飯森盛良のふきカエ考古学

iimori_reviewtop500×150

けびんこ2 ~I Will Always Love けびんこ♥ to kill time~

飯森盛良のふきカエ考古学
けびんこ♥ ネタでもう1回だけ引っ張らせてください。なぜなら、思わずサムズアップなけびんこ♥ の近作を5月に当チャンネルでお届けするから。タイトルは『ラストミッション』という、2014年の映画です。これ、80’s後半~90年代のけびんこ♥ 最盛期、『フィールド・オブ・ドリームス』や『ボディガード』と比べたら知名度は低いと思いますが、その黄金時代を知るオールドファンが見たら実にたまらない、2010年代に作られた佳作です。お見逃しの向きも多いかと思います。ウチでの津嘉山正種さんふきカエ版放送で、ぜひチェックしてみてください。損させません!

【8000万$ゲス不倫 & 再婚旅行のチン事】
と、その前に。ここ数年で、けびんこ♥ 完全復活の印象ですよね。2013年の『マン・オブ・スティール』以降でしょうか。ほぼ同時期、前回この場でご紹介した故ホイットニーへの心動かされる弔辞というのがあって、そこらへんからV字復活してきたような気がします。あの泣ける弔辞で禊ぎは済んだ感がある。この『ラストミッション』も、そんな完全復活期に作られたアクション快作です。

でも逆に、いつから人気が低迷しちゃったのか?どうしてだったのか?ほぼ衆目の一致するところとして、大コケした95年『ウォーターワールド』の悲劇というのが挙げられるでしょう。しかし実は同じ頃、今で言うところの“ゲス不倫”(もう言わないか?)も発覚。糟糠の奥さんと離婚しちゃったんですねぇ。高校時代から付き合って、無名時代の彼を支え、16年も連れ添いオシドリ夫婦と呼ばれ3人もの子を成したそうですが、ゲス不倫の果てに8000万ドルというハリウッドでも屈指の慰謝料(というか財産分与)を払って離婚…。長身にして端正なルックスと物腰から、ブレイク時には“ゲイリー・ クーパーの再来”とまで言われた男です。同性人気よりも明らかに女性人気でしたので、ファンだった世の奥様連も「ガッカリだわ!」と、そりゃなりますわ(とか言いながらクープも若いパトリシア・ニールとゲスドロ不倫して中絶までさせてるんですけどねぇ)。でも、けびんこ♥ の御乱行はそれだけにとどまりませんで、再婚ハネムーンのホテルでマッサージ中に嬢に向けタオルはらり開チン事件、そこに新妻が入ってきて修羅場に、とかもね…いやはや、そういうことしなさそうな清らかげなお顔ってことで奥様連に人気だったのにねぇ…。やーねー。

そんな、所謂“すったもんだがありました”からの、奇跡のV字回復ですが、ワタクシはずっとオールウェイズ・ラヴ・けびんこ♥ でしたよ。スキャンダル発覚後ドン底期間中の99年『メッセージ・イン・ア・ボトル』が何気に人生BESTの1本だったり、00年『13デイズ』が『JFK』とおんなじくらい好きだったり、世間では酷評された06年『守護神』のことを実はむちゃくちゃ高く評価していたり、07年『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』がウチで放送するといつも視聴率なぜか異常に良かったりと、低迷期にも一貫してけびんこ♥ 支持を表明し、毒を食らわば皿まで精神で(違うか)応援しつづけてきましたので、こうして完全復活を遂げてくれて個人的にもたいへん嬉しいかぎりです。

【フランスでは空き家に赤の他人が勝手に住みついても追い出せない!?】
さて、ここから本題『ラストミッション』の話。まずは簡単なあらすじから。ベテランCIAエージェントのおじさん(けびんこ♥ )が東欧で任務遂行中、著しい体調不良で倒れてテロリストを取り逃がしてしまい、末期ガンで余命数ヶ月と診断されます。任務から外され、別れた妻子のいるパリに終の住処を借りて最期の日々を過ごすことにし、疎遠になっていたお年頃の娘との溝をどうにか埋めたいと願うのですが、そこにCIAの女スパイが接触を図ってきて、引き続き任務に当たってくれと依頼されます。CIAが追っている重要テロリストの顔をベテランの彼しか知らないからです。そのかわり承認前の画期的な新薬を融通してくれるというのが交換条件。けびんこ♥ は娘との残された時間を引き伸ばすために、やむなくこの“ラストミッション”を引き受けるのでした。

