「え!って言っちゃいますよね(笑)」吉田啓介さん:吹替キングダムインタビュー第1回(全4回)

吹替版制作に携わる方へ、吹替制作現場の過去と現在をお伺いするインタビュー企画がスタート!
記念すべき1回目のゲストとして、グロービジョン株式会社に長きに渡り在籍され、現在はフリーで吹替版に携わりご活躍を続ける、吉田啓介さんご登場いただきお話しを伺いました。
 
「ふきカエル大作戦」時代のコラムでお馴染みの吉田さんに、Mr.ふきカエルが、吹替えにまつわる様々な、あんなことやこんなことを伺いました!
さらに、「吹替キングダム」のXアカウントから募集した、皆さんの質問も吉田さんにきいちゃっています!
 
超ロングとなったインタビュー、第1回、どうぞお楽しみください!
 


まずは、ナイル大商店から発売となったブルーレイ『エイリアン・コップ』(92年当時、吉田さんが“担当”でテレビ朝日版の吹替制作にご参加)についてと、7/30(火)までクラウドファンディングで支援を受付中、9/4(水)に4K UHDがリリース予定の『悪魔のいけにえ2』(吉田さんが吹替版の“ディレクター”を担当!)について伺いました!


 
Mr.ふきカエル:はい、皆様、インタビューのゲストとしてお越しいただいたのは、グロービジョンの演出家、吉田啓介さんです。パチパチパチパチ。
 
吉田啓介さん(以下:吉田さん):元グロービジョンですね。もう退職しましたので。
 
Mr.ふきカエル:本日はよろしくお願いします。吉田さんはグロービジョンで演出家をされて、現在はフリーの演出家として活躍されています。
まずはブルーレイが発売された『エイリアン・コップ』と、9/4に4K UHDが発売予定の『悪魔のいけにえ2』のお話しを伺います。
『エイリアン・コップ』、1992年の「日曜洋画劇場」で放送。いよいよVHSからDVDをすっ飛ばして、ブルーレイになりました。この作品の吹替版の「担当」が吉田さんと台本にあります(笑)。

 
吉田さん:あるんですね(笑)。当時はなんでもかんでもやっていましたからね。
 
Mr.ふきカエル:当時、勢いのあった声優さんである、大塚芳忠さん、戸田恵子さんが出演されていました。
主演は大御所の、『ジャッキー・ブラウン』でアカデミー賞候補になったロバート・フォスター。
僕は劇場でも観ましたので、どういった配役になるのかなと思っていました。大塚芳忠さん、戸田恵子さんはイメージ通りでしたので、じゃあロバート・フォスターは誰になるのかなと。他の映画で担当していた池田勝さんあたりになるのかなと思っていたら、まさかまさかの瑳川哲朗さん。このキャスティングはどう決めたのですか?

 
吉田さん:92年ですか。配給は?
 
Mr.ふきカエル:ギャガ・コミュニケーションズさん(現在のギャガ)です。
 
吉田さん:ギャガさんは(配役については)特に言ってこなかったので、テレ朝のプロデューサーの猪谷(敬二)さんから「主役を大塚芳忠さんで」というご希望があったと思います。当時は芳忠さんもまだ若手で。戸田さんもですけど。芳忠さんが主役で出てきはじめての頃かな、『ハイランダー 悪魔の戦士』で主役のクリストファー・ランバートを演じて、『エイリアン・コップ』のディレクターの左近允さん(※左近允洋、グロービジョンの演出家。「刑事コロンボ」などを手がけた)と、吹替えのスターを作りたい、そういった意図のキャスティングかなと話した覚えがありますね。
吹替えの世界って、それこそ広川太一郎さんであったり、次の世代も大御所になってきて、いわゆる若いスター声優がいなかった時期なんですよね。山寺宏一さんとかが出てくる前で。純粋にアニメではない、吹替えのスターを作りたいのではなかったのかと。多分、そういう時期だと思うんですけど、芳忠さんを主役に据えてね。主役の俳優(ランス・エドワーズ)も若いし、誰っていう色もないので芳忠さんに決まったのでしょう。
ヒロインも、ああいう感じの女性の役は戸田さんにってなっていましたので、これは順当に。
ロバート・フォスターは、僕も詳しく覚えていないんですけど、 割とテレ朝さん的には重鎮枠というか。主役が若い方なので、脇にはちょっと重い方を置こうと。多分、池田勝さんも当然候補に挙がっていたと思うんですけど。瑳川さんはどちらかというと声優ではなく俳優の枠の方だと思いますが、あの方は昔から割と、声の仕事も普通にやられていたので。でも、ちょっとスペシャル感があるみたいなところで、お願いしたんだと思いますけどね。
特にどんな苦労があった作品でもなく、 普通に日曜洋画の普通の流れの中で、普通にやったんで、逆に何も覚えてなくてですね、申し訳ないんですけど。唯一覚えてるのは瑳川さんがお礼にって、お酒を送ってきてくれたんですよ、事務所に。結構高い洋酒で、上司に聞いたら、「瑳川さんはいつも送ってくるんだよ」って。もちろん舞台とか、テレビとか、映画とかにも出られている方ですから、アテレコのギャラって、正直そこまでじゃないですけど、「キャスティングをしてくれた、私を選んでくれた」というお礼にと、付け届けという意味じゃなくて、仁義というか、礼を尽くす方でしたね。瑳川さんとは、その後『許されざる者』(テレビ朝日「日曜洋画劇場」吹替版)をやってるんですよね。僕は現場についてなかったのですが。
 
