外国映画をこよなく愛し、数々の吹替えの制作現場に携わり、音声業界でも名うてのふきカエ愛好家である吉田プロデューサーと長谷川マネージャーとMr.ダークボ がぜひ観ていただきたい名作・秀作をご紹介!

※Amazonのページで紹介しているビデオテープ・DVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。

いつか思い出すだろう。この旅のすべてを

壮大な叙事詩が、ついに完結する。八十年近くにわたって世界中の人々を魅了してきたファンタジー文学の最高峰。その原作の奇跡ともいえる映像化が、本作を持ってついにグランド・フィナーレを迎えるのだ。


『ホビット 決戦のゆくえ』

ホビット 決戦のゆくえ

前作『竜に奪われた王国』で恐ろしい竜スマウグを解き放ってしまったビルボたちの行く手に、さらに大きな危険が待ち構えていた。冥王サウロンがオークの大群を放ち、はなれ山に奇襲を仕掛けていたのだ。 迫りくる闇の軍勢の前に、対立していたドワーフ、エルフ、人間の三種族は、団結するか滅ぼされるかの決断を迫られる。ビルボも自分自身と仲間の命を守るために立ち上がるが、それは中つ国の命運を決める戦いだった……。


原作は1937年に刊行されたファンタジー小説「ホビットの冒険」。言語学者でもあったJ・J・トールキンが子供のために書き下ろした長編小説は児童文学の枠を超えたベストセラーとなり、読者(と出版社)の要望に応えて続編の「指輪物語」が生まれる。勇者と魔法使い、ホビットにエルフにドワーフといった異種族の仲間たちが闇の軍勢と戦いながら旅をするというプロットは、その後あらゆるファンタジー系創作物のスタンダードとなり、時空を超えて日本製のRPG「ドラゴンクエスト」にまで受け継がれることとなった。

その壮大なスケール故に原作に忠実な実写映像化は不可能と思われていた「指輪物語」は、21世紀を迎えて間もなく鬼才ピーター・ジャクソン監督の手で映画化される。2001年から三年間にわたって公開された映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作は、全世界で二十億ドル以上の興行収入を記録。アカデミー賞にも毎回ノミネートされ、完結編『王の帰還』は作品賞・監督賞を始め11部門で受賞を果たした。これは『ベン・ハー』『タイタニック』と並び、アカデミー賞史上で最多の受賞記録である。

『ロード~』三部作に熱狂した世界中のファンからは当然、物語の前章である『ホビットの冒険』の映画化を望む声が高まっていく。前回はあまりに高額な製作費に難色を示したメジャー系の映画会社(実際、前三部作は独立系のニューライン・シネマで製作された)も今回はこぞって手を挙げ、結果『ホビット』三部作は、ニューライン・シネマとMGMの共同制作=ワーナー・ブラザース配給という体制で製作されることとなった。こうして原作の刊行順をさかのぼる形で映画化されたトールキンの全六部作で、文字通り有終の美を飾るのが今回の『ホビット 決戦のゆくえ』である。

暴竜スマウグに奪われたドワーフ族の財宝。それを取り戻し祖国を再興させるために旅を続けるドワーフの勇者たちと、彼らに同行するホビットのビルボ、魔法使いのガンダルフ。幾多の苦難の末、一行はついにスマウグと対決する。ドワーフのリーダーであるトーリンの奇策により一矢を報いるも倒すまでには至らず、激怒したスマウグは復讐を宣言。時を同じくして冥王サウロンの軍勢が中つ国の征服を狙って動き出し、ついに光対闇の全面戦争 ──原作中でも屈指のスペクタクルである「五軍の戦い」── の幕が切って落とされる。

監督はもちろんピーター・ジャクソン。前『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの企画段階から数えれば二十年近く、彼もまた劇中の人物や、世界中の観客たちと共に旅をしてきた。その旅の集大成である今回の『ホビット 決戦のゆくえ』では、シリーズを締めくくるにふさわしい壮大な物語が展開する。『ロード~』一作目の冒頭で、年老いたビルボが書き記していた若き日の冒険譚。子孫であるフロドの胸を躍らせ、新たな旅へと誘ったその冒険とはいかなるものだったか。ビルボとガンダルフとの絆はどのように結ばれたのか。白の魔法使いであったはずのサルマンは、なぜ闇の世界に身を落とし、冥王サウロンと手を組むに至ったか── 全ての謎が明かされる『ホビット』シリーズ完結編を観終えたとき、貴方はきっと『指輪三部作』をもう一度観返したくなるだろう。この冒険の旅をもっと続けたいという、その一心から。

『ロード~』から『ホビット』へと連なるこのシリーズは、全作で吹替え版が劇場公開された稀有な作品でもある。とかく「長編の3D作品で字幕を読むのは難渋で」という文脈で語られがち(自分もよく使いますが…)な吹替え版ではあるが、このシリーズに関してはそうした便宜上の理由を抜きにしても、胸を張ってお薦めできる素晴らしい日本語版に仕上がっている、と(前半だけ当事者だった身としては)自負している。

徒に奇をてらわず、熟考の末に配された声優陣(配役はこちら)の声と共に、冒険の旅は続いてきた。ホビットの知恵、ドワーフの勇気、エルフの誇り、そして人間の欲望。それぞれの登場人物たちから発せられる言葉はまさに“言霊”となり、ファンタジーと現実の境を越えて観る者の胸に届いてくる。吹替えという名の「言葉の力」を実感できる瞬間である。

