ダークボのふきカエ偏愛録

#59 実はスクリーン派なもんで。

この稿がアップされる予定の6月1日は、久々の「映画ファン感謝デー」でしょうか?
それにしても、前回の更新からここまで、俺にとっては断食よりつらい2ヶ月間でした。映画番組作ってふきカエコラム書いてるくせに何ですけど、実はスクリーンで観る以外の行為を「映画を観る」とは言えない人種なもので。
(更に、チケット予約済みの演劇が次々と中止になっていくのもキツかった…)

ともあれステイホーム期間中、もっとカジュアルに映画を楽しんでくれる皆さんのおかげで、ネットフリックス等の配信サービスだけでなく、テレビ各局の映画番組も絶好調。テレ東「午後のロードショー」、BSテレ東「シネマクラッシュ」も好視聴率頂いてます。まあ今だけかもしれないけど。

そんな中、日テレさんの「金曜ロードショー」は、『名探偵ピカチュウ』『キングダム』とファーストラン連発でパワーを見せつける一方、6月に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作をオンエアされるのですね。先日の『天使にラブ・ソングを…』も高視聴率だったし、こういうヴィンテージ作品が地上波プライムタイムに復活するのは、(他局だけど)率直に嬉しい。
ふきカエはきっとこれまでの定番、マーティ=三ツ矢雄二さん、ドク=穂積隆信さんのだろうな、と思ってたら・・・何と、マーティ=山寺宏一さん、ドク=青野武さんのソフト版を地上波初放送するんですと。まあ最初に制作された記念すべきふきカエだし、ノーカットならそれもアリか、と思ってたら・・・何と、3作ともレギュラー枠(本編は90分ちょっと)だって!? これもたぶん地上波初の事件。何だかなあ。

このコラムで散々書いてきたように、民放の洋画劇場は、テレビ用のふきカエを放送すべきなのです。
そのために作られたものなのだから。これまでと気分を変えたいなら、マーティ=宮川一朗太さん、ドク=山寺宏一さん!のBSテレ東版を使ってくれればいいのに。
手塩にかけてコンプリートした「BSテレ東版」ですが、テレビふきカエというものは、放映権が終了すると、権利元の所有物になるのです。残念な気もするけど、この商慣習があってこそ、全国のローカル局に至るまでふきカエ映画を放送することができるわけで。

ただ、地上波各局のプライムタイムで洋画劇場が視聴率を競い合っていた時代は、少なくとも(テレ東を除く)キー局は、なかなか他局制作のふきカエを使おうとせず、わざわざ作り直していました。
だって、テレビふきカエを作るというのは、他人(映画会社)のものである映画を使って、自社のオリジナル番組を作るための手段なのですから。他局版を使うのは、即ちライバル局の番組を放送することなのです。この感覚、今の人たちにわかるかなあ?

まあそうは言っても、さすがに何もかもオリジナルふきカエで、というのは無理だし、特にフィックス声優さんが結集した作品はどこの局が作っても大差ないので、あえて他局版が使われることもありました。でも・・・テレ東制作のふきカエは、他のキー局さんは滅多に使ってくれなかったんですよ。
前にも書いたと思いますが、ふきカエ制作の予算は各局共通なので、(映画自体はショボくても)テレ東版のクオリティが他局より劣るということはありません。むしろ、制作本数は他局より多いくらいでしたから、経験値では他局を上回ってたかもしれない。
そこで首をもたげるのが、前述した「他局の番組を放送する」感覚なわけです。要するに天下のキー局の皆さんにしてみれば、テレ東の番組なんか放送できるか!ってね(これも今の人たちにはわからないでしょうな)。

そういうわけで、俺が「木曜洋画」担当時に制作して、後に他のキー局のメイン洋画劇場でも放送されたふきカエは、たった2本だけです。

ダークボのふきカエ偏愛録

1本目は、「木曜洋画」がテレビ初放送だった『ブレイド』。
ソフト版のブレイドは菅原正志さんだし、ウェズリー・スナイプスのふきカエと言えば江原正士さんが多かったんですが、あえて大塚明夫さんにお願いしたのが我ながら大正解で。
俺オリジナルのセリフもブッコんだりして、思い入れのあるふきカエですが(詳しくはこちら)、次に放送したフジテレビ「ゴールデンシアター」でそのまま使ってくれて。嬉しくてフジの山形プロデューサーにお礼を言ったら、「あんな気持ち悪いの作り直せるか!」だって。
 

ダークボのふきカエ偏愛録

2本目は、やはり「木曜洋画」が地上波初放送だった『ブラックホーク・ダウン』。
これはもう、ジョシュ・ハートネットに平田広明さん、ユアン・マクレガーに森川智之さん、サム・シェパードに津嘉山正種さんなど、声優オールスター結集の決定版になりましたからね。チョイ役のオーランド・ブルームもしっかり平川大輔さんで。
これを作り直すのは骨だろうな、と思ってたら、テレビ朝日「日曜洋画劇場」で放送されました。この時もテレ朝の福吉プロデューサーに話したら「そうだっけ?」みたいな感じだったな。

あ、これはあくまで、プライムタイムの洋画劇場が各局のデフォルトだった時代の話です。
最近は、昔ウチが作ったふきカエが不意に他局でオンエアされることもあります(BSジャパンで放送した翌月にBS朝日で放送されてた『クリフハンガー』新録版とか)。劇場版やソフト版で放送することに何の抵抗もなくなってしまった今では、他局メイドだろうと関係ないのでしょうね。それはそれで、ちょっと寂しいけど。

『ブラックホーク・ダウン』の「木曜洋画版」は、今年発売されたUHDブルーレイに収録されてます。
『ブレイド』3部作も「木曜洋画版」入りで再発してくれないかなあ。

ダークボのふきカエ偏愛録ダークボのふきカエ偏愛録

さて、「金曜ロード」で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が放送される2日前、
6月10日(水)夜7時30分~のBSテレ東「シネマクラッシュ」は、『ダ・ヴィンチ・コード』 です。
ソフト版もテレビ版も、トム・ハンクスのふきカエは江原正士さんですが、ウチはもちろんフジテレビ版で行きますからね。だってテレビだもん。
翌週、6月17日(水)夜7時30分~の『2012』はソフト版ですけど(作りたかったなあ)。すみません。
2本とも、BSテレ東4Kでは迫力の高精細映像でお楽しみ頂けます。BSテレ東(2K)とは映画本編の画郭も違うので(2Kは16:9フルフレーム、4Kはシネスコレターボックス)、見比べてみてください。

 

[作品画像はAmazon.co.jpより]
※Amazonのページで紹介しているDVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合や既に廃盤となっている場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。