Mr.ふきカエル:脇役でほとんどセリフがないんですけど、銀河万丈さんも出演されていました。
 
吉田さん:銀河さんが色んな役をやられていた時ですね。
 
Mr.ふきカエル:主役も演じ始めていたと思います。TBSの「ザ・ロードショー」で放送されたシュワルツェネッガーの『ゴリラ』とかですね。
 
吉田さん:今だったら、冒頭の若いギャングの役に銀河万丈さんはちょっと重くないか、って言ってたかもしれません。
 
Mr.ふきカエル:野太い声でしたからね。でも今観ると、ちょっとしかセリフがない脇の警官も演じていてびっくりしました。
 
吉田さん:ディレクターというのは、自分が新人の頃から使ってる人だと、世間ではそこそこ売れてきているけど、スケジュールさえ合えば出てくれ、という感じでね。ご本人も喜んでやってくれますからね。いや、そろそろそういう役は……みたいな方はいませんからね。
 
Mr.ふきカエル:ありがとうございます。さて、それでは『悪魔のいけにえ2』のお話を。
 
吉田さん:収録準備も順調です。僕が観たのは劇場公開の時以来なんですけど、すごい映画でしたね。よくデニス・ホッパーがこんな役で出たねっていう(笑)。
当時はまだ、『イージー・ライダー』のイメージだったんで、このあとで『ブルーベルベット』とか、意外と何でもやるねこの人ってなりましたけど。
登場人物が全編皆さん叫びまくり、喋りまくりで。
 
Mr.ふきカエル:慌ただしい映画というか、忙しい映画なんですよね、
 
吉田さん:ストレッチ役の恒松あゆみさん。ずっと最初から最後まで叫んでいる役ですね(笑)。
 
Mr.ふきカエル:今回、配役交換したのは1組だけですか?
 
吉田さん:レフティー役を土師孝也さんにお願いしています。江原正士さんには頭のナレーションを。他に男性の役がないんですよね。配役交換では、そこを取り替えてやります。あとは、これは【ストレッチゴール】という目標金額に達成したら、収録が行えるのですが、予定している交換がもう1組あります。チョップトップという、頭にプレートをはめた、へんてこりんなキャラを多田野曜平さんで、そして交換する方を、これは意外だと思いますが宮本充さんにお願いしてみようかと。
 
Mr.ふきカエル:えっ!
 
吉田さん:え!って言っちゃいますよね。
宮本さんが、商品版の方では、LGってラジオ局の、あれもいい加減で変な役ですけどね、田舎の抜けたあんちゃんで、ちょっと宮本さんではないよね、みたいな役です。そこはあえてやっていただきました。チョップトップ役はこれも宮本さんのイメージには無い役なので、実現したら面白いかと思います。
ぜひ【ストレッチゴール】の達成にご協力をお願いします。
 
Mr.ふきカエル:(クラウドファンディングに)出資しなきゃ(笑)。配役交換(入りのディスク)をもらわなきゃ(笑)。
そこは、意外ですよね。

 
吉田さん:台本を見ると交換予定の配役も載っていますから、多田野さんと同じ役?ってご本人も思っているはずです(笑)。
多田野さんがあのチョップトップ役って、すごいわかるじゃないですか。あの役と配役交換となったら、相当がんばっていただけると思います。宮本さんも実現することを楽しみにされているはずです。
 
