- 2018.5.1
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『町山智浩のVIDEO SHOP UFO』ラインナップのうち、7月ふきカエ放送できるタイトル発表、の巻
この春からウチで『町山智浩のVIDEO SHOP UFO』という新番組が始まっています。
今やLAに数軒しか残っていないビデオショップ。
通な品揃えに惹かれマニアが今も通う。
深夜、私しか客がいない店内で、
日本人のマニア店長が、
私の知らない映画について語り始めた。
今宵、その一本から知の宇宙がビッグバンする。
というコンセプトのLAロケの映画解説番組でして、ビデオショップ店長に扮した映画評論家の町山智浩さんが「今の時代、忘れられかけてしまっている、またはソフトでの鑑賞も困難になってしまっている、しかし大変素晴らしい映画」という条件で作品を厳選。その映画を自ら解説するという企画となっております。ウチで映画本編を放送し、その前後に前解説と後解説(ネタバレ含む)を付けてお届け。前解説だけはザ・シネマ公式YouTubeチャンネルでも無料で見れます。
この春の第1弾のラインナップは下記の6作品。文字数の都合であらすじ等はここで詳述はできない。ウチのサイトにてお読みください。この6本は全部ワタクシが書いてます。
『追跡』★
『恐怖』
『大反撃』★
『泳ぐひと』
『サボテンの花』
『バニー・レークは行方不明』★
で、★マークがふきカエでも放送する作品。当時のふきカエテープを掘り当てました!町山さんご本人も「僕もそれで観たので楽しみです。」と期待されてます。
『追跡』は、昭和何年に何洋画劇場でやったものなのか、特定できていません。台本も残ってなければその他の手がかりも一切無い。目下、日本俳優連合(日俳連)さんにふきカエキャストの特定をお願いしているところ。
『大反撃』は当時の台本から、昭和50年3月12日の日本テレビ水曜ロードショー版だと判明してます。バート・ランカスター久松保夫、ピーター・フォーク飯塚昭三、パトリック・オニール塚本信夫、ジャン=ピエール・オーモン大木民夫といった面々。
『バニー・レークは行方不明』も当時台本から、昭和46年5月30日NETテレビ(現テレ朝)日曜洋画劇場版と判明。キャストはローレンス・オリヴィエ原保美、キャロル・リンレー鈴木弘子、キア・デュリア市川治、ノエル・カワード真木恭介。
7月ふきカエ版オンエアに向け準備中です!
町山さんの映画評論の魅力って、古畑任三郎の「解決編」にも似た“腑に落ちる感”にある、と個人的には思うのです。いや、古畑でなくてもコロンボでも誰でもいいのですが、ミステリーで名探偵が理詰めで証拠を積み重ねていって犯罪を暴く、あの知的スッキリ感、からのカタルシス!と同じものが、町山評論にはあると、かねがね感じてます。
その真骨頂は、特に、難解な映画の解説をする時です。普通に見たのでは意味が解らない、シュールとすら思える映画の、隠された真意を解き明かす時。『2001年宇宙の旅』の評論が有名ですね。今回のラインナップですと『泳ぐひと』が、この、町山さん名推理による「解決編」を見ないかぎり理解不能な作品というやつです(これは残念ながらふきカエではやりませんが…)。
名推理と言うからには、「私はこう感じた」というしょうもない個人的感想ではなくて、キッチリ“証拠”をそろえて真相を解き明かしていく、ということです。では、映画解説における“証拠”とは何か?
例えば、作り手(監督とか脚本家とか)自身が語ったり書いたりした言葉の中に答はないのか?それを探す。
または、作り手の過去作や次作に今作を読み解くヒントはないか?ミステリーの例えを続けるなら、同じ犯人の過去の犯行パターンから今回の犯行を解明できないか?というアプローチ。
あと、作り手が影響を受けたとか大好きだとか公言している、または明らかに作中でオマージュを捧げている、他人の作品。場合によっては映画ではなく文学や絵画や漫画なども含まれますが、そっちに謎を解く鍵はないか?
もしくは、原作があるなら原作に当たってみる。そこにはより具体的な手がかりがないのか?
人々に広く共有されている有名な文学作品や聖書や哲学の中に出典が求められないか?
等々等…といった多角的アプローチで、その作品の謎を解明していきます。
こんな芸当は、博覧強記の知識量、徹底したリサーチ、論理的な思考力に基づかないかぎり、できません。まさに名探偵!
きょうびは誰でも、シロウトさんでも、SNSや映画レビューサイトなどで感想を世間に披露できちゃう時代になりましたが、「私は犯人はAだと感じた」「いやBという気がする」「俺はCが怪しいと思った。勘で」「いや~、人それぞれいろんな考え方があるもんですね」ってのが感想でして、それは、聞いても読んでもあまり足しにならないんですよねぇ…。ズバッと「正解はDだ!今からその理由を説明しよう!!」と、証拠をもとに古畑任三郎的に解決してほしいんですよ。それが、町山解説です。
本編とは別の面白さを持ったコンテンツである、場合によっては本編よりも面白い、そんな映画解説というものの妙味を、ザ・シネマの町山解説で、ぜひ味わってみてください。裸のむき出しで映画本編だけ見るよりも何倍も面白く感じられ、深く理解できること請け合いです。