東地宏樹さんインタビュー

東地宏樹さんCS映画専門チャンネル・ムービープラスで、「もっと吹替えで映画を観たい!」という視聴者の要望に応え、特定の声優をフィーチャーする「吹替王国」第6弾!

今回の第6弾では、外国映画はもちろん、海外ドラマやアニメでも活躍する東地宏樹さんが登場!東地さんが吹替えをしていることでお馴染みのウィル・スミス主演『ワイルド・ワイルド・ウエスト』、アーロン・エッカート主演のアクション・ホラー『アイ・フランケンシュタイン』、アンジェリーナ・ジョリーとリーヴ・シュレイバーの掛け合いが見どころ『ソルト』、演技派クリスチャン・ベール主演のドラマ『ファーナス/訣別の朝』、寡黙な主人公が印象的な韓国バイオレンス『アジョシ』といったバラエティに富んだ計5作品を放送。
その放送に先立ち、東地宏樹さんにインタビューを行いました!声優となったきっかけや尊敬する先輩方とのエピソード、演技への取組み等を聞かせていただいたインタビューの模様をどうぞお楽しみください。
 

 

——CS映画専門チャンネル・ムービープラスで人気の企画となっている「吹替王国」ですが、東地さんに特集のお話がきたときはどう思われましたか?
東地宏樹さん:Twitterで小山力也さんの回の情報が流れて来まして、「あ、こういうのがあるんだな」と思っていました。その次に山路和弘さんが特集されたことを知って、その矢先の連絡だったので「おっとっと、やべぇな」って思って、どんな方がやられたのかなと調べてみたら「おいおい、これちょっとまずいぞ、6番目ってなんだよ」って、思いましたね(笑)。「まだ他にも先輩がいるよって(笑)。18番目ぐらいでいいよ(笑)。」というのが率直な感想です。

——他の方の番宣CMは事前に観られましたか?
玄田さんの動画は拝見しました。随分ふざけてるんだな~って(笑)。結構な破壊力のある内容でしたね。玄田さんはもともと声がでかいですけどあそこまでやるか!って。大声は面白いなって改めて思いました。玄田さんは大好きな先輩の一人です。
自分の番宣用CMの台本をいただいて見てみたら「うん、この程度で許してもらえるんだ。丁度いいや(笑)」って思いました。

——CMの収録はかなりスムーズでしたが、やってみていかがでしたか?緊張はされましたか?
緊張はなかったのですが、今回の収録は即座にやらなくてはいけないことが多かったので、練習すれば上手くいくことではないなと思って挑みました。視聴者の方に「全部同じじゃないか」って言われないかなとは思いましたけど(笑)。

東地宏樹さん——収録では登場人物が即座に切り替わるところも止めずに流して声をアテられましたが、難しくはありませんでしたか?
逆に一つ一つ別撮りに収録した場合のほうが、自分がショックを受けるんですよ。「変わらないじゃないか」って(笑)。「わざわざ一つ一つ撮ってもらったのに・・・」ってショックを受けるくらいならいっぺんに収録した方がいいと思ったのでそうしました。

——今回の企画で放送される『ワイルド・ワイルド・ウエスト』での、大塚芳忠さんとの掛け合いなど、当時の吹替えの現場はいかがでしたか?
ウィル・スミスさんの吹替えは『メン・イン・ブラック』しか経験がなかったのですが、『ワイルド・ワイルド・ウエスト』も『メン・イン・ブラック』と同じバリー・ソネンフェルド監督の作品だから、それぞれのテイストがキャラクターも含めて似ているんですね。時代物だけれど『メン・イン・ブラック』のテイストで出来ました。あとは大塚芳忠さんがやっていたケヴィン・クラインは僕の大好きな役者さんで、芳忠さんを通じて彼と絡んでいるような気持ちになりました。さらに芳忠さんも大好きな先輩ですから、楽しみながら出来ました。