と、いうお話でして、第一にスパイ・アクション映画なのですけど、ホームコメディ風味も濃い。メインプロットと直接関係のないアフリカ系移民家族をめぐるサブプロットや、良い味出してるコメディ・リリーフ、テロリスト協力者の憎めない中東系オヤジの家族の話まで盛り込むことによって、正副3家族もの物語が盛り込まれて、ホカホカしたホームドラマ的味わいも同時に醸し出しています。

その、サブプロットの移民家族のお話について今回は深掘りしたい。終の住処のアパルトマン、実はけびんこ♥ は以前から賃借していて、パリでのアジトとして使っており、隠し部屋に銃器を各種そろえてたりもする。彼はパリにいつもいる訳ではなく世界中を飛び回っていたのでアジトに戻るのは久しぶりなのですが、そこに移民なのか難民なのか、見ず知らずのアフリカ系の一家が勝手に住みついちゃってた!けびんこ♥ ドアを開けたら知らない人が出てきてビックリ!! 当然警察に届け出ます。まぁ、ヨーロッパは移民・難民で大変だとはワタクシもニュース等で噂には聞いていますから、こういうことがありうるってことは日本人でも理解できます。しかし…。

警官「お気の毒ですが4月13日までは我慢していただくしかないですねえ」
けびんこ♥ (CV:津嘉山正種)「何ヶ月も先だ」
警官「法律で冬の間は追い出せないって決まってるんです」
けびんこ♥ (CV:津嘉山正種)「(思わず呆れ笑い)ハッ、なにぃ?…じゃあ自分で追い出すからいいよ」
警官「ああ、それは良くないです。やめたほうがいい。あなたが刑務所に入れられることになりますよ?」
けびんこ♥ (CV:津嘉山正種)「俺が!? 俺がムショに!?」
警官「そうなるでしょうねえ」
けびんこ♥ (CV:津嘉山正種)「わかったよ!じゃあ俺はどうすればいいんだ!?」
警官「春を待つ。ミツバチや、鳥が飛び交う、恋の季節をね」
けびんこ♥ (CV:津嘉山正種)「…それ、本気で言ってるのか?」

日本人にはまるっきし理解できない法律ですな。けびんこ♥ 演じるアメリカ人にもさっぱり理解できない。これが嘘のような本当の話。こういう、家に勝手に居ついちゃう赤の他人のことをフランス語で「スクワッター(squatter)」と呼びます。移民か難民か、何人(なにじん)であるかに関係なく、生粋のフランス人であっても勝手に住みついたらスクワッターです。フランスだけでなく世界各国に存在しますが、フランスでは、アーティストとかミュージシャンとか、自由すぎるヒッピーみたいな人たちが住みつくケースも多いようです(こんな感じ 外部サイトへ)。

ただしフランスの場合ですと、家具のない完全な空き家・空き室・空き倉庫とかに限るようですが。けびんこ♥ のアジトは空き家でしたけど確か家財道具一式は置きっぱなしにしてあったはずで…おそらくこの点には多少の“映画の嘘”があろうかと。家具置きっぱなしのけびんこ♥ の部屋に勝手に住みついたなら、これはフランスでも住居不法侵入に問われるはずです。あと、劇中のセリフにある「冬の間は追い出せない」という制度ですが、単なる家賃滞納だけなら冬の間は確かに追い出せないそうですけど、スクワッターは適用除外みたいです。多分ここも“映画の嘘”ではないかと。

逆に言えば、家賃払ってない人でも冬場なら追い出されないで済むってことで、それだけでも十分凄くないですか!? フランスでは人々の住む権利「居住権(Droit au logement)」がとても厚く守られてて、まず法律で「居住権は基本権である」と定められており、さらに司法の最高機関も「居住権」は「人間の尊厳に適合するような居住用途の場所を確保する権利」だと定義していて、「居住権運動」が人権擁護運動のいちジャンルとして存在するほど。

スクワッターにも家賃滞納者にも、「人間の尊厳に適合するような居住用途の場所を確保する権利」は基本権なので(選挙権とかと同列に)国が法律として保障しており、したがって大家とか警察とかが「住む家がないだァ!? 知るか!人の不動産から出てけ!今晩泊まるカネがない?行くアテもないだと?だったら勝手に野垂れ死ね!そんなのテメエの事情だろ!」とはできないのです。アメリカだったらさらに「今すぐ出てかねえと射殺すんぞゴルァ!」というダメ押しまで付け加わりそうで恐いんですが、そうはならないのが西欧文明社会の成熟してるところ。憧れます。この原稿を執筆している本日は、フランス大統領選第1回投票で決着がつかず、マクロンさんvsルペンさんの決選投票が行われることが決まりましたが、どうかフランスだけはこれからも、オレたちがずっと憧れてきた自由と民主主義の偉大なる共和国フランスのままで、「ガッカリだわ!」と思わせないでくれよな、と、遠い極東の地から気を揉むことしかできません…。

