ダークボのふきカエ偏愛録

#69 元気すぎるレジェンド

みんなでワァッと集まって、ワァッと収録して、ワァッと打ち上げる、そんなふきカエの現場が失われて、もう久しい。
俺の場合、最後のそういう現場は、ちょうど2年前のドキュメンタリー映画『猫が教えてくれたこと』。あれはあれで忘れ難いけど(ネコ好き大集合!)、王道の劇映画ふきカエとしては、その1年前、2019年に取り組んだ『ウォンテッド』が最後でした。
決め打ちでお願いした内田夕夜さん、坂口芳貞さんの他にも凄いメンバーが集まってくれて、最高にエキサイティングな仕事でしたが、何より打ち上げで、芳貞さん、そして羽佐間道夫さんと一緒に飲んでる状況が信じられなくてね。
悲しいことに、坂口芳貞さんはあれがお別れに(合掌…)。思い出したようにしか作らない俺のふきカエ仕事じゃ、羽佐間道夫さんともずっとご無沙汰でしたが、昨年2月の『ある日どこかで』に思いがけず参加してくださって。前にも書いた通り、いつまでも若々しいささきいさおさん以上に、元気にギャグを飛ばしまくる羽佐間さんに感動しましたよ。

その羽佐間道夫さん、昨年10月に米寿(88歳!)を迎えられました。
レジェンドへのお祝いに何か、と思ったんですが、つまらない品物を贈るより、また仕事をして頂くのが一番だと考えましてね。『ある日どこかで』の後、レジェンドのあまりのお元気ぶりに高橋剛ディレクターと相談していた新録企画を実現することにしました。まだどこにも情報は出してないけど、ここで発表しちゃいますね。

『ジョーズ2』 です。

ダークボのふきカエ偏愛録 ダークボのふきカエ偏愛録実は3年前の『ウォンテッド』は、2004年に「木曜洋画劇場」で『ジョーズ』を新録して以来、15年ぶりの羽佐間さんとのお仕事でした。でも『ジョーズ』の時は、当日のどうしようもない事情で俺はアフレコに立ち会えなくて。完成品を観て、ああ、やっぱ羽佐間さんのロイ・シャイダーはええのぉ、と涙したものです。
それなら勢いで『2』も作ればよかったけど、程なく俺が異動してしまったり、いろいろありましてね。
でも、ここ数年の流れは、どうもこれに繋がってたような気がする。何しろ『ジョーズ2』の監督は『ある日どこかで』のジュノー・シュウォーク(俺の世代は「ヤノット・シュワルツ」の方がしっくりくる)ですからね。
そんなこんなで、日本テレビ版以来実に40年ぶりの新録を決行しました!

羽佐間さんは1933年、ロイ・シャイダーは1932年生まれだから、羽佐間さんが持ち役とされたのはごく自然なんだけど、『ジョーズ2』のシャイダーはまだ46歳。今の羽佐間さんにお願いしていいのか? さすがにちょっと心配ではありましたが、これが、まったく違和感なし!
小声で話す場面より、ビーチや海で絶叫する声の方が若々しかったりして。これは常人にはできない発声法というか、もう名人芸ですね。

さらに今回の新録には、レジェンドの米寿をお祝いしようと、豪華声優陣が続々集まってくれました。
ロレイン・ゲイリーは、木曜洋画版『ジョーズ』に続いて高島雅羅さんが再登板。『ジョーズ』ではリチャード・ドレイファスをアテて頂いた堀内賢雄さんは、別の役で登場。他にも銀河万丈さん(高島雅羅さんのご主人ですよ)、大塚芳忠さん、勝生真沙子さん、大谷育江さん、岩崎ひろしさん、武内駿輔さん、落合福嗣さん、などなど。どーですかお客さん!
(詳細情報はいずれ「ふきカエル大作戦」に掲載されると思いますので、そちらでどうぞ)

お分かりでしょうが、皆さんに長年親しまれてきた日テレ版の名ふきカエ(ロイ・シャイダーは滝田裕介さん)を否定するつもりはありませんからね。
日テレ版は既発のブルーレイに収録されてますし、今回の新録版は、各局競作が当たり前だった「洋画劇場」の時代(前回の当コラムを参照)に想いを馳せつつ、お楽しみください。

『ジョーズ2 〈新録吹き替え版〉』は、BSテレ東「シネマクラッシュ」にて、
3月7日(月) 夜6時30分~放送。放送枠拡大、本編ノーカットでお送りします。お見逃しなく!
 

[作品画像はAmazon.co.jpより]
※Amazonのページで紹介しているDVD・ブルーレイ等のソフトは、今回紹介する日本語吹替え音声を収録しておりませんので、ご購入等の際はご注意ください。