——『メン・イン・ブラック』で演じた経験を活かして、『ワイルド・ワイルド・ウエスト』ではすんなり役に入れたということでしょうか?
そうですね。日本テレビの金曜ロードショーでの放送用の収録だったと思うんですけど、『メン・イン・ブラック』のスタッフの方々に懲りずに使っていただけて、本当に嬉しかったです。

——アーロン・エッカート、クリスチャン・ベールについてはどのように感じていますか?
アーロン・エッカートさんを吹替えたのは、この『アイ・フランケンシュタイン』と、もう1作『カンバセーションズ』という男女二人きりで喋りっ放しの作品をやったことがあります。『カンバセーションズ』は深見梨加さんとほぼ二人だけが出演する作品でした。『アイ・フランケンシュタイン』とは全く違いますね。
アーロン・エッカートさんが出演する映画自体は結構観ていて素敵な役者さんだなと思っていました。『アイ・フランケンシュタイン』の時は、「フランケンシュタインをどんな感じでやっているのかな」と観察して「こういう風にやりたかったんだろうな」っていうのが、あるシーンで見えてきて。そこをきっかけにしながら、やらせてもらったなっていう記憶があります。
クリスチャン・ベールさんは尋常じゃないですよね。あの痩せ方の体重のコントロールもね。それも作品に合わせるということですよね。色んなことをやりたいのが役者さんだから、その時の作品で、何がやりたいのかなってヒントになるようなものがあればと探りながら作品を観ています。

——吹替えにはアニメやゲームとの違いはありますか?
当たり前ですが、吹替え作品はすでに出来上がっているものであり、面白い作品もあれば、そうでない作品にアテることもあります(笑)。そういうときはキャストである僕らがチームとしてどれだけ吹替え版を盛り上げて作るかっていう面白さがあるんですよね。日本語の吹替え版として、観てもらえる方にいかに楽しんでいただけるか。名作の場合はちゃんとやらなきゃいけないっていうものがあるんですけど、すでに作られたものを傷つけないというところを守りながら、でも何かそれだけではないものを付け加えていいものになればいいなといつも思っています。
アニメは比較すると自由度が高いですね。
ゲームは修行だと思っています(笑)。作品によっては何日もスタジオに篭もって収録があるので、その現場の近くに部屋を借りたくなる作品もありますね(笑)。

東地宏樹さん——声優になったきっかけを教えてください。
もともと役者にも声優にもなる気はなかったんですけど、仲良くなった連中がすごく芝居に対して熱い奴らで、その影響で舞台の方に引き込まれていってしまったって感じなんです。役者になる気はなかったんですけど、演劇学科の演劇コースに入ってしまったのでやらないと単位がもらえない。マークシートで2教科につられて演技なんてやったこともないのに受かってしまって(笑)。とにかく大学生活をエンジョイしたいって入ったんです(笑)。
その時に言われたのが「声が大きい」なんですよ。小学校のときも発表会などで色々な役をやらされていましたが、演じることに対して自分はそんなに興味は無かったんです。
周りにも僕より「いい声だ」って言われている人はたくさんいたので自分がいい声かどうかは芝居をやり始めてからも気付きませんでした。ラジオCMの仕事などでナレーションをするようになってから「いい声ですね」って褒められるようになったので、それから意識して、先輩や優れた方の演技を勉強して現在に至ります。

——初めての外国映画吹替え作品は?
初めて吹替えを担当したのは金城武さんです。『アンナ・マデリーナ』という作品で、声優を探していたところで僕のテープを聴いていただき、やりませんかと声をかけてもらったのが最初です。その時は大失敗して、2本目はなんとなくうまくいったけどしばらく吹替えの仕事はしていませんでした。『メン・イン・ブラック』のウィル・スミスさん役のオーディションがあったので「吹替えは2本やっているし、経験がないわけじゃないからやってみようかな」って応募したら運よく受かりまして、そこがスタートでしたね。