残念なことに、15年前に一緒に旅を始めた出演者の中から、今年までに三人の名優が鬼籍に入られてしまった。「僕もついに魔法使いをやる歳かー」と笑っていた有川博さん。「画を見たら俺の役はこれだ、ってすぐわかったよ!ワハハ」と豪快だった内海賢二さん。完成試写で「自分の芝居を見るのは恥ずかしいんだけど、これはいい作品だよね」と照れていた家弓家正さん。本当に寂しいけれど、演技者として全うされたその人生の最後の数年、指輪を巡る旅に御一緒できたことは今でも胸に残っている。その思い出と共に、旅の終わりを見届けることにしよう。

さて、この連載も開始から丸4年。先日は雑誌BRUTUSの映画特集で、なんとダークボ氏と私が吹替え映画について対談をするという檜舞台まで設けていただきました。12月1日発売です。これもひとえに、当サイトをご覧いただいている皆様のおかげと感謝に堪えません。で、これを機にユニットを組んでトークライブで全国を回るってのを思いついたんですが、どーですかダークボさん。目指せロフトプラスワン。


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[画像はAmazon.co.jpより]


もう一度、冒険の旅へ。


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年忘れ新録まつり! 『クリフハンガー』 『王になった男』

ここ数年、ふきカエファンにとってはお別れ続き。このコラムを前回入稿してからも家弓家正さん、弥永和子さん、納谷六朗さん…やりきれないなあ、と思ってたところに、高倉健さんの訃報ですよ。
…って健さんはふきカエとは関係ないけど(アテられる側ですよね)、訃報の翌朝から次々と寄せられる共演スターたちの追悼コメントをワイドショーで見ていて、俺が思い浮かべたのは、アクションスターたちに囲まれたシルベスター・スタローンが葉巻なんぞくわえて気取ってる『エクスペンダブルズ3』のポスターでした。
不謹慎ですかね(なぜ不謹慎なのかな…でもとっても不謹慎な気がする)。スタローンと健さんを一緒にしちゃいけない(なぜいけないのかな…でもとってもいけない気がする)。少なくとも健さんは、その映画人生においてエクスペンダブルだったことは一度もないし。ただ、健さんの訃報を報じたロイター通信の「“日本のイーストウッド”が亡くなった」という記事の違和感に比べれば、同業者たち(かなり限定されたジャンルの、ですが)からリスペクトされ、こよなく愛されるスタローンを引き合いに出す方が、“俺たちの”映画スターの悼み方のように思えるのです。
やっぱり不謹慎ですか? すみませんね、不器用ですから。

『BRUTUS』第791号

それはさておき。
気が付くともう3年以上も末席を汚させて頂いている「ふきカエル」の当コラム。俺のようなエクスペンダブル野郎とは格の違うふきカエ業界の重鎮、吉田Pとご一緒できる喜びだけで続けてきたのですが、実はこの3年間、面と向かってお話する機会はありませんでした。
それが、ひょんなことから…この稿の更新時には発売されている雑誌「BRUTUS」第791号の映画特集記事で、光栄にも“対談”させて頂くことに! テーマはもちろん「ふきカエ」。
クリフハンガー [Blu-ray]

事前に何の打ち合わせもせず、取り留めもなくふきカエ談義をしているうちに、せっかくなので久しぶりに仕事したいな、という気になって、その場でいきなり無茶ブリを…BSジャパンで12月5日(金)夜8時~放送の『クリフハンガー』のふきカエ新録をお願いしちゃいました。
ご存知、キャリア混迷期にあったスタローンが復活を果たした大ヒット作ですが、過去に制作された3つのふきカエでスタローンをアテたのは玄田哲章さんと大塚明夫さんだけ。しかも現在、放送に使えるのはソフト版のみということで、このコラムでも常に「テレビふきカエ」の素晴らしさを訴えてきた俺としては、この際スタローン=ささきいさおさんで新たなテレビ版を作ろう、という思い付きに俄かに盛り上がってしまいまして。BRUTUSさん、そして吉田Pが背中を押してくれました。
始めてみれば事は進むもので、ささきいさおさんに快諾して頂いてから、土師孝也さん、内田直哉さん、岡寛恵さんといった願ってもないキャストが続々決定! いやー、こういうのってつくづく巡り合わせですなあ。

王になった男 スタンダード・エディション [DVD]

とは言え『クリフハンガー』の新録には、会社仕事的に簡単には踏み切れない事情がありました。
それは、既に他の作品の新録を進めていたから。12月26日(金)夜8時~BSジャパンで放送するイ・ビョンホン主演の韓国映画『王になった男』(12/5頃アップ予定)です。
イ・ビョンホンのふきカエと言えば、ドラマ『美しき日々』『オールイン 運命の愛』以来
高橋和也さん(元・男闘呼組って紹介はもう無用ですね)が定番。が、ビョン様初挑戦の時代劇大作であるこの映画のDVD版では、阪口周平さんでした。
阪口さんの熱演も良いのですが、せっかくテレビで初めて無料放送するからには、やはり高橋和也さんのバージョンを作ろうと。こちらも高橋さん即OKで、王の影武者を仕立てる長官(リュ・スンリョン)には磯部勉さんと、またとない布陣に。

…と語ってる分には楽しいけど、さすがにこのご時世、ひと月に2本も気合いを入れるのは難しく… でもこういうのって巡り合わせですから、やっちゃいましたよ。ぜひ2本ともお楽しみください。

「テレビふきカエ」の伝承にこだわるBSジャパン、2015年は何しようかな? …とか言いつつ、実はある大型企画が進行中なのですが、更新のタイミングが合わず、このコラムではおしらせできません。いずれ何らかの形でリリースしますので、期待してお待ちください。 それでは皆さん、よいお年を!

[作品画像はAmazon.co.jpより]


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