閑話休題。スクワッターを強制退去させる場合、家主が勝手にしてはいけません。スクワッターが留守のスキを狙って鍵を付け替えたりしたら、家主の方が違法になります。強制退去にはまず行政(県知事)への届け出が必要です。

また、退去が決まっても2ヶ月もの法定猶予期間がスクワッターには与えられます。その間に次の住まいに引っ越しなさい、と。その際には公的援助も差し伸べられます。さらに、裁判官がケースbyケースで猶予期間をもっと伸ばしてあげることもあります。スクワッターが妊婦とか高齢とか病気とかの場合です。

それでもスクワッターが居座り続け、2ヶ月後も出て行こうとしないとなったら、いよいよ警察やジャンダルムリ(前々回に書きました、仏国家憲兵のことです)の出番となって実力排除となるワケですが、現場に警察等を派遣するのは県知事権限で、県知事が警察等の投入を拒否するケースも多々あるそうで、そうなったら大家の泣き寝入りです。もともと植民地を持っていた頃、現地人が法的には違法なんだけれど先祖伝来の土地に居座りつづけ、それをフランス帝国主義が実力をもって排除したら、暴動や独立闘争で流血沙汰になるとの危惧から、実力行使はやりたくない、という先例ができ、それが今でも受け継がれているのです。独立闘争とまでいかずとも人権団体とかが結集して大規模デモに発展、なんてことになったら厄介は厄介ですから、及び腰の県知事もいるみたいで。

このように、フランスでは過保護なぐらいに保護されている「居住権」ですが、いかがでしょうか。大家からしてみたらたまったもんじゃない。でも、先行き混沌とした今のご時世、マンション建てて働かずに家賃収入で食ってけるリッチな人生見通しよりは、逆に、家族抱えて路頭に迷ったり、死ぬまでちゃんとローン払い続けられなくなっちゃったり…というプア転落リスクの方が、強いてどちらかと言えば高くないですか?そうはならないという絶対の保証など誰も持ってない、マンションオーナーだっていつそうなるかもしれないのですから、自分が万一そうなった時、「即刻出てけ!一家全員勝手に野垂れ死ね!!」と突き放される社会がいいか、最低限「人間の尊厳に適合するような居住用途の場所を確保する権利」を保障してくれる社会がいいか。憎みきれないアフリカ系スクワッター家族に向けて、次第に芽生えていくけびんこ♥ のいたわりの情、両者の温かい交流を見ていると、そんなことまで考えさせられるのです。
[本章の参考文献] 小柳春一郎(2011)「フランス法における強制退去(明渡し):賃料不払い・空家不法占拠と警察上援助拒絶」, 『獨協法学』84号, pp.65-157, 獨協大学.

【原題「3デイズ・トゥ・キル」の意味と、ブサカワ萌えヘイリーたん】
飯森盛良のふきカエ考古学
余談でずいぶんと寄り道をしてしまった…本筋の映画の話に戻りましょう。この『ラストミッション』は余命いくばくもないオジサンのラストのミッションを描いているので、もう、そのまんまな題名なのですが、実はこれは邦題。原題は「3デイズ・トゥ・キル」と言います。これが意味わからない。「殺しの3日間」て?

けびんこ♥ 、別れた妻子とパリで再会し、同居は許してもらえそうにないまでも行き来して交流を再開したいなぁ、という第1段階の願いをまずは成就。続きまして、奥さんが仕事で3日間ロンドン出張に行っちゃうので、その間、保護者として高校生ぐらいの愛娘の面倒を見る、3日だけ父娘2人暮らし、という次なるステップへと進みます。

そこで言う娘のセリフ「(字)あんたと3日間を潰すわけね」or「(吹)これから3日間乗り切らないとね(by 楠見藍子)」というのが、何を隠そう原語では”we’ve got 3 days to kill.”なのです。

たとえば「kill time」は、「殺しの時間」ではなく「時間をつぶす」という意味でして、Killには「〈暇を〉つぶす」という語義もあるのです。だから「3デイズ・トゥ・キル」は「3日間つぶす」という意味と「殺しの3日間」という意味をかけている、実はオヤジギャグなのです。