——『メン・イン・ブラック』の吹替えで声優仕事の楽しさの発見はありましたか。
その時は、もうボロボロでしたね。ボロ雑巾のようになりました。今でも忘れられないのが、他の方々が先に収録を終わられる中で、共演した大先輩の内海賢二さんが「東地、先に飲み屋で待ってるぞ」って言ってくださったんです。なんとか収録を終えて、飲み屋に着いたら「新しい仲間の東地だ」って内海さんが迎えてくださったんです。本当にいい思い出です。

——俳優からスタートして、声優という活動を始めて何か変化はありましたか。
本当に忙しかったときは毎日色々な作品で違うキャラクターの吹替えをやっていたので、忙しすぎてキツい時期もありました。でも、それを自然にこなせるようになったことで自分の身になっていることが結構ありますね。アテている方がいい役者さんだと、その呼吸に合わせることによって、気が付いたら自分が舞台で演じるときにも出てくるんです。
無意識で頭と身体に入っているんでしょうね、「なんだか良くなったね」って周りに言われるようになったんです。なんでだろうって考えた時に思い当たったのが吹替えの仕事で、そのおかげかなって思いました。一緒に組んでくださる声優の方々も素晴らしい方たちがいらっしゃるので、そんな方たちと一緒に掛け合いが出来るのは自分の中で宝物です。その繰り返しで、知らない間に力をつけた部分もあるのかなって思います。
アニメ声優をやっていると舞台上でもアニメっぽくなるという方がいるんですけど、「ちゃんと観てよ」って思うんですよ。そうはならずにちゃんと両立出来ている人も大勢いますよって。

——東地さんは吹替えとアニメとで声を切り替えているのですか?
作品によりますね。アニメにも日常会話が中心のアニメもありますし、それ以外もあります。そこは吹替えも同じで、デフォルメされた世界を演じるには誇張したほうが作品に乗ることがあります。アニメの仕事が、名指しで来てくれた場合には自分が演じながら作るもの全てを任せてくれることが多いので、その自由度というか責任感はアニメの方が強いかもしれませんね。洋画の場合は、すでに映画の中の俳優さんが作ったガイドがあるので。
アニメはその自由度が高い分、自由ばかりでも難しいので、どこかで枠組みとかがあったほうがやりやすいんじゃないかなって思います。何にしても魅力的な世界だと思います。

——洋画、ゲームやアニメ、海外ドラマなど様々な現場で活躍する中で、ご自身に合っている・居心地がいいなと思う現場はどれでしょうか?
面白いシリーズをつくるのは楽しいですよね。いつまでもやっていたいって思えます。楽しいものだなって思うものに関しては海外ドラマですね。作品によっては「これ大丈夫か?」っていうものもありますが、それはそれで「チームで面白くしようぜ」ってなります。僕は海外ドラマの面白い作品が好きですね。

——長く作品が続くことで見えてくることはありますか?
ありますね。レギュラーメンバーの呼吸感も出てきますし。いい作品だと収録が終わった後に次の台本を渡してくれるんですよね。準備万端で臨める現場はいい作品になりますよね。次がどうなるんだろうって、皆、次の台本をすぐに読みたいんですよ。飲みに行った先で「こうなるってよ~!」って盛り上がっている瞬間が一番楽しくて、いい作品ができる可能性を感じますね。
僕がやっている海外ドラマの『スーパーナチュラル』という作品はとても良くできたシリーズですね。1シーズンで20数話あるのですが、その中に全く関係ない話を7、8本突っこむんですよ。それがアメリカでは人気みたいで。本筋とは全く関係ないんです。それを楽しみにしているコアなファンもいるということなので、そういう作り方で楽しみを提供するのも長く続ける秘訣なのかなって思いますね。

——日本語になったときのキャラクターをどのように作っていくのですか?
作品の中でどういう役回りなのかっていうことは、まずは台本を先に読んで考えることが多いです。例えば、クリスチャン・ベールさんが今回はこんなにガリガリになってこんなことをしてるとか、汚れ役をやりたいんだなって思った時に、どういう意図でこうやっているのかというヒントのシーンがちょっとあったりしますよね。そういう場面はカットされていないので、ヒントになりそうなところを作品から探して逆算して作ることを僕の場合はよくしています。

