- 2021.2.1
- コラム・キングダム
- ダークボの吹替え偏愛録
#63 「あなたなの?」「そうだよ」
2021年は年明け早々、日テレ「金曜ロード」さんの『パラサイト 半地下の家族』オリジナルふきカエが話題になりましたが。
その頃、BSテレ東「シネマクラッシュ」は、おそらく誰も予想しなかったであろう、新たなふきカエプロジェクトを進めていたのです。
2/10(水) 夜7時55分~放送の 『ある日どこかで』。
1981年の日本公開から40年、初のテレビふきカエを作りましたよ!
思えばこの映画との出逢いは、公開から少し遅れて1983年。
『スーパーマン』(1978)で中二病がスタートした田舎の高校生は、続いてあまりにも地味に公開されたクリストファー・リーブ主演作を観ることはできず、大学生となって上京した年の夏、今は無き名画座「大井武蔵野館」の二本立て(同時上映は『バンデットQ』)で、ようやく『ある日どこかで』を観たのだった。
それからは、まるでこの映画の虜に。寝ても覚めても写真の美女エリーズ(ジェーン・シーモア)が忘れられないリチャード・コリア―(クリストファー・リーブ)のように、ふと気が付くと本作の感動を反芻している。そんな日々は、約2年後に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観るまで続いた。
5年間の大学生活(笑)を終えてテレ東に入社した昭和最後の年、1988年。希望通り「映画部」に配属された俺は、「木曜洋画劇場」や「2時のロードショー」の見習いとしてシゴかれつつ、百戦錬磨の先輩たちに『ある日どこかで』を観せる機会を伺っていた。
そして、その機会が到来。先輩方を「試写室」(と言う名の物置小屋みたいな部屋)に集めて、VHSテープで本作(もちろん字幕版)を観てもらった。2時間後、試写室から出てきた先輩方が、揃って真っ赤な目をしていたのが忘れられない。そしてある先輩は、芝居がかった調子で、無言で俺に握手を求めてきた。
そんな感動的な瞬間はあったものの、プロの世界はそう甘くない。「木曜洋画」で『スーパーマン4/最強の敵』がテレビ初放送されたりする一方、『ある日どこかで』も放送する機会はその後何度かあったが、深夜枠で字幕版ばかりだった。テレビ番組としての評価はどこも同じだったのだろう、ふきカエを作ってプライムタイムに放送しようとする局は今の今まで無かった。
『ある日どこかで』のふきカエは、これまでに2度作られている。
最初はDVD版で、クリストファー・リーブはてらそままさきさん、ジェーン・シーモアは田中敦子さん。これはこれで、実に素敵なリチャードとエリーズだ。
次はNETFLIX版で、残念ながら未見だが、データによれば星野貴紀さん(ヘンリー・カヴィル版のスーパーマンだね)と恒松あゆみさん(日テレ版『パラサイト』の上流階級夫人だったね)とか。なるほどね。
でも俺は、どうしても本作の「テレビふきカエ」を作りたかったんです(劇場版やDVD版と何が違うのかは、このコラムで再三書いてきた通り)。
そして、そもそもあのスーパーマン俳優の主演作、という流れで誕生した映画だから、作るならあの声。そう、ささきいさおさんのクリストファー・リーブをもう一度聴きたい。
・・・なんてことを考えながら30年経ってしまって、ようやくチャンスが巡って来た!
宮川一朗太さん版の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』トリロジーと同じく、こういうのはとにかくめぐり合わせだからね。公私混同と言われるかもしれないけど、共鳴してくれる視聴者も少なからずいるはず。
というわけで、ささきいさおさんにお願いできるなら、という条件で企画をスタートしたわけです。
とは言うものの、公開当時のクリストファー・リーブと今のささきさんは実に50歳差。本当にできるのか? 何よりご本人がその気になってくれなければ無理なので、おそるおそる打診したところ、「やります!」と快諾して下さって。
さらに高橋剛ディレクターが提案してくれたキャスティングは、ジェーン・シーモアに甲斐田裕子さん、クリストファー・プラマーに羽佐間道夫さん! 高橋Dは意識してなかったそうだが、ロッキー(羽佐間さん)とランボー/スーパーマン(ささきさん)とワンダーウーマン(甲斐田さん)の共演という、驚愕の座組みになっちゃった!
キャスティングが決まっても、この時期、収録が無事終わることを祈るばかりだったけど、夢の現場は特に波乱もなく終了。
仕上がりについては、俺がどうこう言うより、とにかくオンエアを観て頂きたいのですが・・・何だろう、この安心感は! 御三方の声を聴きながら、何度も涙がこみ上げて来ましたよ。
BSテレ東(ジャパン)版ふきカエがブルーレイBOXに収録された『バック・トゥ・ザ・フューチャー』トリロジー(買ってくださいね。俺には1円も入らないけど)と違って、オトナの事情により、
BSテレ東版『ある日どこかで』を観られるのは、今回のオンエア限りです。
後に地上波で放送されたり、ソフト化される可能性は、まずありません。
もう一度書きますよ。2/10(水) 夜7時55分~放送です。お見逃しなく!!!
(ちなみに、2/15はジェーン・シーモアさんの誕生日。おめでとう70歳!)
なお、この翌週、2/17(水) 夜7時30分からお送りするのは、メル・ギブソン監督が沖縄戦の実話を描いた 『ハクソー・リッジ』。
ふきカエはDVD版(アンドリュー・ガーフィールド=前野智昭さん)ですが、無料テレビ初放送。正座して観てください!
余談ですが。
前回の当コラムで、HDDレコーダーが死んじゃったというトホホ話をしたところ、意外なほど反響を頂きました。ご心配をかけて申し訳ありません。
問題のレコーダーは修理センターで匙を投げられ、長期保証のおかげで別の新品(せっかくなので4Kチューナー入りのを選択)を代替品としてもらったんですが、故障したレコーダーも持ち帰って電源を入れてみたところ・・・なんと、元通りに復活! 結果として、4Kレコーダーが1台増えただけ、というラッキーなことに。
さらに不思議なことに、もう10年以上も使いものにならずに放置していた、わが家のレコーダー1号機(地デジ開始前のですよ)も電源を入れてみたら、生き返っちゃった! HDDに眠ってた1999年のアカデミー賞授賞式を再生したら、マライア・キャリーとホイットニー・ヒューストンがデュエットしてて、思わず泣いちゃったよ。
先日「シネマクラッシュ」で放送した『フィールド・オブ・ドリームス』の、「あの声」が聞こえたような。
「お前が作れば、やってくる」
俺が作ったのは野球場ではなく、ふきカエでした。
[作品画像はAmazon.co.jpより]
※Amazonのページで紹介しているDVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合や既に廃盤となっている場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。