- 2015.12.4
- インタビュー・キングダム
CS映画専門チャンネル・ムービープラスで、「もっと吹替えで映画を観たい!」という視聴者の要望に応え、特定の声優をフィーチャーする「吹替王国」第3弾!
今回は、アーノルド・シュワルツェネッガーの声でお馴染みの玄田哲章さんが登場です!先日、シリーズ最新作「ターミネーター:新起動/ジェニシス」で来日したシュワルツェネッガーと初対面した玄田哲章さんは、ご本人から「永久専属声優認定」を受け話題になりました。シュワルツェネッガー主演の『ターミネーター2』や『大脱出』のほか、ビフ役を務めた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ3作品など、計8作品を放送。放送に先駆けて、玄田哲章さんにインタビューを行いました。
—-『ターミネーター2』でシュワルツェネッガーの声を演じることになったきっかけを教えてください。
玄田哲章さん:声優というものは、自分から仕事を選ぶことが出来ないので、仕事が頂けるのであればと引き受けてきました。聴いた人に納得してもらい、制作側の方には「彼の声でいこう」と言ってもらえればありがたいと思います。シュワルツェネッガーの声をやりはじめた頃の自分は、まだレンタルVHS用の吹替はあまりやってなくて、洋画劇場やアニメなど、テレビでの放送用を中心に声の仕事をやっていました。自分としては、まだ声優としての方向性は固まっていなかったので、「仕事としてできればいい」、というスタンスで引き受けました。最初から役を取りにいこうとは思っていませんでしたよ。もちろん、俳優さんの専属声優として決まれば嬉しいです。
『ターミネーター』という作品自体も好きでしたし、彼の声の仕事が来れば、精一杯取り組んできました。
—-シュワルツェネッガーの声は演じやすいでしょうか。それとも難しいでしょうか。
演じにくいと感じたことはありません。現場では「こうしよう」「ああやろう」とはあまり考えないで、現場で集中して臨めばいいタイプの俳優さんのように思います。集中して声を演じていれば、自然と俳優さんの考え方や呼吸の仕方を理解できるようになります。
—-シュワルツェネッガー御本人との初対面はどうでしたか?
夢のようでした。自分が声をアテている俳優と直接会う機会なんて、まずありませんし、考えてもいませんでした。実際に会ってみると、スターとしてのオーラがあって、近寄りがたいものがありましたよ。「やはりすごい人なんだな」と実感しました。
吹き替えている僕を彼がどう思っているのか気にはなりますよね。聞きませんでしたけど。怖いですよね、どう思われているのか(笑)。受け止めてもらえたらいいなぁ、と思います。
僕が彼に「今まであなたの声の吹き替えを担当させていただきました。これからも一生懸命やっていきたいと思っておりますが如何ですか」と訊いたところ、「うん、百年やってくれ」と言ってくださいました。そういうジョークでの返し、ユーモアが響いてきて、とても嬉しかったです。
俳優としてだけでなく、人としての魅力を持っていらっしゃる方ですね。
—-最初にシュワルツェネッガーの吹替えをした作品『コナン・ザ・グレート』の時から、シュワルツェネッガーの声優として担当が来ると思っていましたか?
思っていませんでした。実は、初めて『コナン・ザ・グレード』で彼を見たときは、失礼ながら「なんだこの役者は」って感じましたね。少ないセリフが棒読みでしたから、「大丈夫かな?」って行く末が心配になりましたよ (笑) しかし、その後に『ターミネーター』に出演して、コメディや大作などもこなして、俳優としてもめきめき頭角を現して、いつのまにか大スターになっていって……感慨深いですね。その彼の声を、長くアテさせてもらっているのは、ありがたいことだと思います。
—-ここからは、声優というお仕事についてお聞きします。アニメと実写とでは声をアテる上での違いはありますか?