——ウィル・スミスのコミカルさの加減をどのように調整していたのでしょうか?
ウィル・スミスさんの作中での魅力は、いわゆるギャップ萌えですよね。あんなにギャーギャー言っていても締めるところは締めるっていう。彼にはそういう皆が共感できるところがあると思うんですよ。あとは役者である前にラッパーですから、リズム感がすごくいいんです。僕はあまりリズム感が良くないので、まくし立てるときとかリズムに乗って言うとこうなるのかなって試してみた上でセリフに戻したりしていました。

——『アイ・フランケンシュタイン』の人造人間アダムのような、人間とは異なる存在を演じることに特別な難しさはありますか?
どんな作品でも同じことが言えますが正解はありません。「怪物だからこうだ」と自分の中で決めてしまうと、もうその領域に限定されてしまいます。役者さんの演技に、怪物のような状態になったから体の痛みが無いということを感じて声を出しているな、ということが見てとれる部分があったとします。化け物というか常人ではないときの感じですかね。人ではないから「ウガァァ」と話すわけではないと考えて、そのようにはならないように作ろうと思っています。それは舞台で演じたときも変わらないことですね。

——韓国映画『アジョシ』が放送作品に含まれますが、韓国語作品は声をアテる上で英語作品との違いはありますか?
韓国語は最後に口を開けてセリフを言い終えることが多いんですね。吹替えでは最後に口を閉じる言葉で締めていいのかっていう意見があるんですけど、僕はあまり気にしません。
自分が小さい頃から観てきた中で気にしなかったこともあるのですが、ディレクターが許してくれるのならそれでいきたいですね。口の動きを合わせるというところで勝負をしているわけではないので、それを超える演技で吹替えられていれば、オリジナルを超えられるんじゃないかなと思います。
2時間の映画だと映画的な映像だからノリやすいんですけど、韓流ドラマのときは貼り付けたような感じになってしまうことがあって、ちょっと合わせにくいなって思うことはありますね。そんな時の現場ではなるべく貼り付けた風にならないようにしようねと言いながら演じます。

——色々な役をこなしていると、演じている役の話し方を忘れてしまうことはありますか?
最初に演じてから何年も経ってしまった単発の役の場合は覚えていないことがありますね。一番多いのがゲームのキャラクターですね。久しぶりにやるっていうときは、前に演じたときの声を聴かせてもらって思い出すことがあります。アニメでも、若い頃に当時の自分の中で一番若い感じを表現したものを今オファーされると「それは違う人に代わってもらった方がいいんじゃないの?」って思うことがありますね(笑)。

——声優を始めた頃と経験を重ねた後では全く異なりますか?
違いますよね。地上波で初めてやった『メン・イン・ブラック』はよく再放送してくれてますよね。そのときにしかできなかったことだと褒めてくださる方もいますが、観るたびに「下手クソ」だと自分では思いますね。でも、後悔している暇はないんですよね。次から次へと作品をいただいて演じていますから、その年代で、精一杯出来ることを常にやらなくてはと思っています。

東地宏樹さん——声優さんによっては呼吸やトーンなどが自分に近い俳優の方がいらっしゃるそうですが東地さんにはいらっしゃいますか?
そこまでの人にはめぐり会えていないですね。そんな出会いは吹替えする人にとっては当たりを引いたってことになるんですよ(笑)。僕にとってのウィル・スミスさんは、どういうことをするのかは予測出来ているんですけど、合わせるためには1本1本ちゃんと観ないと出来ないところがありますね。
『プリズンブレイク』という海外ドラマ作品でウェントワース・ミラーさんを吹替えたことがありますが、その彼が『レジェンド・オブ・トゥモロー』という新しい作品に出演しているんですよ。久々に声をアテているんですけど、彼はセリフの前に必ず息を吸う癖があるんですね。その癖が変わってなかったので、初見でも合わせられるんじゃないかなと思いますね。いやぁ、素敵な役者さんです(笑)。

