- 2018.7.3
- コラム・キングダム
- 飯森盛良の吹替え考古学
『ウエスタン』『夕陽のギャングたち』70分台ふきカエを悪びれる色もなく堂々放送!の巻
ウチの懐かしふきカエ日曜よるレギュラー枠「厳選!吹き替えシネマ」では、“イタリアの獅子”ことセルジオ・レオーネ監督による“ワンス・アポン・ア・タイム三部作”、すなわち『ウエスタン』、『夕陽のギャングたち』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を8月にやるんですが、今回はそのお話を。
まずは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』略して『ワン米』から。これ1988年日曜洋画版でして、Wikiによると「10月23日・10月30日と二週に分けて放送」というその時のテープ、ゲットだぜ!と思いきや、テープには「9年(平成の?97年ってこと?)10月16日・10月23日『シネマエクスプレス』」と明記されているので、これは再放送時のテープでしょうな。初回放送からカットされてないといいのですが…。そこまでは調査しきれてないです。実は2週目の冒頭に「前半(先週)のあらすじ」的パートが付いており、これはこれで史料的価値の高い映像だとは承知してるんですが、ウチでは2分割せず普通に1本化して放送しますから挿入できる場所がないのと、配給元、テレ朝、ナレーションを担当した声優さん(まさかの矢島正明さん!!)にダマでそれは放送できず、許諾確認に手間と時間がかかりそうなため、この「あらすじ」部分はカットです。
それ以外の本編をHD化してお届けします。175分強になりそう。Wikiによれば『ワン米』は尺が「144分(初回劇場公開版)、205分(劇場再公開版)、229分(完全版)、269分(レストア版)、251分(エクステンデッド版)」とのことで、もうワケが分からん状態なのですが、これは最初に米国側の配給会社が「長い!」と無残に切り刻んで公開し(アメリカ人言いそう!)、後にレオーネがリベンジで本来あるべき長さに復元して再編集再公開したというゴタゴタがあったから。こういうことたまにある。不肖ワタクシが「ファイナル・カット」版のふきカエをプロデュースした『ブレードランナー』とかね。
今回ウチでやる175分は最初の劇場公開版よりはよっぽどマシですし、決してメチャクチャにカットされているというほどでもない。日曜洋画が2週にわたって丁寧に放送してくれたおかげです。偉い!よく日曜洋画こういうことやってくれましたよね、『ラストエンペラー』なんて3夜連続で月火もやってましたし(もはや日曜じゃね〜!)『アマデウス』はてっぺん越えて翌月曜まで放映してくれましたっけ。
『ワン米』は三部作の最終作です。では、前2作はどういう状態でオンエアするのかと申しますと…『ウエスタン』は73分!(もと165分)、『夕陽のギャングたち』は71分!!(もと157分)これ、嘘のような本当の話!!!
70分台って…でもこれって、もしかしたら皆さん、その存在だけは噂に聞いたことあるんじゃありません?このサイトに集いし者のバイブルとも言うべき『別冊映画秘宝VOL.1 吹替洋画劇場』の「吹替残酷物語 岩本克也インタビュー」というパートにて、スティングレイの岩本社長がインタビューで
「『夕陽のギャングたち』は実際に倉庫から発見されたプリントが、一時間半枠の69分尺で、映画が始まった途端にダイナマイトがいきなり爆発して、ジェームズ・コバーンがいきなりバイクに乗って出てくるものだった(笑)。オリジナル尺の半分以下ですよね。これを確認した時点で新たに録音することに決めました」
と語っている多分その69分というのと今回ウチが発掘した71分というやつが、同じ1977年10月31日TBS月曜ロードショー版のハズ。2分の差の理由は分からん。細かいことは気にしなさんな。まぁ、こういう経緯から、スティングレイさんがロッド・スタイガー富田耕生、ジェームズ・コバーン小林清志という同じキャストで、弊社こと東北新社にてノーカット版を再録したんです。だからノーカットふきカエ版を見たければそっちを見ればよい。
一方『ウエスタン』の日テレ土曜映画劇場ヘンリー・フォンダ木村幌版73分というのもまた、すっさまじい!「土曜映画劇場(えいがげきじょう)」というのはワタクシの知る限りテレ朝の映画枠のはずで、淀長翁の土曜洋画劇場(ようがげきじょう)が日曜洋画にお引越しした跡地に新設された後継枠のはずなんですが(そしてその後「土曜ワイド劇場」に生まれ変わった)、日テレにも同じ名称の「土曜映画劇場」というのが、テレ朝版が土ワイに生まれ変わり無くなったわずか2年後の昼間に存在したらしい。しかもこれ、放送日時が台本に明記されていて「昭和54年9月29日(土)14:30〜15:55」と、ハナっから1時間25分枠の映画枠だったみたい。凄えな!! そこであえて大作『ウエスタン』を放送しちゃうの?無茶すんなぁ〜!
「逆に」という言葉がありますが、逆に見たいわ!逆に見たくないですか!?『ウエスタン』と『夕陽のギャングたち』皆さんご存知ですよね?あれが1時間10分になります普通!? ワタクシ自身が逆に超見たい、ということで8月にやります!まだワタクシ自身も試写できていません。なにせこの2作、映像と音声が別といういにしえのメディア形式で出土したもんで。大昔は、絵と音の2つを同時シンクロ再生させ放送していたのです。音は「シネテープ」という音声テープが独立して存在していました。今回の発掘調査ではそれだけが見つかったのです。絵も音も一個で記録できる比較的近年の「D2」というテープで出土した『ワン米』ならばワタクシもすぐに中身を確認できたんですが。
また『ワン米』なら、昔のテープの音を、綺麗なHD無字幕原語版の絵と、2画面で同じシーンを流し目視確認しながら合体させていけば新HD完パケは作れますが、シネテープの場合は絵が無いためそうはいかない。シネテープの音を、BGMの流れ出すタイミングとか効果音とか、耳を頼りに、HD無字幕原音版の絵と合体させていかねばならない。それの仕上がり待ちで、この執筆時点でワタクシもまだ中身を見れてないのです。
さてその中身、逆にアリかもしれないし、あるいは普通に、やっぱナシかもしれない。3時間ぐらいの映画を1時間10分にカット…普通ナシですわ!でも怪我の功名でテンポが良くなり、まさかの逆にアリ!という可能性だって無くはない。実際、TVふきカエのカット版の方が結果的にテンポ良くなっちゃってる映画もこの世にはゴマンとあるということも、この場にお集まりの皆様ならよくご存知でしょう。はてさて、アリかナシか…アリだといいんだけどなぁ!なんせ、耳だけ頼りにシネテープの音をHDの絵と合体させ復元する作業で、どえらいカネつぎ込んでますから!普段の2作品分カネかかりましたよ、尺70分のくせに!
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』© 1984 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
『夕陽のギャングたち』© 1972 RAFRAN CINEMATOGRAFICA S.P.A.. All Rights Reserved
『ウエスタン』TM & Copyright © 2018 by Paramount Pictures Corporation. All rights reserved