飯森盛良のふきカエ考古学

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町山さんが懐かしむ『ラムの大通り』激レアふきカエ版、まさかのタッグ実現で発掘!? の巻

ザ・シネマを去りノマドとなったワタクシ。が、ふきカエでは引き続き古巣のお手伝いしており、『山猫は眠らない』のVHS小川真司×大塚芳忠バージョンを、5月14日(午後12:30~)、5月27日(午前8時15分~)にオンエアできる運びになったようです。これ当初、テレ東版をオンエアする時にミスってVHS版のキャスト情報で発表していたらしいので、だったらついでにVHS版もワタクシの「厳選!吹き替えシネマ」枠の方で後日やるよ、ということにしたのです。無事、素材をゲットし、放送できる運びとなりました。お納めください。

で実はもう一つ、脱藩浪士の身になっても引き続きお手伝いをしているのが、『町山智浩のVIDEO SHOP UFO』という映画解説番組(+映画本編)のプロデュース。これはご存知アメリカ在住の映画評論家・町山智浩さんに「今の時代、忘れられかけてしまっている、またはソフトでの鑑賞も困難になってしまっている、しかし大変素晴らしい映画」という基準で選び抜いていただいた作品をお届けする、という企画。

本当はお届けしている倍ぐらい候補はあげていただいているのですが、本国の方から、やれ「音楽著作権の処理が出来ていない」とか「権利を今は持っていない」とか言われ、断念するのが半分ぐらいあって、今の本数なのです。

飯森盛良のふきカエ考古学

余談ですが、ワタクシがCS放送業界に入ったキッカケは、一加入者としてゼロ年代にCSを見まくっていたからで、そのCSに加入したキッカケは、世代的に直撃を受けた懐かしの『ビバリーヒルズ高校&青春白書』の放送を見たかったからなのです。これ当時は「ソフト化も再放送も絶対にされない!」と言われてました。ビバヒルが得意な海外ドラマライターさんと前職の雑誌編集者時代に仕事で付き合いがあり、その方から「有名ミュージシャンが劇中でパーティーに呼ばれたとかで演奏するシーン、音楽著作権の処理ができない相手が複数いるのでソフト化できない」という話を聞かされていたのです。しかし、誰かが音楽業界を駆けずり回って許諾を得て回ったのでしょう。あんたは偉い!CSで放送すると知って、当時、一瞬の躊躇もなく加入しましたね。

ことほどさように音楽著作権というのはネックで、あとはフィルムなりテープ(TV放送やソフト用に映画はテープ化されています)が失われて地上から完全に消滅したとか、そもそも誰が保有している映画なのか権利者不明で聞き回っても見つからず交渉できない、とかが、消えた映画の消えた理由TOP3ですかね。

話を戻します。そういう激レアな映画を町山さんが推薦し、ご本人解説付きで世に蘇らせる企画なのですが、3月には『ラムの大通り』という、これはソフト化はされている、そこまで激レアというほどではないけれども、世間から忘れられかけている作品を取り上げました。町山さんご本人が個人的に大好きという一本です。

ご本人も解説( ココ )で仰られてますが、ヌルい映画なんですよ。時は禁酒法時代の1925年、舞台はカリブ海の島々。酒密輸船長で海の男くさいリノ・ヴァンチュラが、カリブ海を股にかけ、カリブの海賊ばりのマドロス冒険人生を前半は送っている。ある島でスコールに襲われ、慌てて逃げ込んだ映画館で主演女優のBBこと本名ブリジット・バルドーに一目惚れ。その銀幕女優と今度は別の島で出会っちゃう。誰もいない波打ち際を彼女が水着で散歩していて、そこでお知り合いになって、交際を始める、というロマンス展開になっていきます。

しかし、これは現実を描いているのか?夢じゃないのか?映画ファンの夢をそのまま描いただけではないのか?カリブ海のセピアめいた日差しやキラキラ反射する水面、1925年のレトロな衣装(『まぼろしの市街戦』や『ボルサリーノ』のジャック・フォントレーの名仕事)にウットリさせられる、夏の午睡の夢のような、ラム酒で酔っぱらったような、独特の味わいのある逸品です。深夜トロ~ンと見るのにうってつけです。

飯森盛良のふきカエ考古学

解説番組の中で町山さん、これを日曜洋画劇場でご覧になり、小原乃梨子さんが良かった、BBの時はのび太ではなくドロンジョが甘えた時の声で良い!とか、森山周一郎さんがあのヴァンチュラ声でメロメロになるのが良い!とか、しきりと懐かしがられてて、そこまで仰られちゃあふきカエでもやるしかありません。なのに、その音源が手に入らない!作品の権利元には無く、制作会社の倉庫にも無い(放送と同時に本当は廃棄するルールなのですが、たまたま残っている可能性がある)。

さて困った!そこで、ザ・シネマとしては開局14年間の歴史で『戦略大作戦』に続いて2度目となる、一般からの音源募集に踏み切ることにしました。基本、一般からの公募は極力しない方針なんです。どうしてもやる必要がある時を除いて。前回『戦略大作戦』は山田康雄イーストウッド未ソフト化(その時点では)音源特集で、それ一本だけ入手できず、やるしかなかった。今回は町山さん解説番組の中で懐かしがりまくりという事情で、やるしかない。

滅多にやらないのは、この場にお集まりの皆さんご存知、株式会社フィールドワークスさんが業界では先行して取り組まれているからです。これまでこういった取り組みをされてきたことは、ふきカエ好きなら知らぬ者はいない。ノウハウの蓄積で敵わないのと、パクって同じことやっても意味ないので、ザ・シネマは配給元、局、倉庫など業界内での音源発掘とザ・シネマ新録版の制作をもっぱらに、ふきカエ企画をしてきました。

しかし意外と繋がりは深うございまして、実はここ「ふきカエル大作戦!!」に企画協力として入られているのが誰あろうフィールドワークスさんなのです。ワタクシが新録ふきカエを作るたびに取材いただきこの場でお取り上げもいただきました。あと皆さん、覚えてくださってますか?ワタクシがプロデュースした『ふきカエ ゴールデン・エイジ』という我ながら素晴らしい番組が2017年夏にあり、前編だけはまだYouTubeでご覧いただけますが(後編が永久にご覧いただけない理由はココ。またも音楽著作権が!)、この番組の画面下で、ザ・シネマ君とふきカエル君がLINEっぽく吹き出しコメントする、ということをしている。あれの中の人が実は不肖ワタクシとフィールドワークスさんだったのです。あの番組では合同企画としてガッツリ加っていただいたのでした。

今回『ラムの大通り』の音源募集をし、何件か一般の方からお申し出いただきました。深く感謝します。そして期せずして旧知のフィールドワークスさんからもご連絡が!過去に音源募集をしたものの諸般事情でソフト収録が叶わなかったテープがあり、それでご協力くださるとのこと。

ということで、まさかのタッグ実現というか実は何度もタッグしている再タッグですが、今回はフィールドワークス謹製として完パケていただきましょう、『ラムの大通り』昭和52年3月6日『日曜洋画劇場』版(かそれをもとにした再放送版)を!字幕版はソフトで見れますから大して激レアでもありませんが、ふきカエ版は超激レアですよ!? 夏には皆さまにお届けできそうです。乞うご期待!…コロナで何事も無ければ、ですが。

もう、1週間先も何がどうなってるか予測が立たない!夏までは長いなぁ…皆さん加油!!

飯森盛良のふきカエ考古学

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