——得意な役はどんな役ですか。
よくキャスティングされるのは「アニキキャラ」というか、自分自身の中にそういった要素があるのかどうかはいまだにわからないんですけど、しっくりくるというかやりやすい役柄であるというのはありますね。ゲームでも主人公たちを補佐するアニキ的な立場でよく呼ばれることがあるので、うまくいっているのかなって。

——ご自身のキャラクターに近いと思いますか?
んー、そうかもしれませんね。年下を可愛がることが多い気がしますね。あと男の友達が多いです(笑)。

——好きな映画、ジャンルなどはどのようなものがありますか?
ラストにどんでん返しがあるサスペンス映画が好きですね。『セブン』という作品だと度を超えているところがあるのですが、そこに魅力を感じてしまいます。サスペンス映画ではないけど『スモーク』という映画では、「こいつは本当の事をやっていたのか、嘘だったのか」と、どっちにも取れない感じで終わっていく…というのがやっぱり好きですねぇ。

——特に好きな監督や役者の方はいらっしゃいますか?
大学時代はロバート・デ・ニーロさんが好きだったんですけど、あまりにも色々なことをやってしまうのでどう捉えていいのかわからなくなってきちゃったんですよね(笑)。ただ、『ゴッドファーザー PartII』のデ・ニーロのあのかっこよさが僕は大好きなんです。大好きな映画の1本です。

——映画を観たり、現場での経験だったら、学ぶことが多いのはどちらだったでしょうか?
やはり現場ですね。僕は本当に運が良くて、いい現場で使っていただいたんですよ。まだゴールデンタイムに映画を地上波で放送しているチャンネルが多かった時代でしたので、日曜洋画劇場や金曜ロードショーを各ディレクターの方が観てくださって、新しい奴が出てきたぞって使っていただけたんですよ。それでも、そこでの出会いだけで終わってしまったら、もう一度使っていただかなくては意味が無いので、死に物狂いで頑張りました。仕事をいただいたら、結果を出して、また呼んでいただけるという、そこに喜びを感じて、その喜びの連鎖が今に来ていると思います。責任のある仕事だなって実感したのは、DVDとして作品が残るようになって、BSやCSでも昔に吹替えした作品の放送があるじゃないですか。以前はそれがなかったのですが、現在はいつでも作品を観てもらえるようになった。だから「この時、こうしていたら・・・」と後悔している場合は無くて、その仕事で集まった集団で一生懸命頑張って、死に物狂いでいいものを作る。だから酒が旨いんですけど(笑)。

——尊敬する先輩として大塚芳忠さんや堀内賢雄さんのお名前を挙げられていましたが、現場でご一緒する機会がよくあるのですか?
そうですね、お二人ともふざけてタメ口で話しても許してくださるんですよ。
芳忠さんは本当に素晴らしいです。周囲を圧倒しますよ。どんな言葉でもどんなものでも詰め込んでしまえる。でも飲みにいくとヒドいんですよ(笑)。もうふにゃふにゃで(笑)、エリンギみたいになっちゃうんですよ。現場ではかっこいいからそのギャップが面白いというか。
賢雄さんも現場でも酒場でも面白い人です。そんな素晴らしい先輩の背中を見て学んでいます。
山路和弘さんとも長く『ザ・フォロイング』という海外ドラマでご一緒させてもらいましたけど、ちょい悪オヤジの色気がたまらんのですよ。大塚明夫さん、玄田哲章さん、皆さんすごい先輩です。
先ほど声優になったきっかけを尋ねられましたが、自分には運もありましたが、一番は縁があったことが大きいですかね。素敵な先輩方と一緒にやれるのが吹替えの現場なんですね。これからは自分が後輩からそういう風に見られる先輩にならないといけないんですよね。今はその境目にいるのかなって感じがしています。ただ、僕としては先輩たちの活躍をまだまだ見ていたいです。

