVDには欠落なく収録されています。
この3月に発売されるブルーレイ(俺、予約しました)にもどうやら収録されるようなので、ぜひV女史の渾身作をご覧下さい。
調子に乗ったV女史は、さらにその後、あの
の新録を敢行!
当時ほぼ70歳の野沢那智さんに、再び20代のアラン・ドロンを演じて頂いたのですが、その少し後に発売されたDVDには1972年製作の吹替え版(これはもちろん名作です)が収録され、テレビ東京新録版はソフト化されていません。
ただ、その2年後に亡くなられた那智さんの「お別れ会」で、会場に展示された遺品の数々の中に、テレビ東京版の吹替え台本がありました。
新録の話をオファーされた当初は難色を示されたという那智さんですが、結果的にはV女史との現場を楽しんでくれたのではないか、と想像しています。
いい仕事したね、Vさん。