根本的には変わりません。やっぱりハートなんですよ。アニメの場合は実写と違って表現がオーバーであったり、突拍子のないことが起こったりしますが、実際は両者ともやってることは同じなんです。声の出し方一つとってみても、伝達方法は多岐に渡ります。演技には答えがないので、色々な演技があって当然なんです。演技は数値化することが出来ないから、面白いんですよ。演じる人に魅力があれば、相手を納得させることもできます。僕はアニメの登場人物にしろ、俳優さんにしろ、なりきるという思いでやっています。
—-日本を代表する声優の一人としてのポリシーを教えてください。
声を出す、滑舌を良くするための発声練習や早口言葉などは養成所でやると思いますけど、そういったことは養成所を卒業してからも日常的にやります。声優は俳優さんたちと違って実際に動きをつけて演技はしませんが、細胞と神経は彼らと同じように感じなきゃいけないんです。ですが、歳を重ねるほど、若い頃ほど体は動けなくなるので、トレーニングは必要になってきます。でも、無理をしてはいけないですよ。限度をちょっと超えるくらいやるのがいいです。
—-声優として長く第一線で活躍する秘訣は何でしょうか。
自分がこんなに声優業を続けられるとは思いませんでしたね。こんなに長く自分を使ってくれる人がいるとは思わなかったので。今考えると、作品や人との出会いがあり、多くの分岐点を経て、ここまでくることが出来たんだと思いますね。あとは運ですね(笑)
—-声優にも声の質の変化はありますか?
微妙にトーンが落ちていますよ。以前自分が昔に声をアテたアニメを観る機会がありまして、それを観た時は自分がすごく良いテンポでしゃべっているように感じましたね。当時はその場で台本を貰って、その場で吹替えを収録することもあったんですよ(笑)。当然、事前の練習なんてありませんでした。昔の自分は、画面に合わせるという事をあまり考えないで芝居をやっていました。画面の動きを意識しすぎて合わせにいくと、演技がうまくいかない。結果として、合えばいいんですよ。
—-健康にはどのように気を遣っていらっしゃいますか?
風邪は引きたくないですね。どんなにケアをしても引いてしまうときはありますが、普段から予防を意識はしています。それと、僕はオペラの人に長い間歌を習っていますけど、歌は音の出し方が言葉とは違うので、自分にとって一番声が響く発声方法が分かったり、色んな勉強になっています。言葉の発声ではなく、歌の発声はまた違うんですよね。どんどん声を出していくことが、健康につながっていくと思っています。習い事って色々あると思うんですけど、何か興味があるものを人から教われば、それがいつか実を結ぶかもしれないし、そうでなかったとしても絶対損にはならないですよ。
—-このサイトは声優志望の方もご覧になっていると思います。そういう方たちへの一言をお願いします。
デビューは遅くてもいいと思います。舞台や芝居を勉強して、最終的にマイクの前での仕事があると知ればいいんじゃないでしょうか。じっくり芝居の勉強をしてからでもいいですし、焦る必要はないですよ。個々の資質は違うし、持っている魅力も様々です。それを最大限出せるようになるには色々な経験を積む必要がある。そういったことを経て、やっと輝いてくるものだと思います。
どうしても自分の中に感性を取り込むには時間がかかるし、一人では出来ないことです。だから「焦っちゃ損だよ」と言いたいです。それと、お金はかかりますが、自分を磨くための自己投資はしたほうがいい。習い事や遊びも一所懸命に取り組めば、必ず役に立ちます。
—-作品放送にむけてのPRをお願いします。
どの作品も、演じている私も楽しくやらせていただいているので、ご覧になる方達にそれが伝われば嬉しいですね。ぜひ楽しんでください!
[プロフィール]
玄田哲章(げんだ てっしょう)
声優、俳優、ナレーターなど多面的に活躍。
5月20日生まれ。岡山県出身。血液型はAB型。
81プロデュース所属。劇団薔薇座時代に、主催の野沢那智の紹介で声の仕事を始める。『科学忍者隊ガッチャマン』でデビュー。独特の太い低音の声質で、『コマンドー』をはじめ、アーノルド・シュワルツェネッガーなど逞しい体を持つ俳優の声を多数担当。また、日本のアニメではコミカルな役からシリアスな役まで幅広く演じこなす実力者。
※こちらの特集の放送は終了しました
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