——仕事仲間の方たちと食事や飲みに行くと声バレしませんか?
しますね(笑)。でも声バレの前にうるさいです(笑)。信じられないうるささなんです(笑)。例えるなら仮面ライダーとかウルトラマンが自分が改造人間なり宇宙人だということを忘れて思い切り叫んでいるくらい声がでかいです。周りのお客さんや店員さんに声優学校の方がいたらすぐにバレますね(笑)。顔バレしている方も多いですからね。

——普段、喉のケアで気を遣っていらっしゃることはありますか?
風邪には気をつけていますが、僕はあまり風邪をひかないんですよ。体温が高いみたいで。風呂場に塩を置いて、コップの水に塩を入れて鼻うがいをしています。水道水だと痛いんですが、塩水にすると痛くないんです。鼻の調子が悪いなってときにはそれで治しますね。あとは、タバコをずっと吸っていたんですけど7~8年前に疎外感を感じてやめようかなって思ったらすんなりやめられました。やめた時は、かかったこともない扁桃炎になってしまって。身体が解毒しようとしたんですかね。それ以降、調子は良くなりましたね。

——このサイトは声優を目指す方も多くご覧になっていると思いますが、そういう方たちへアドバイスをお願いします。
人に「どうすればいいですか」って訊くな、と言いたいですね!今活躍している方々は、多分人には訊いてないと思いますね。ちょっと調べたり、考えればわかることをすぐに人に尋ねてしまう人はこの仕事には向いてないと思います。自分が何をするべきかは人を見ていればわかりますから。こうなりたいと思ったらその努力の方法は自分で見つけるしかない。あとはプライベートの時間も重要ですね。普段の生活の中でいかに泣いたり、笑ったり、怒ったり、悔しいと思ったか。そういった経験が普段から多くあった人間の方が表現は豊かになりますよね。引きこもっていたり、いじめられていたり、明るい学生生活を送れなくても、それをバネにしていい表現者となる方もたくさんいます。本当に声優になりたい人は人には訊かずに自分で色んな経験をして、その経験を役に活かすのがいいんじゃないかな。
人との関わりもとても大切だと思います。アニメやネットばかりとなってもいけないですよね。人と会って話すとわからなかったことがわかってきますし、悩んでいるなら人と会って話して伝えてすぐに解決しましょう。

——人に関わって、繋がりを築いたことで現在の東地さんがいらっしゃるということですね。
そう思いますね。間違いなくいい仕事をいただいています。

——特集を楽しみにしている視聴者に向けてメッセージをお願いします。
バラエティに富んだ作品を放送していただけてとても嬉しいです。全作品違う内容でとても面白いので、ぜひ全部観ていただきたいです。字幕では一人のセリフしか出ないような表現の幅があっても、吹替えは5人以上のクロスする会話でもいっぺんにわかります。作品からの情報と理解度にどれだけの差があるかなと思います。
あとは、腕のある声優の皆さんの職人芸にも注目して観ていただければなと切に願います。
 

東地宏樹さん[プロフィール]
東地宏樹(とうち ひろき)

声優、俳優、ナレーターなどで活躍。
5月26日生まれ。東京都出身。血液型はA型。
大沢事務所所属。『アンナ・マデリーナ』の金城武の吹替えで外画吹替えデビュー。「金曜ロードショー」放送版の『メン・イン・ブラック』のウィル・スミス役のオーディションを受け合格。サム・ワーシントンや、リーヴ・シュレイバー、海外ドラマ『プリズン・ブレイク』では主人公を演じたウェントワース・ミラーの吹替えを担当。ゲームでは全世界でヒット中『アンチャーテッド』シリーズの主人公ネイサン・ドレイク役、『バイオハザード』シリーズのクリス・レッドフィールド役を担当している。

 
※この特集の放送は終了しました
CS映画専門チャンネル・ムービープラス
「吹替王国 #6 声優:東地宏樹」

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