このように、死ぬ前にティーンエイジャーの娘と仲直りしたーい!! というオジサンの切なる願いがメインで描かれる映画で、奥さんの存在意義はあまり深く描かない作りとなっております。まさか、8000万ドルのゲス不倫とか再婚旅行タオルはらりチン事件とかを踏まえた上での「だって、けびんこ♥ ってそういう奴だろ!?」というリュック・ベッソンの意地悪シナリオって訳でもないでしょうけど(ベッソンが原案と共同製作・共同脚本)、奥さんの扱いが若干ぞんざいで、いささか可哀想ではありますな。

ところで、この奥さん出張のシークェンスで、娘がパパの携帯を取り上げ、勝手にいじって設定変えて、自分専用の着メロを登録するくだりが出てきます。「着メロを入れとくね。アタシ専用の。年に1度ぐらいは鳴るかも(by 楠見藍子)」と、マジかったりぃ~みたいなダルな調子で言いながら。その曲というのが、スウェーデンの女性デュオIcona Popの”I Love It”という曲でして、この曲が劇中で何度も、けびんこ♥ アクション真っ最中のいちばん緊迫した局面でかかってきて愉快なのですが、流れるのはわりと有名なサビの部分だけ。ただ、劇中では流れないサビ以外こそが実は重要でして、

「オメエは70年代引きずってっかしんねーけどアタシは90年代のビッチなんだよ!」
「オメエの置いてったクソみてえな荷物を階段から投げ捨ててやったよ!」
「オメエは私のこと地べたに縛り付けとこうとすっけどな、アタシは宇宙に飛び出してくんだよ!」

等々と、かなり攻撃的なことが歌われてるんです。それを出てって久しぶりに母娘のもとに帰ってきたパパの携帯に、アタシからの着メロとして設定するって…萌えです!ツンデレを超えたブータレ萌え。ブータレてる故に超可愛い、ヘイリー・スタインフェルドたん。楠見藍子さんのブータレ演技もお見事です!

飯森盛良のふきカエ考古学
ヘイリーたんと言えば、そもそも2010年の西部劇『トゥルー・グリット』で、父の仇討ちをする少女役で14歳にしてアカデミー助演女優賞にノミネートされ、『はじまりのうた』でも反抗期ながら実は別居中の父の存在を求めている娘の役と、これまで娘役の印象がわりと強かった訳ですが、どんどん可愛く進化している最中の、ただいま芳紀まさに20歳。こないだアメイーの店頭ポスターに出ていて、格好良くて可愛くて、店先で思わずポーっと立ち尽くしちゃったんですけど(目元スモーキーにすると俄然格好良くなるんだ!)、これから恋愛映画での活躍も期待したい、10年代のいま、個人的にいちばん好きな女優です。めちゃめちゃ可愛い!同時にブスにも見える!このカバー領域の広さたるやどうだ!! 最っ高のブサカワです。

最新作『スウィート17モンスター』は、こじらせ女子の成長を描いた超ビターな(まったくスウィートではない)青春ドラマで、ここではブサカワの面目躍如。社交的で学校でも人気者の兄を持ってしまった、まったくイケてないコミュ障気味のぼっち女子高生という役で主役を演じています。冴えない同士たった一人だけいた親友がはずみで兄と付き合うことになっちゃったので、親友に激怒、兄にも激怒、そりの合わない母親にも激怒、荒れに荒れまくってメンタルぼろっぼろになりますが、これがまたイタ可愛い!イケてない役うまいなぁ。ファッションセンスも微妙という設定なんですけど、このズレてるのがまた逆にダサ可愛い!似合うんだこういう格好。ダサいと言うけど、90年代古着ブームの頃だったら下北あたりにいた古着アメカジってことで全然アリなダサ格好良さ。それこそ今のアメイーにも通じるセンスだと思いましたね。だってヒロインが着ているガンダムみたいなカラーのスキージャンパーなんて、ワタクシも欲しいですもん!単館系なのでさすがにふきカエで劇場公開はされてないみたいですが、ソフト化の際には期待大です。

ああそれと、『ピッチ・パーフェクト2』では歌手顔負けの歌声も披露していましたね。っていうか顔負けも何も、実際に歌手としても活動中なのです。昨年夏には歌手として来日を果たし『スッキリ!!』で生歌まで披露したみたいです(仕事中で見れなかった)。どことは言いませんが某動画サイトとかで「ヘイリー・スタインフェルド×来日」で各自検索してみましょう。

