- 2017.12.1
- コラム・キングダム
- ダークボの吹替え偏愛録
手をこまねく、とはこんな感じ。
またしても(『ブレードランナー』磯部勉さん版に続いて)やってくれましたね、ザ・シネマさん! そうか『プロメテウス』、劇場版はゴーリキさんだったもんね。
いわゆる「タレントふきカエ」については飯森さんが「ふきカエ考古学」で書かれてましたが、そもそも、かつて地上波各局の洋画劇場がふきカエを競作していた時代は、それに先立つ劇場版やソフト版のキャスティングは、それぞれ独自の世界を展開することで、テレビふきカエが作られる余地を意図的に残していたものです。だって制作会社やディレクターにしてみれば、その方がビジネスチャンスが増えるわけでしょ?
ふと思い出したのは、昔「木曜洋画」で新録した『フロム・ヘル』。ジョニー・デップのふきカエを“公認声優”の平田広明さんにお願いしたんですが、平田さんに「テレビでジョニデをやるのは初めて」と言われて驚いたものです。そう言えば確かに、その数年前にウチで作った『スリーピー・ホロウ』も、ソフト版が平田さんだからと、あえて堀内賢雄さんにお願いしたのでした。あの頃は、そういうものだった。
やがて地上波から洋画劇場が1つ減り2つ減り、テレビ放送では劇場版・ソフト版の転用が当たり前になって、キャスティングの棲み分けという感覚もすっかり忘れられた感が。それに加えて近年は、権利元がふきカエをオフィシャル1系統しか認めずテレビ版新録を許さない、というケースも増えつつあり…(実は最近、この壁にブチ当たりました。そのうち愚痴らせてもらいますね)
そんなこんなで、ザ・シネマさん偉い! 『ジュラシック・ワールド』を新録した日テレさんも偉い! コツコツと「吹替補完版」を作り続けてるWOWOWさんも偉い!
なのにウチは… 昨年末の『プリズナーズ』を最後に、とうとう2017年は1本も新録できずじまいでした。あーあ。
でもね、来年はやりますよ! 気合いだけじゃなくて、いずれお知らせしますからね。
さて、前回のコラムにも流れで登場した『ウォーターワールド』。
BSジャパン「シネマクラッシュ」にて、12月13日(水)夜7時50分からお送りすることになりました。
キャリア絶頂期で怖いもの知らずだったケヴィン・コスナーが、お友だちのケヴィン・レイノルズを監督に据えて挑んだ破天荒なプロジェクト。後にユニバーサルスタジオの定番アトラクションにもなった、あれほどの超大作にもかかわらず、日本でのテレビ初放送は、なぜか関西地区ローカルの深夜枠でした。これじゃもったいない、と「木曜洋画」でゴールデンタイム初放送することになり、せっかくなのでケヴィン・コスナー=津嘉山正種さんでふきカエ新録(ソフト版は大塚芳忠さん)。今回はその唯一のテレビ版ふきカエ×HD映像でお送りします。
津嘉山さん以外のキャスティングにも凝りましたよ。4年前のこのコラムにも書きましたが、実は意外と小悪党だったデニス・ホッパーを大悪党にして盛り上げてくれた故・内海賢二さん。大小ヒロイン、ジーン・トリプルホーンとティナ・マジョリーノは、松本梨香さんと大谷育江さんの“サトシとピカチュウ”コンビ。さらに安原義人さんが加わる予定だったんですが……重ね重ねすみません!(前回参照)
『ウォーターワールド』の「木曜洋画」での初放送は、高視聴率を獲得しました。
ちなみに俺がプロデューサーとして担当した「木曜洋画」で最高視聴率を獲得したのは、同じくケヴィン・コスナー=津嘉山さんでふきカエ新録した『ロビン・フッド』でした。これもモーガン・フリーマンに坂口芳貞さん、アラン・リックマンに土師孝也さん(スネイプ先生ね)、そしてショーン・コネリー(ネタバレ)に若山弦蔵さんと、これ以上はないキャストを集めましたから。ふきカエの力ですね。
『ロビン・フッド』はモーガン・クリーク(ハリウッドの独立系製作会社)の作品ですが、同社の『ラスト・オブ・モヒカン』等と同様、もう長らく放送されていません。できればあのふきカエを発掘してオンエアしたいんだけどなあ……テレビ権をお持ちの配給会社さん、ぜひご連絡を!
最後に、21世紀の作品に突入して番組が高級化してきた、BSジャパン〈イーストウッド無双!〉のお知らせを。
“真珠湾”の日に先立つ12月6日(水)の夜5時58分から、イーストウッド監督が“硫黄島”を日米双方の視点から描いた2部作、『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』を二本立てで一挙放送。
そして大みそか、12月31日(日)夜6時30分からは、アンジェリーナ・ジョリー主演の『チェンジリング』。これがフリーテレビ初放送です。
これらはソフト版のふきカエで放送しますが(『硫黄島からの手紙』は元から日本語ですね)、12月中には、貴重なテレビ版でお送りした『スペース カウボーイ』(ドナルド・サザーランドの広川太一郎さんが最高!)、『ミリオンダラー・ベイビー』(瑳川哲朗さんのイーストウッドが泣かせるんだ…)の再放送もありますよ。これで見納め、お見逃しなく!
今年も番宣ばかりの駄コラムにお付き合い頂き、ありがとうございました。
それでは皆さん、よいお年を!
[作品画像はAmazon.co.jpより]
※Amazonのページで紹介しているビデオテープ・DVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合や既に廃盤となっている場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。