作品に対する思い、そしてキャスティングに対する思い
中村 私は薔薇座という劇団におりまして、その劇団代表が野沢那智さんだったんです。ですから那智さんにはずっと芝居で鍛えられまして、彼が演じていた役をできるという事は大変光栄な事で、しかも息子のジャック役が野沢さんの実の息子さんの聡君ということで、縁というものは不思議なものだなと思いました。
野沢 僕はこれまで舞台を中心に活動してきたのですが、吹替えに対しては、父・野沢那智の情熱的に取り組む姿をずっと見てきたため、中途半端な気持ちでやってはいけないという思いが強くあり、実はこれまでは控えてきたんです。しかし一昨々年父が亡くなった時、「よし、とにかくやってみよう!」と一大決心をしました。そして去年の春から、環境的にもやっと本格的に声優の仕事に向き合えるようになりました。ですから、まさかこんなにも早く、このような機会を頂けるとは思わなかったですし、また中村さんとこういう形でご一緒できるとは夢にも思っていなかったので、とにかく体当たりで挑ませて頂きました。
収録で思ったこと、感じたこと
中村 聡くんの発声が那智さんの若い頃にすごく似てるなと思いました。しゃべり方なのかな、もう遺伝子だね。「えっ!?いま那智さんがしゃべってる!?」って本当にビックリしました。
野沢 ディレクター・中野洋志さんからのダメ出しについていくので精一杯だったのですが、中村さんが隣で優しく見守って下さっていたので、安心して演じさせて頂くことができました。とにかく前だけを見てつっぱしった感じでしたが、それができたのもお二方のお陰だと感謝しています。
ジョン・マクレーンという役は父の思い出がいっぱい詰まっていて、家でリハーサルビデオを観ていると自然に父の声が聴こえてくるんです。でも、収録当日、いざスタジオに入って、実際に中村さんとご一緒させて頂いても、もう全く違和感がなかった。
中村 やっぱり似ちゃうんですね、師匠だから。いい意味でね。
野沢 なので、晩年父と過ごした日々の事が脳裏をよぎりながら、変な意味じゃなくて中村さんと父がダブって、緊張もしたんだけど、すごくリラックスもできたんです。
中村 楽しかったよね。収録はずっと二人だけだったけど、なんか感慨深く楽しいというか。この作品はアクション作品なんだけど、ファミリードラマなんですよね、だからそんなところにグッときたというか。
野沢 カーチェイスやら銃撃戦やら、ものすごく激しい映画なんだけど、親子愛にもあふれた作品じゃないですか。そんな雰囲気もマイクにのって伝わっていたらうれしいなと。
中村 観て下さる方がそんな風に感じて下さったらうれしいですね。
野沢 そうであったら最高だなと思います。