【父と娘のための、タラコ唇に鼻水がキラリと光る塩味映画】
本作は“ボディガード父と娘版”だとも言えるんです。ヘイリーたん、思春期ということで、パパには「友達と宿題するね」とウソ言って抜け出し夜遊び@ヤバめのクラブ。案の定、チャラ男数人に男子便所に連れ込まれ、あわや貞操の危機に…というところにけびんこ♥ が駆けつけ警護!半チクなチャラ男どもをCIAのプロの技で半殺しにした後、腰が抜けちゃい歩けないヘイリーたんをお姫様抱っこしてクラブを出ていく、しかもスローモーションで!というシーンが用意されておりまして。そこでホイットニーの「♪エンダーーーイアーーー」流さなかったら、ウソですってそんなもん!まぁ完全にギャグにはなっちゃいますから実際には流せませんけど、せめて各自脳内だけででも流してください。『ボディガード』でけびんこ♥ が人気歌手ホイットニーをお姫様抱っこするのも、中盤、クラブで半分ストーカー入ってるヤバいファンどもがステージにわらわら上がってきちゃって、セキュリティ崩壊ライブ騒然、というところから救い出してクラブの外に出ていくシーンでしたからね。

さらに、娘とメロウな曲で踊るシーンも出てくる。これも、『ボディガード』でけびんこ♥ 行きつけのカントリー酒場に入り、そこでカントリー調のオリジナル版「♪オールウェイズ・ラヴ・ユー」が有線かなんかで流れてて、ホイットニーと「ダッサい曲ねえ」なんて言いながら踊り、それが2人にとっては忘れえぬ一曲になっちゃった。だからエピローグでホイットニーがカヴァーし「♪エンダーーーイアーーー」と絶唱することになる、あのシンフォギアな展開を、ここはモロに連想させます。

挙げ句の果てには、けびんこ♥ は冒頭からずっとちょいダサめのおっさんファッションを加齢にまとっているのに、溜めて溜めて溜めまくって、映画終盤、ここぞというタイミングで、ついにスーツを華麗にまといます。「ィヨッ!待ってました!!」としか言いようがありませんよもう!娘からも「うわハァ、かっこい❤︎ それアタシのため?(by 楠見藍子)」なんてキャピキャピ言われちゃったりしてね。もちろん白いシンプルなシャツとシンプルなタイは二十年来のお約束(ってのは前回記事参照)。

このように、完全に『ボディガード』を踏まえた作りの2014年新作となっておりまして、また、津嘉山さんご自身も年齢を重ねられ、先日ウチのチャンネルで放映した『ボディガード』95年ゴールデン洋画劇場版&98年日曜洋画劇場版ふきカエの頃よりも、お声も老境の深みと渋みを増しておいでですので、この2作品を新旧セットで、それも津嘉山さんのふきカエで見ることにより、リアルに二十年の歳月の流れを感じられるようになっているという、これぞまさしく編成の妙。自分で言うな。字幕で見る+αのかなりな付加価値を堪能できるということで、実にふきカエ向きのコンテンツだと言えるのではないでしょうか。

最後に、突然ですが『アルマゲドン』。大学時代はワタクシ、「くっだらねー映画だな~」、「アっタマ超ワリぃな~」と鼻でせせら嗤っていたものですが(イタい映画通気取りの大二病あるある)、結婚して子供、しかも娘が生まれてからアレ見ましたら、鼻で嗤うどころか逆に鼻水ブー、鼻が決壊しました!感動の大号泣作へと知らぬ間に化学変化を起こしておりまして、いやはや、「このアタシもヤキが回ったわねー(byアスカ CV:宮村優子)」と思わんでもないですけれども、あのババババ~っと走馬灯が回りながらの「♪ドンウォントゥ・クローズ・マイアーーイズ」のところでは、そりゃ鼻水も出ますわな!あの映画バカにする奴は許っせん!だったら女の子生まれてからもう一回見てみろっつーの!! それで泣かない奴に人の親たる心はあるのか!? と、声を大にして訴えたいですワタクシは。で、話もどって本作『ラストミッション』も、スティーブン・タイラー気分(なのかブルース・ウィリス気分なのかは見解の分かれるところ)を最後の一滴まで味わいつくせる、塩気の効いた鼻汁映画となっておりまして。あまねく老若男女にお薦めしますが、娘を持つ世の全てのパパさんたちにこそ、まず最優先でお薦めしたい作品であります。