Mr.ふきカエル:最近の宮本さんは怪演といいますか、割と、悪いボスなんかを演じられてますね。
 
吉田さん:ご自分の中で転機になった役が『CSI:科学捜査班』の第9シーズンに登場した連続殺人鬼ネイサン・ハスケル役だそうなんです。大体犯人がサイコパスなやつばっかりなんですけど、(そのシーズンからの)レギュラー的な殺人鬼で、宿敵みたいなね、まるでバルタン星人みたいな扱い(笑)。それを当時のディレクターが考えたのか、マネージャーと相談したのか、宮本さんが演じられています。それまでは2枚目役が多かったですが、演じる役はちょっと変な、端正な顔立ちの俳優さんが演じているのですが、すごく怖い奴で、ご自分でもその役はすごく転機になりましたっていうことをおっしゃっていて、グロービジョンが関わっていた作品で、なんか嬉しいなと思いましたね。
 
Mr.ふきカエル:いや、びっくりですね。
ぜひ皆さん、クラウドファンディングに出資してもらって、 配役交換を実現しましょう(笑)。出資すれば配役交換ディスクを手に入れられますので、ぜひお願いします。

 
吉田さん:あと、聞きどころは、冒頭で出てくる高校生2人組が、福山潤さんと、なんと堀内賢雄さん。
誰で録りましょうって考えた時に、例えば、この作品40年ぐらい前ですよね。当時、もしも「木曜洋画劇場」で放送されていたら 絶対に賢雄さんが演じてる役のはずだって(笑)。少しバカな若者、ちょっとオツムの足りない若者、ヘラヘラ言いながらすぐ死んじゃう役です。
賢雄さんはどうかしら、でもさすがにね、もう年齢が、という意見もありました。でも絶対できるし、当時だったら絶対アテているはず。ということでご本人にお願いしたら、「演ります」って(笑)。でもさすがに事務所さんからは「高校生ですよね?」って確認がありましたが、大丈夫です、賢雄さんの今の感じでやっていただいて結構ですとお伝えしました。例えば春日正伸さんとかね、岡本知さんっていうベテランのディレクターさんはよく賢雄さんを使っていらしたので、いまも現役でしたら絶対賢雄さんをキャスティングしてますよと言ったら、「そうだね(笑)」とおっしゃっていました。
 
Mr.ふきカエル:福山潤さんはアニメでも活躍されていますね。
 
吉田さん:福山さんは、アニメだと高校生ぐらいの役がたまにありますと。
 
Mr.ふきカエル:経歴を拝見すると、アニメはもちろんですが映画や海外ドラマもデビュー直後から多くご出演されていますね。たまに昔の洋画劇場の録画で福山さんのお名前を発見して「おおっ、こんな昔の吹替えにこんな役で!」と感激したりします。
 
吉田さん:この高校生コンビは、冒頭しか出て来ませんが、あれは素晴らしいです。
 
Mr.ふきカエル:今回の『悪魔のいけにえ2』の新録吹替えには、すごい隠し玉をいっぱい込めちゃいましたね。
ぜひ1人でも多くの方に聞いてもらいたい、凄い吹替えが出来上がりそうです。

 
吉田さん:土師さんは低音のグッとしたところが印象的ですし、江原さんがには逆にギラギラしてもうおうかと。せっかく配役交換を演じていただくのですから、違っていないと面白くないですからね。グッと秘めたものを持って決戦の場に向かう土師さんのホッパーと、もうギラギラして「この野郎」って感じの江原ホッパー。アドリブの量が違うんですよ。江原さんは入れたがりで(笑)。
 
Mr.ふきカエル:いや、なんかすごい吹替えが出来るんじゃないかなっていう気がするので、ぜひ皆さんお楽しみにしてください。
 


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吉田啓介さんへのインタビューはこちら
→第2回「会社が請け負った全ての作品のハンドリングを1人でしていた時期もありました」
→第3回「小学生の自分にお前がこの吹替版を作るんだよって言っても、絶対信じないでしょうね」
→第4回 皆様からの質問にお答えします「#おしえて吉田D」